地方ではコロナに関するデマや噂が回りやすいという(写真はイメージ)

 4月16日、政府は東京など7つの都府県以外でも新型コロナウイルスの感染が拡大していることから、5月6日まで、緊急事態宣言の対象地域を全国に拡大することを正式に決定した。安倍晋三首相は政府対策本部で次のように述べた。

「国難とも言うべき事態を乗り越えるため、日本全体が一丸となって取り組んでいくしかない」

感染者ゼロの岩手県に八戸や東京ナンバーの車が

 現在、全都道府県で唯一、感染者が確認されていないのが岩手県だ。しかし、ウイルスの“脅威”はすでに届いており、県内在住の男性は「“感染者第1号”には絶対になりたくない」と話す。

「隣の青森県の八戸市では、最初のコロナ感染者がスペイン帰りだったこともあって、すごく非難を浴びたと聞きました。感染のごくごく初期には、“市内の〇〇の××にダイヤモンド・プリンセス号の乗客がいたらしくて、戻ってきている”という話も流れたそうです。後からどうやらデマだったらしいとわかりましたが、田舎は小さなコミュニティなのでこういう噂が回りやすい状況ですね」(岩手県在住の男性)

 買い占めや病院の混乱もなく、基本的には普通の生活が続いているという岩手県。しかしそんな岩手の“安全性”を求めて来る人も……。

「最近、県外の人間や県外ナンバーの車が目立つようになりました。隣の八戸市内でコロナが出た後、やたら八戸ナンバーの車がこっちに買い物に来るようになりました。最近では東京ナンバーもちらほら。地元の人間は“疎開かよ!”と殺気立っていますね。

 ただ、飲食店は岩手の田舎でも軒並み臨時休業。お客さんがまったく来ないために自主的にお店を閉めているそう。テイクアウトを始める店も増えてきました。なので、商工会議所や青年会議所の若い人たちが団結して、市内の“テイクアウトマップ”アプリを急いで作って、“どの店でどんな料理のテイクアウトをやっているのか”がすぐわかるように動いたりしています」(同・岩手県在住の男性)

 東京都内では大規模の商業施設は、生活必需品の販売エリアを除いて基本的には休業要請の対象となっているが、大都市圏以外の地域は緊急事態宣言の拡大により、これから自治体ごとの判断によって対象か否かが決まっていくことになる。

「大手商業施設に入っているショップ店員がコロナに感染して一時休業したところ、再開後も客足が遠のき、感染者が働いていた店以外も売り上げが大幅に下がっているそうです。ひどい店舗だと売り上げが休業前の1~2割程度まで下がっていますね。また“感染者が出た”というデマや、配線工事が消毒作業と勘違いされたようでコロナの噂を流されたお店も。若い世代は裏が取れない話は拡散していませんが、ネットリテラシーのない中高年が主にデマを信じて流してるみたいですね……」(沖縄県在住の女性)

家を特定されて石を投げられた人も

 そう、岩手の“ダイヤモンド・プリンセス号の乗客”、そしてこの沖縄の件にもあるように、いま地方ではコロナ関連の“噂”がウイルス以上に蔓延している。

僕の住んでいる地域も本当にコロナの影響がヤバいです。それは感染が拡大しているということ以上に“噂”がです。“感染者がどこに行ったのか”など、どういう行動をとっていたかがよく回ってきます。感染者が使っていた駅に隣接している商業施設にも行ったんじゃないかという話が出て、それ以降ガラガラになってしまいました。スーパーに行ったという噂が流れれば、誰も行かなくなる。

 “あそこのスーパーは感染者が出たから保健所が消毒していたみたいだぞ”とか“あの家は感染者の家だから保健所が全部消毒してたぞ” “あそこはコロナが出たようだから近づかないほうがいい”と話している人も。感染者が出た会社は取り引きもできない状態に陥るんじゃないかと……。感染することよりも、感染して社会的に抹殺されるような状況がいちばん怖いです」(岐阜県在住の男性)

 同様の話は別の地方でも……。

隣の市の人がコロナに感染したんですけど、感染した本人の話だけじゃなくて親族の話も回ってきました。感染者のお母さんが市内の〇〇で働いていて……と。田舎だとご近所さんが“何か”あれば、狭い社会なのであっという間に近隣の町まで伝わってしまいますからね。実際、コロナにかかり仕事を辞め、引っ越した人がいます。家を特定されて石を投げられた人もいます。田舎は、その社会の狭さから“今後ここには住んでいられない”って思わせる。何も悪いことをしていないのに切ないです。“村八分”みたいな差別や噂の拡散はよくないと思いますが、ウイルスに感染したくないので怖がる気持ちは正直、理解できますね……」(新潟県在住の男性)

 経済をストップさせるほどの脅威のウイルスが蔓延している。そんななか“人”が脅威となってはならない──。