最高視聴率32.3%を記録し、月曜の夜は街からOLが消えたといわれた大ヒットドラマ『東京ラブストーリー』。29年ぶりにリメークされた“東ラブ”1991年版のプレーバック!

最高視聴率32.3%を記録した、1991年に放送されたドラマ『東京ラブストーリー』

'91年版あらすじ

 転職で愛媛から上京した完治は、東京で保育士として働くさとみ、医学生の三上と旧交を温めるが、2人が付き合うことになって微妙な関係となる。完治は会社の同僚リカの積極的なアプローチに戸惑いながらも付き合うことになるが、三上との破局で傷心のさとみを慰めるうち、片思いの気持ちが蘇ってしまう。そんな完治の変化に気づいたリカにロス転勤の辞令が。ところがリカは話を突然断って休暇を取り、どこかへ行ってしまう……。

こんな時代でした

 東ラブが放送された1991年(平成3年)は、バブル景気が終焉。SMAPがCDデビューし、宮沢りえのヌード写真集『Santa Fe』がミリオンセールス。相撲界が若貴ブームに沸き、皇室では立太子の礼、Q子さまご誕生と慶事が。日本でも人気のQUEENのフレディ・マーキュリーが45歳で亡くなった。

宮沢りえの写真集発売の新聞広告

ロケ地が“聖地”に

最終回にリカが“カンチ、バイバイ”と書いたハンカチをホームの柵に結びつけ別れるシーンのロケ地となった、愛媛県松山市の梅津寺駅は一躍、有名に。「最終回放送後は、カップルや写真撮影で訪れる方がたくさんいらっしゃいました。海外でも放送されており、今でもハンカチを結ばれるドラマファンの方もいます。また、リカがカンチに伝えた電車の時刻(午後4時48分発)が現在でも残っていることをお客様にご案内すると、うれしそうに(その時間の電車の)写真を撮っていく方もいらっしゃいます」(伊予鉄グループ総務課)

『東京ラブストーリー』の聖地となった愛媛県松山市の梅津寺駅 写真提供/(株)伊予鉄グループ

吉田潮コラム 歯がゆい展開&男女の精神的な成熟差象徴

 ♪テケテーンとか♪ジャカジャーンと、音が鳴るたびにすれ違ったり行き違ったりで、歯がゆい展開になるドラマ、それが「東京ラブストーリー」。家電や公衆電話、そして留守電が頼りの時代、多少の遅刻や勘違いにもみんな寛容だったよね。

 記憶をたどると、前半はリカの独特の天真爛漫さが鼻についた。帰国子女ってもう少し知的ではなかろうかと思ったりもして。ただし、空気は読まないが、「リカは一途なだけ」と思った記憶もある。好意も行為も自分が主導、決して人のせいにしない。おまけに尻ぬぐいも自分でする女、気持ちいいよね。

 逆に、いつも人任せで男頼み、どっちつかずで、完治と三上を転がす、さとみのほうが断然タチが悪い。実際、後半では鍋だの、おでんだのとメシで完治を釣って、リカとの関係をことごとく邪魔したので、世間的にも“アンチさとみ派”が急増した記憶が。振り回されてほだされる完治も完治だよ! と叱りたくもなるほど、初恋を美化する男の典型だった(女は初恋を唾棄するものだ)。

 最後の最後までぐだぐだして煮え切らなかった完治、再会してもほだされず、過去の恋に見事にケリをつけたリカ。男女の精神的な成熟の差を見せてくれたドラマでもあった。

 そして、今改めて見て思うことがある。劇中でモノ言う女・リカが厄介な存在として描かれていた。上司と不倫していたことで「関わらないほうがいい」「誰とでも寝る女」と同僚(中山秀征)に陰口叩かれて。

 仕事ができる女の足をひっぱる男が必ずいるんだよね。しかも元不倫相手の上司も、完治に対して妙なマウンティングしやがる。つくづく、女の出世を阻むのは男の嫉妬なんだよなぁと痛感した次第。約30年の時を経ると、見える風景も変わるので、ぜひ再度見てほしい。

 その後の物語を同じキャスト・同じ脚本家の「オリジナル」で作ればいいのにと思ってしまった。無理ですかねぇ?(コラムニスト)

「セックスしよう」だけじゃない!  リカ語録
カンチへの愛情をストレートに伝えるリカの言霊 

「私、白旗あげるつもりないから」
(さとみのことが気になっているカンチに)

「だったら、人を好きにならない方法教えてよ!」
(和賀部長との不倫のウワサを聞いたカンチの「好きだったら、誰とでも寝るのかよ」にブチ切れて)

「もうダメ。電池切れちゃった」
(雨中、長時間待ち続け、やっと駆けつけたカンチに)

「恋愛は参加することに意義があるんだよ」
(さとみをあきらめたカンチを元気づける)

「東の空からおひさまがのぼった瞬間に夜のことなんかぜ~んぶ忘れちゃうよ」
(一夜を過ごした翌朝、浮かない顔のカンチに)

「悔しいよ、カンチ。気持ちはひとつしかないんだよ。2個はないんだよ!」
(カンチがさとみと会っていたことを隠した嘘の言い訳に対して)

ドラマ『東京ラブストーリー』のワンシーン イラスト/さきもとしほ

「私の好きは1個しかないもん。さとみちゃんのこと、たとえ忘れられなかったとしても、私の好きは負けない。1ミリグラムも減らないよ」
(「好きな子は、ひとりじゃダメかな?」という三上に)

「世間が何と言おうと、世界中を敵に回したって、愛さえあれば乗り越えていけるよ」
(リカのまっすぐな愛情表現に戸惑うカンチに)

「トホホだよ。カンチがいなくちゃ」
(ロス転勤に決心がつかないことをカンチに吐露)

「誰もいないから寂しいってわけじゃないから。誰かがいないから寂しいんだから」
(カンチとの関係やロス転勤を心配する三上に)

「赤い糸はプッツリ切れたけど、約束はかなえたよ」
(カンチの故郷・愛媛で小学校の柱に「永尾完治」の隣に「赤名リカ」を掘る)

ドラマ『東京ラブストーリー』のワンシーン イラスト/さきもとしほ

「一生のうちに人を好きになるなんて、そうそうあるもんじゃないから。好きになったら、あっという間だけどさ。永尾くん好きになったこと大切に思うよ」
(3年後、さとみと結婚したカンチと再会)

取材・文/成田 全