御養蚕所で蚕に桑の葉を与える“ご給桑”のため皇居へ入られる雅子さま(2020年5月22日)

《これまで医療活動に献身的に力を尽くしてこられている方々、そして、その方々を支えられているご家族や周囲の方々に、陛下とご一緒に心からのお礼の気持ちをお伝えしたいと思います》

 5月20日、『日本赤十字社』社長らからご進講を受けられた雅子さまは冒頭、このようなおことばをかけられた。

 体面上は日赤の人々へのおことばだが、ご進講でのご発言を公にすることは“異例”であり“国民全体に向けてのメッセージ”という意味あいもあるのだろう。

 現在、外出を伴う公務はいっさい行われていない皇室の方々。美智子さまや愛子さまも、外出自粛の日々を送られている。

「美智子さまは、3月末に東京都港区の『仙洞仮御所』に引っ越されて以降、敷地内の庭を散歩する以外は部屋の中で過ごされています。職員とも極力会わないようにするなど、コロナ対策を徹底されているようです。学習院大学の1年生となった愛子さまは、5月11日からオンラインで授業を受けられています。第二外国語は、お父さまの影響でスペイン語を専攻されたと聞きました」(宮内庁関係者)

学習院女子高等科を卒業された愛子さま(2020年3月22日)

 そんな中、雅子さまにとって唯一とも言える外出は、歴代の皇后が引き継いでいる“ご養蚕”の作業なのだが……。

「5月11日に皇居の敷地内にある『紅葉山御養蚕所』で『御養蚕始の儀』を行われ、今年の養蚕作業がスタートしました。

 しかし、5月18日に皇居で養蚕作業が予定されていたのですが、雅子さまの体調が整わず、当日ギリギリになって“ドタキャン”されてしまったのです。

 療養に入られてから17年目になりますが、医師団の見解どおり、いまだにご体調に波がおありのようです」(皇室担当記者)

 その4日後には無事、蚕に桑の葉を与える“ご給桑”の作業を養蚕所で行われた。

 今回の直前キャンセルは、皇后になられてからの“プレッシャー”が関係していると、心理学に詳しい東京未来大学こども心理学部長の出口保行教授は分析する。

今回のドタキャンは、周囲からの過度なプレッシャーが原因となった可能性が大いにあります。周辺でお仕えする方々は、雅子さまのご様子をきちんととらえて対処、対応していらっしゃるでしょうから問題はありませんが、一方で国民から“やればできる”と見られてしまえば大きなプレッシャーになります。『適応障害』のいちばんの原因であるストレスが高まることを回避することが最も求められます。そういった点からも、今回の当日キャンセルは、とてもよいことだと思います」

 昨年、お代替わりの一連行事をすべてこなされた雅子さまだけに、周囲からの期待が重圧になっていたのかもしれない。

「急がず、ご自分のペースでゆっくりと公務に臨まれることが大切ですし、雅子さまへの期待がストレスに変わることも、私たち国民は知っておく必要があるでしょう。雅子さまの中にある“皇后陛下はこうあるべき”という使命感を弱めることができるのかも重要です。国民は、その使命感をあおらないように静観することがポイントになると思います」(出口教授)

 ご養蚕以外にも、コロナ騒動がなければ、5月には“重要行事”が控えていた両陛下。

「5月を軸に、即位後初めての外国訪問として、イギリスに外遊される予定でしたが、今回のコロナ騒動で延期に。

 雅子さまは外務省時代、イギリスの『オックスフォード大学』に留学経験があり、なじみ深い国です。宮内庁としては、親しみ深いイギリスでの行事日程が、雅子さまにどれほどの負担になるのかを把握したいという気持ちもあったそうですよ」(宮内庁関係者)

ご成婚前、堪能な英語を生かし、オックスフォード大学で学ばれた雅子さま(1989年8月)

 そして実は、この訪英が実現していれば、ついに雅子さまの“肉声”をお聞きできる場が整えられるはずだったと、前出の宮内庁関係者は語る。

「陛下が外国訪問する際、直前に記者会見が行われるのが通例なのですが、今回の訪英前会見では“雅子さまも同席される予定”だったのです。

 雅子さまが最後に会見の場に臨まれたのは'02年12月なので、実に“17年半ぶり”となるはずでした。

 なんでも雅子さまは、訪英前会見の出席を見据えて、今年2月末にあった陛下のお誕生日会見をご覧になった際、“イギリス訪問前の会見では、質問を少し柔らかくしてほしい”といった旨を、宮内庁職員を通じて、宮内記者会に伝達されたと聞きました」

このオーストラリア・ニュージーランドご訪問前のもの以降、雅子さまは会見に出席されていない(2002年12月)

 宮内庁OBで皇室ジャーナリストの山下晋司さんは、外国訪問前会見の“意義”について次のように話す。

「外国訪問前に行われる記者会見は、日本国内だけではなく、訪問国の国民に天皇・皇后両陛下のことを知ってもらうという意味あいがある点で、お誕生日の記者会見とは異なります。訪問先の英国民に、両陛下のお人柄や、両陛下とも英国の大学で学ばれていたことなどを知ってもらうことは、親しみを持って、温かく迎えていただく環境づくりに役立ちます」

 ただ、今回は訪英が延期になったため、会見も延期に。

 雅子さまが会見に復帰されるのはいったい、いつになるのだろうか。

「コロナ禍の収束が前提ですが、延期されている『立皇嗣の礼』が10月ごろに行われると、お代替わりに関する一連の行事が終わります。

 12月には、皇后陛下のお誕生日がありますが、香淳皇后も上皇后陛下も皇后時代にはお誕生日の記者会見は行っていません。

 そう考えると、昨年10月に行われた『即位礼正殿の儀』から1年たち、お代替わりの行事もすべて終わった今年10月か11月に両陛下おそろいの記者会見が行われる可能性はあります」(山下さん)

 今年10月ごろに会見復帰となれば“18年ぶり”。そのときまで、今は静かに雅子さまを見守りたい─。