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 新型コロナウイルスとの戦いが長引き、多くの女性が家族を守るためにあらゆる感染防止情報を収集し、効果がありそうだと思えるやり方を実践している。

 複数の主婦に取材すると、「ここまでやるか!」というほど徹底した防止策をとっていることがわかった。

お釣りの小銭はビニール袋に

 例えば……。

「電車では席が空いても座らないし、手すりにもつり革にもつかまらない」

 と足腰の強い主婦もいるし、

「お釣りで受け取った小銭は小さなビニール袋に入れておき、帰宅後に消毒スプレーしてから財布に戻している」

 と几帳面なタイプも。

「届いた郵便物は家族の手に触れない場所に置き、3日以上たってから開封」

 と自ら定めたルールを順守する人もいる。

 新型コロナは飛沫感染、接触感染するため、飛沫が付着したモノや、ウイルスのついた手で触れたモノを警戒するのは正しい。しかし、本当にそこまで気を配る必要はあるのだろうか。

 外務省医務官としてSARS(重症急性呼吸器症候群)に対応した経験を持つ関西福祉大学の勝田吉彰教授(渡航医学)は、前出の3例について「効果の有無でいえば全部ありますが……」と前置きして、次のように話す。

「コロナだけに効く予防法は何もありません。つまり、どのやり方も、バイ菌やウイルスを減らすためにできることになります。できることは何でもやったほうがいいけれども、あとはどこまでできるかになります」

 神経質になりすぎて、精神的に追い詰められるようでは本末転倒だ。

ドアはひじや足で閉める

 勝田教授の場合、電車に乗るときはこんな点に気を配っている。

「まず、なるべく乗客の少ない列車に乗るようにします。すると急行や快速ではなく普通列車になる。だから10分早く自宅を出ます。さらに極力すいている車両を選んでいます」

 感染症専門医で東京・品川区の『KARADA内科クリニック』の佐藤昭裕院長はこう付け加える。

「手すりやつり革につかまらないようにするのはいいと思いますが、座るか座らないかはどっちでもかまわない。それよりも、隣の人と距離をとることが大事です」

 ウイルスが付着するのは電車内にかぎらない。買い出し先のスーパーや大型商業施設、小規模の商店でも“もらう”おそれはある。

 ある主婦は、こうした施設や自宅マンションの玄関などに出入りするとき、

「ドアは手で開けず、できるかぎりひじや足で開け閉めするようにしている」

 という。

 行儀が悪いふうに見えるかもしれないが、そんなに難しいことではないし、感染するよりはマシと考えてもよさそうだ。前出の佐藤院長も「ひじで押せるドアはひじで押していますね」と打ち明ける。

 東北大学病院・感染管理室の徳田浩一室長は、

「みんながさわっていそうなところには触れないようにしています」

 としたうえで、こう続ける。

「もし触ってしまったときは、なるべく早く手を洗うようにします。近くに洗面所などがない場合、手を洗えるまでは顔などに触れません」

 徳田室長は、石けんやハンドソープを使って15~20秒程度かけて丁寧に洗う。今回取材した医師はみな「手洗いは大事」と口をそろえる。

 さらに徳田室長の場合、昼休みはまず飲食店には行かず、買ってきた弁当などですませている。

「食べるときは1人。職場で休憩時間をずらし、大勢集まってしまったときは散ります。食べ終えたらさっさと部屋から出て、離れた場所で休憩するようにしています」

 食材に気を遣う主婦は多かったが、食卓を囲むスタイルについて「個別に食べている」とする主婦は少数だった。自宅での食事ぐらいはにぎやかにしたいのだろうが、注意が必要だ。

