(左から)嵐・櫻井翔と池上彰

櫻井翔×池上彰 教科書で学べない「ニッポンの超難問」』(日本テレビ系)が5月4日に放送された。国民的人気グループ・櫻井翔(38)とわかりやすいニュース解説でおなじみの池上彰(69)による不定期報道番組の第4弾だ。

 が、今回、櫻井は4月29日に行なわれた収録を欠席。27日の生番組『news zero』(日本テレビ系)を体調不良(微熱)により電話のみの出演にしたことに続き、大事をとったかたちだ。

 とはいえ、28日以降は回復しており、4日の放送にはリモート出演で登場。

ずっと平熱なので、とても元気です。本当にただの微熱ではあったんですけど、頭のどこかに“もしかしたら”というような不安はあったんですよね。念には念を入れて、池上さんとは離れた場所からお伝えしたいと思います

 と、元気にあいさつしたほか「8割おじさん」ことコロナ対策のキーマン・西浦博氏を取材するVTRも流れた。ファンも安心したに違いない。

櫻井翔が狙う芸能界のポスト

 なにせ、櫻井は報道ジャンルでの活躍も期待されている人。『週刊女性』の「好きなジャニーズ・嫌いなジャニーズ」アンケートでは「池上さんの後継者になってほしい」という声も出ている。

 しかも、嵐は今年いっぱいでグループ活動を休止する予定。休業する大野智以外の4人はそれぞれ、ソロ活動に力を入れることになり、松本潤二宮和也は芝居を中心に、相葉雅紀はバラエティー番組を中心にやっていくと思われる。櫻井の場合はバラエティー寄りだが、ほかにない持ち味といえば報道だろう。

 最近では、相葉が『天才!志村どうぶつ園』(日本テレビ系)のメインポジションを引き継いだが、池上が引退することになれば、この不定期報道番組も櫻井がひとりでやることになるかもしれない。

 とはいえ、今後「報道の櫻井」を打ち出していくには、強力なライバルがいる。たとえば、予備校教師でタレントの林修だ。

 7年前に自身が勤める予備校のCMでブレイク。「今でしょ!」の決めセリフで人気者になった。その後、一発屋で終わるかと思いきや、冠番組を持つまでに成長。レギュラー出演中の『ポツンと一軒家』(テレビ朝日系)が当代きっての人気番組になるなど、数字を持っているタレントのひとりだ。

 博識ぶりはもとより、軽妙なトークもこなすのだが、見逃せないのはその策略家的な抜け目なさ。予備校講師になるにあたって、得意な数学をあえて捨て、競争相手のいなかった国語を選んだというエピソードがある。現在、報道的なジャンルに手を出していないのも池上がいるからだろうし、ポスト池上という状況になれば「今でしょ!」と名乗りをあげても不思議はない。

ポスト池上を狙えるクイズ王

 そんな林の弟子みたいな存在が、クイズ王として世に出た伊沢拓司だ。東大及びナベプロ(所属事務所=ワタナベエンターテインメント)の先輩後輩でもあり、同じ予備校でバイトをしたこともある。最近は林の番組に「挑戦」的な構図で出演することも多い。

 こちらの強味は、若さならではの“勢い”。バラエティー番組『アイ・アム・冒険少年』(TBS系)の「脱出島」企画では、あばれる君鈴木奈々と無人島からの脱出を競ったりしている。この仕事を選ばない(?)貪欲な姿勢で、一気にポスト池上へと浮上するかもしれない。

 とはいえやはり、ポスト池上の一番手は櫻井だろう。番組共演を通して、その技術に接することができるのは大きい。じつはなんでも知っているかのように見える池上だが、その解説の何割かは専門家から仕入れたもので、彼のすごさはそれを噛み砕き、一般向けにわかりやすく「翻訳」できること。櫻井には、それを身近で学べるという有利さがある。

 また、池上も櫻井のことはある程度認めているのではないか。2年前、彼は報道番組に芸能人が出ることについて、こんな発言をした。

人気タレントが画面に出ていれば視聴率が稼げるだろうという、さもしい発想が透けて見える」「芸能人がニュースを伝えるのは国際的に見て日本ならではの奇観」「ニュースを伝えるのは現場取材を積み重ねたジャーナリスト。関心のなかった芸能人にカンペを読み上げさせるのは不思議な光景」(『文春オンライン』'18年6月6日配信)

 これには櫻井たちのことを言っているのではという声もあがったが、池上はこの時点でこうした不定期報道番組をふたりで何度もやっていた。そんなパートナーのことをあからさまに批判するとは考えにくい。つまり、彼は'06年から『news zero』でキャスターやインタビュアーをやってきた櫻井の実績などを考慮し、ジャーナリストの顔も持つ芸能人として評価していると考えられる。

 ちなみに、ふたりは同じ慶應大学経済学部の先輩後輩。櫻井は嵐としてデビューした数か月後に入学し、芸能活動と両立しながら4年間で卒業した。試験の前には楽屋でも常に勉強をしていたという。

 その甲斐あって、ほかの芸能人にはない政財界との人脈も持つ。父親からして、総務省のトップに上り詰めた元・高級官僚だ。池上に一目置かれてもおかしくない立場なのである。

 米国の同時多発テロ事件('01年)を機に、報道の仕事をやりたいと思ったという櫻井。その後、雑誌でこんな発言もしていた。

コンサートの準備をしつつ、総選挙の日程が気になっちゃうアイドルがいてもいいんじゃない?」(『Hanako』'09年9月24日号)

 4日には『news zero』にもリモート出演。こちらでは、クラスター対策班のツイッターを立ち上げた女性を取材していた。コロナショックで混乱する芸能界にあっても「報道の櫻井」は前途洋々といえそうだ。

PROFILE
●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。