昨年5月、皇后として名誉総裁に就任してから初めて『全国赤十字大会』に出席された雅子さま

「両陛下のご意向もあり、お仕えする側近たちとの“接触”を7割減らすためのテレワークの実施や、側近との打ち合わせも対面ではなく電話で行う機会を増やされています。おふたりが宮内庁職員の健康をたいへん心配しておられるのは、まずは“目の前にいる国民”の健康を守ることが大切だとお考えになっているのでしょう」(宮内庁関係者)

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、国内では緊急事態宣言が5月いっぱいまで延長された。4月中に3度、コロナに関する各分野の専門家からのご進講を受けた両陛下は、苦心しておられるそう。

 4月10日に両陛下が新型コロナウイルス感染症対策専門家会議副座長・尾身茂さんから受けられたご進講では、

《今後、私たち皆がなお一層心を一つにして力を合わせながら、この感染症を抑え込み、現在の難しい状況を乗り越えていくことを心から願っています》

 という陛下のご発言があり、4月末には宮内庁HPにも掲載された。ご進講の内容が公になるのは“異例”のこと。

尾身茂さんからコロナウイルスの特徴などについて説明を受けられた両陛下(4月10日)

 そんな中、皇室としては変わらず“祈り”を捧げている。

「国内でコロナの感染拡大が取りざたされ始めた3月20日の『春季皇霊祭』と『春季神殿祭』、4月3日の『神武天皇祭皇霊殿の儀』、5月1日の『旬祭』などの宮中祭祀は予定どおり行われています。

 コロナ対策は講じていますが、所作や時間などを短縮することなく通常どおり行っているそうです。ただ、祭祀のお供をする側近らは、いわゆる“3密”にならないように気をつけ、お着替えを手伝う際には当然マスクを着用しています」(侍従職関係者)

 現在の危機的状況だからこそ“国民のために祈ること”が天皇としての大切なお務めだという強い信念を抱かれていると、この侍従職関係者が続ける。

「代理を立てて祭祀を行うこともできますが、陛下は自ら行うべきだとお考えになっているそうです。

 両陛下は“最前線でウイルスに立ち向かっている方々に直接ねぎらいの気持ちを伝えたい”という思いがおありですが、現状では叶いません。

 今は先祖に祈りを捧げつつ、『旬祭』では国民の安寧を祈られながら、対応にあたっている関係者の話を聞いて、現状を正しく理解することが大切だと思われているのです」

上皇さまが震災時になさった「ビデオメッセージ」の可能性は

“今できること”を実践されている両陛下だが、一部では「両陛下から国民へ直接、激励するおことばが欲しい」という声もあがっているという。

「'11年に発生した東日本大震災の5日後には当時、天皇陛下だった上皇さまがビデオメッセージを公表し、国内全体を励まされました。イギリスのエリザベス女王は4月初旬、在位68年間で5度目のビデオメッセージを発表し、コロナウイルスと闘う国民を鼓舞しました。ただ両陛下として、そういったメッセージを出す予定は、現状ないとのことです」(皇室担当記者)

 メッセージを公表する予定がないのは、両陛下のお気遣いが影響していると、ある皇室ジャーナリストは話す。

「今回は、これからまだ被害が拡大していく可能性があり、震災時とは状況が違います。さらに、ビデオメッセージを撮影するとなると、そのこと自体が“3密”の状態を作り上げたり、コロナ対策で多忙な政府にメッセージのチェックなどの作業を課すことを、両陛下は危惧されているのではないでしょうか」

東日本大震災の5日後、上皇さま(当時天皇)がメッセージを(2011年3月)

 静岡福祉大学名誉教授で近現代の皇室制度に詳しい小田部雄次さんも、メッセージ公表は時期尚早だと語る。

「新型コロナウイルスがいつ終息するのかが不透明な状況であり、両陛下が国民全体に向けて、ビデオメッセージを出されるのはまだ難しいかと思います。コロナで健康被害や経済的打撃を受けている方々には、メッセージを受けとめる心の余裕がまだできていないと思うからです。

 医療崩壊や経済破綻からの復興へのめどが立ったころに、励ましのメッセージを出されたほうがいいのではないでしょうか」

雅子さま、“医療界へのねぎらい”も

 これまで陛下は、2月のお誕生日会見、3月末の愛子さまの高校卒業に際してのコメント、そして先日のご進講でのコメントの3回にわたってお気持ちを表明していることも、改めてのビデオメッセージを出されない理由なのかもしれない。

 一方で、国民へのメッセージ以外にも、雅子さまには“医療界への激励”についての期待が寄せられている。

「雅子さまは『日本赤十字社』の名誉総裁を務めておられるので、もし可能であれば、そういった医療関係の団体への寄付行為、あるいは医療従事者への支援や励ましのおことばを出されることが重要だと思います。

 皇室は以前から、医療界とのつながりが深いので、政治的にニュートラルな立場から強く心を寄せることで、困難な状況の医療界の支えになっていただければと願っています」(小田部さん)

 宮内庁OBで皇室ジャーナリストの山下晋司さんは、今後、医療関係者へのねぎらいの場を設けられる可能性について次のように言及する。

「国民に通常の生活が戻ればコロナ対策に尽力のあった政府、医師会、看護師会などの幹部を招いた懇談や茶会などを開いて、両陛下が直接ねぎらわれる可能性はあります。植樹祭などで地方を訪問された際には、医療施設の視察や医療従事者らとお会いして、また、不幸にも感染によって亡くなった医師、看護師などの遺族にお会いになってお見舞いのお言葉をおかけになることもあるかもしれません」

 雅子さまが抱く感謝のお気持ちが医療従事者に届く日はいつになるのだろうか─。