ドラマ『東京ラブストーリー』で関口さとみを演じた有森也実

 最高視聴率32.3%を記録し、月曜の夜は街からOLが消えたといわれた1991年の大ヒットドラマ『東京ラブストーリー』。今年、29年ぶりにリメークされ話題になっている。関口さとみ役を演じた、有森也実に聞いた今だから話せる“東ラブ”秘話とは?

「間違いなく私の代表作ですよね。“当時は小学生でした”なんて言われたりすることもありますけど、いまだに言われるって、すごいことだと思います」

 放送から29年もたったことに驚く有森さんは、演じた関口さとみについては「あまり共感する部分はなかった」と笑う。

カミソリ入りのファンレターも

「さとみはすごくバランスをとる、三角形をずっと崩さないタイプですよね。その気持ちはわからないでもないけど、私は臨機応変なタイプなので、彼女は違う人だなと感じました。だから最初は演じていてすごくつらかったんですよ。でも“これはさとみの成長物語だ”ととらえると面白みがあるな、と思えるようになりました」

 共演者の印象については、

「織田さんはすごくまじめな方で、セットに入ると“セリフ合わせしようよ”と声をかけてくれて練習したりしましたね。さとみと永尾くんはバランスをとる、わりと似たタイプだったので、織田さんは“ちょっと悩まない? この役、難しいよね”なんて話もしていたかな。江口さんは本当に無邪気でムードメーカー、場が和む感じ。保奈美さんはとても知的で大人っぽく、近寄りがたいオーラがありましたね

 リカから完治を奪った女として、当時は視聴者から恨まれて脅迫状が届いたこともあったそう。

カミソリ入りのファンレターなんかも届いたそうですよ。でも、すべて事務所が対応してくれて、私は開けていないのでわからないんです。でもちょっと見たいな、と思いましたね(笑)。

 だからさとみがどう思われていたのかを知ったのは本当に最近、ネット社会になってからなんです。“ああ、みんな私のこと嫌いだったんだ!”って(笑)。当時は友達から“也実の顔がこんなに憎たらしいとは思わなかった”と、わざわざ電話もありました。

 でも役に寄せて考えると“永尾くんが好きだったんだもん、しょうがないよね”なんです。さとみはずっと三角形を守ってきたのに、“自分の気持ちをはっきり言う”というバランスを崩すことを思い切ってやったんですよね。もう昔の関係には戻れないわけですから」

 当時の監督からは「自分がどう映っているのかを考えろ」と言われて客観的に自分を見ることを教わり、「女優さんになるって大変なことなんだな」と思ったという。

「オンエアされるにつれ、ドラマが話題になって手応えも感じましたし、役作りで悩む経験ができたのもよかったのかな。個人的には役の上でも、ふたりの男性に愛されて幸せでしたね(笑)」

最高視聴率32.3%を記録した、1991年に放送されたドラマ『東京ラブストーリー』

永尾&三上を振り回した!?「さとみ3大シーン」

その1
 永尾ではなく、三上からのアプローチに応え同棲していたが、三上の女性問題などで悩み別れを決意。「笑って別れよう」と告げて去っていくさとみの後ろ姿に向かって、三上は「嫌だよー」と絶叫。

その2
 三上と別れた後、永尾と会食&ボウリングを楽しむ。高校の卒業式にふたりから贈られた制服の第2ボタンを持参し「私の卒業式」と川に捨てる。「三上くんが好きになってくれた、永尾くんが好きになってくれた私はもういないの。汚れちゃった」。永尾は「汚れてなんかいない。あのころのまま憧れの的だよ」

その3
 永尾に以前、おいしかったとほめられた、おでんを作ってマンションを訪ねる。ロス転勤を決めたリカと会う約束をして出かけようとする永尾に「行かないで。好きなの」。リカを傷つけられないという永尾に「でも、行かないで」と懇願。「三上くんのときは、我慢したの。待っていれば、いつかきっと帰ってきてくれるって。でも、ダメだった。だから、もう後悔したくないから。行かせたくなかった」

ドラマ『東京ラブストーリー』のさとみを演じた有森也実 イラスト/さきもとしほ

■プロフィール 1967年神奈川県生まれ。'86年に映画『星空のむこうの国』でデビュー以後、数々のドラマ、映画に出演。今年は映画『子どもたちをよろしく』『ねばぎば新世界(仮)』が公開。『NHK短歌』の司会も務める。