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 新型コロナウイルスの影響は家庭の電気代にも及んでいるようだ。外出自粛によって家族みんなが家で過ごす時間が長くなり、昼間の電気料金が通常の約1.5倍に跳ね上がっているというデータもあるほど。家計を守るためにも“節電”を心がけたい。とはいえ、ただでさえストレスがたまる状況で、「電気を消して!」と家庭内で怒声が飛び交う事態は避けたいところ。そこで、この機会に節電の正しい知識を身につけて手間なく効率よく電気のムダを省いていこう。

弱風にして扇風機と併用するのがベター

 これから夏に向けて、節電のカギを握るのはエアコンだ。電気料金がどのくらいかかっているのか、ご存じだろうか? 使っているエアコンの消費電力がわかれば、左の計算式で1時間の料金が算出できる。仮に冷房運転における消費電力が825wとすると、21円ほど

「ただし、使用時間を減らせば必ず電気代が下がるわけではありません」

 そう話すのは総合家電エンジニアの本多宏行さん。

「電源オンとオフを頻繁に行うと室温が安定せず、電力のムダな消費につながってしまいます。そのため冷房運転時の1時間程度の外出なら、つけっぱなしのほうが電力使用量を抑えられます」(本多さん、以下同)

 さらにエアコンの運転モードは『自動』に。

「運転開始直後は、設定温度に向けてフル稼働しますが、設定温度に達すれば送風に切り換えるなどの機能が働くので電力使用量を抑えることができます」

 また、外気の温度と室内の温度の差が少ないほどエアコンは小さなパワーで稼働するから電力使用量を抑えることができる。

「設定温度を下げすぎないことも節電のポイント。環境省は28℃を推奨しています」

 新型コロナウイルス対策の柱でもある“換気”は、節電にも有効だという。

「起床時や帰宅後は、まず窓を開けて風を通すこと。熱気を飛ばして空気を動かしましょう。また扇風機の消費電力は非常に低く、一般的な機種で弱風を活用すれば1時間1円以下。エアコンと併用すれば、冷気を循環させて室内全体の温度を下げることができるので、設定温度に達するまでの時間を短縮できます」

 掃除もポイント。フィルターにホコリが詰まっていると効率が下がる。

「2週間に1度を目安に掃除しましょう。また、室外機の周りに、自転車や植木鉢など物を置かないことも大事。遮蔽物があると、外気を吸い込みにくく、余計な電力を必要とします。室外機の周辺を整理してみましょう」

 このほか、外出自粛で使用頻度が増えた家電の節電ポイントを聞いた。まずは、テレビ。

画面の明るさである“輝度”を下げる。音量も少し下げてみる。この2つを意識するだけで節電効果はあります。最近の製品であれば、部屋の明るさに合わせて輝度を自動調整したり、人の動きがなければ自動で電源をオフする機能などが備わっています。テレビの節電機能をフル活用しましょう」

 在宅勤務・自宅学習の影響で使用量が増えたのがスマホやタブレットなどの電子端末。

やはり目が疲れない程度に明るさを抑えること。また、スリープ状態になるまでの時間を短く設定しておきましょう。支障がなければ、GPSやWi-Fi機能などの通信設定を無効にしておくことで、バッテリー消費を抑えられます。個別に無効にするのは手間なので、これらの機能をまとめて無効にする『機内モード』にしておくのも一案です。機種によって仕様が異なりますので、取扱説明書などを確認してみてください」

加熱効率が上がるのはターンテーブルの外側

“うちごはん”が増えるにつれて使用頻度が増す電子レンジについては──。

「まずは庫内の掃除を。食材などの汚れが残っていると電波に乱れが生じて効率が低下します。またターンテーブル式の場合は、食材を中央からやや外側に置くのがおすすめ。マイクロ波は中央から少しはずれた場所に届きやすいので加熱効率が上がります」

 家にいる時間が長いせいか、“掃除機をかける回数が増えた”という声も多い。

「吸引力によって弱・中・強とスイッチが段階的になっていますが、節電を考えると『弱』で使い続けるのがベスト。『強』だとモーターをたくさん回転させるため大きな電力が必要になります」

 そこで本多さんがオススメするのが“予備掃除”。

「まず、雑巾がけやフローリングシートで床をふく。そのあと『弱』でササッと掃除機をかけるのが効果的。掃除機の電力使用量は意外と大きいので、使う時間が短いほど節電になります」

 手っ取り早い節電として、蛍光灯や電球をLEDに替えるのが効果的だという。

「LEDの電気代は蛍光灯などに比べて半分以下。しかも寿命が長い。製品価格が高いので初期投資はかかりますが、その後の恩恵は大きい。私の家では、すべてLEDに替えたことで年間1000円ほど電気代が下がりました。効果は大きいと思います」

 このタイミングで電気料金プランなど抜本的な見直しをするのもいいだろう。

「電力の自由化により、新たな電力会社も増えています。例えば、夜間の電気料金の単価が安くなるプランや、一定の電力使用量までは定額のプランなど、各社いろんなプランを用意しています。自分たち家族の生活スタイルや電気を多く使う時間帯に合う、最適のプランがきっと見つかるでしょう」

 身につけた節電意識は、コロナが去ったあとも、おトクをもたらすことだろう。

《1時間で30円の差がつく! スマート節電テク》
1.使用前に換気&扇風機で空気を動かす

窓を開けて風を通し、扇風機で部屋の空気を動かしておくと、エアコン使用時に冷気が効率よく広がり室温を下げる時間を短縮できる

2.運転モードはすべて『自動』が最適
節電で運転モードを『弱』にしても、設定温度に達するのに時間がかかるだけ。もっとも効率よく室温を調整するのは『自動』運転

3.設定温度は外気と差があるほど電力を消費
外気が33℃のとき、設定温度を23℃にしたら温度差は10℃。28℃にすれば差は5℃。無理のない範囲で設定温度を上げることが節電に

4.外出が1時間以内なら“つけっぱなし”OK
電源を切って室温が上がると、次に電源を入れたとき多くの電力を使用する。冷房の場合、1時間程度ならつけっぱなしが節電に

5.『自動お掃除機能』に頼りきらない!
フィルターが目詰まりすると冷房効果が落ちてムダに電力を使用。『自動お掃除機能』があっても、2週間に1度を目安に掃除を

《トリセツがあれば1時間の電気代が算出できる!》
【   w】×1×26円÷1000=【     円】
※取扱説明書の仕様説明のところに、冷・暖房時の消費電力が記載されている。それを見て、冷房時の消費電力を上のブロックに記入し、計算すると1時間の電気代が算出できる(ただし、電気単価はあくまで目安)

(取材/村瀬素子)


【プロフィール】
本多宏行さん ◎延長保証会社『テックマークジャパン』に勤務。家電などに係る修理精査業務を行う。幅広い家電製品の専門知識が必要となる『総合家電エンジニア』資格を取得。