帰宅後そのままお風呂へ

 外出先では、施設や建物の出入り時にとどまらず、コンビニのレジなどで現金の受け渡しをするときに防衛策をとっている主婦が少なくなかった。

 冒頭の小銭を消毒しているケースのほか、「現金はウイルスが付着しているかもしれないので、キャッシュレスで買い物するようにしています」と話す人も。

 前出の佐藤院長は、

「いい対策です。現金は多くの人の手から手に渡るためキャッシュレスは望ましい。ちなみに現金の場合、紙幣でも硬貨でもウイルスはつきますので注意してください」

 とアドバイスする。

 また、多くの主婦が警戒しているのが「自宅にウイルスを持ち込まない」ことだ。

 いくら注意していても、自宅に届いた配送物にウイルスが付着していたり、外出先で、衣服や身体の露出部分に付着してしまう可能性は消せないからだろう。

 医師でNPO法人『医療ガバナンス研究所』の上昌広理事長は「帰宅してすぐ風呂に入るのは有効です」と話す。

「あちこちさわる前にまず手洗いし、早めに風呂に入るのは理想的です。私個人は51歳で大きな持病もないため、感染しても重篤化するリスクは低いと思っていますが、医師として診療しているから感染するかもしれない。80代の母親宅に行ったときは母親のあとで風呂に入っています」

 万が一にも、風呂場にウイルスが残留することのないよう気を配っている。

「それと私は抗体検査を受けました。結果は陰性。つまり、これから感染する可能性があるということ。私が診療するナビタスクリニックで抗体検査を始めましたので、気になる方は受けてみてはどうでしょうか」(上理事長)

 検査開始前のサンプル検査の結果、陽性反応が出た人もいるという。

 もし感染していても、無症状やごく軽い症状で完治している可能性はある。

 前出の佐藤院長は言う。

「私の予防法は基本的なものです。ことあるごとに手洗いを繰り返すこと、2メートルのソーシャルディスタンスを保つこと、そして密閉、密集、密接の“3密”を回避することに尽きます」

 奇策もいいが、予防の基本を忘れないようにしたい。

主婦の“ここまでやるか対策”を佐藤昭裕院長がジャッジ

買いものでエコバッグはやめ有料の使い捨てレジ袋を
手を洗うようにすればエコバッグでかまいません。そこまで気にする必要はないでしょう

むき出しで売っている野菜はひと皮むいて、石けん水で洗う
ひと皮むいたほうがよい。ウイルスは水に弱いため、石けん水でなくとも流水で十分です

免疫力アップのために、風呂場で水浴びや乾布摩擦をする
×水浴びも乾布摩擦も免疫力に関係ありません。ただし、入浴で髪などについたウイルスは流せます

宅配便などは外で1日放置してから開封してスプレーで消毒
段ボールについたウイルスは24時間残るといわれます。ただ、除菌スプレーまで使わなくてもいいでしょう

外から帰ってきたら、玄関で服を脱いですぐにお風呂に入る
いい心がけです。服は洗濯機で洗い、身体も風呂に入ったほうがウイルスをより防げます

マスクの内側に滅菌ガーゼを入れ、それを毎日洗って使用
現在のようなマスク不足が続くかぎり、こういった工夫をしたほうがいいでしょう

電車やバスでは座らない。手すりやつり革にも触れない
手すりやつり革に触れないのは「○」ですが、座らないは「△」。座るかどうかより、隣と距離を置くこと

ママ友とのお茶会や女子会はネット上のオンラインで
いまは我慢のときです。お茶会など人との接触は避けたほうがいいですからね

なるべく口呼吸をしない
鼻呼吸では鼻毛がウイルスをキャッチする可能性があります。マスクをしていないときは口呼吸を多くしたほうがいいかもしれません

マスクをはずしたくないので、ストローを使って水分補給
要は、ウイルスがついているマスクの表面をさわらなければいいのです。わざわざ、そこまでしなくてもいいでしょう

デリバリーは避け、自炊して野菜や肉の摂取を心がけ
デリバリー商品に飛沫が付着している可能性もゼロではありませんが、結局、電子レンジにかければウイルスは死にますから


【識者PROFILE】
◎KARADA内科クリニック 佐藤昭裕院長 
東京都品川区西五反田1-2-8 FUNDES五反田10階
電話……03-3495-0192

◎ナビタスクリニック新宿 内科・上昌広医師 
東京都新宿区新宿4-1-6 NEWoMan7階
電話……03-5361-8383