※写真はイメージです

今まで口だけ防毒マスクをしていましたが、新型コロナウイルスが流行し始めてから、フルフェイスのものに変えました。それが、ものすごく暑いんですよ

 そう話すのは、以前、週刊女性でも取材し反響を呼んだ「孤独死現場のミニチュア作品」を手がける“遺品整理人”小島美羽さん(遺品整理クリーンサービス所属)。数々の現場で、遺品整理や特殊清掃を手がけている。

 特殊清掃の現場は、私たちが想像している以上に壮絶だ。

「亡くなられて数か月間、お部屋でご遺体がそのままになっていた現場に行くこともあります。警察は骨しか持っていかないので、その場に頭皮とか指、耳が落ちていたり。もちろん虫もわいてます。お風呂で亡くなった場合などは、浴槽内にドロドロになった皮膚がたまったりすることもあって。でも、それをキレイにするのも、私たちの仕事です」

 そんな現場も含め、ほぼ毎日作業をしてきた小島さん。このコロナ禍で、彼女の仕事はどうなっていたのか。

「会社の営業自体はしていましたが、やはりお客さまもコロナが怖いみたいでキャンセルが相次ぎました。4月はゼロ。その間は、特殊清掃でも使ってきた消毒液の販売で忙しくしていました。やっと、5月に入って少しずつ依頼が戻ってきたので、これからもっと増えていくのかなと。それこそ、コロナで亡くなった方のお部屋に行くこともあるかもしれません

「部屋で亡くなった=高額請求」
といった不安から

 しかし、数多くの経験から、こんな懸念も。

「例えそうでも、“コロナで亡くなった”と遺族の方は明かさないと思うんです。実は、これまでにもご病気やお部屋で亡くなったこと自体を隠していたケースも少なくなくて。周りの目を気にしているのもありますが、その事情を私たち業者に知られると、高額請求されるんではないかという不安があるみたいなんです。特にコロナはここまでの事態となりましたから、なおさらですよね。

 今後、コロナで亡くなった方のお部屋をどうするのか、国や都で何か対策があるのかもしれませんが、まだ現場にはその話は下りてきていないので。状況によっては感染の可能性もゼロとは言いきれないと思うので、そのときは隠さずに言ってもらいたいです」

 実際のところ、特殊清掃の必要がないのに、“部屋で亡くなった”というだけで本来は必要ないオプションをつけ、高額な請求をしてくる悪徳業者も存在するという。それは小島さんたちの同業者に限ったことではなく、彼女が向かった先の現場でも。

「昨年ですが、家で亡くなられた方がいて。死後2〜3か月経ったころに、他県に住む弟さんによって発見されました。でもそのアパートの管理会社の人たちがひどい人たちで。

 遺族の方は、部屋で亡くなったことに少し申し訳なさを感じていたようで、彼らはそこを見逃さなかった。 “強く出ても何も言えないだろう、請求しても大丈夫だろう”って、弱みに付け込む形で、結局、本来はしなくてもいいリフォームの契約をさせたんです。大家さんはというと、その管理会社の人たちに言われるがまま。

 その大家さんに、後日お会いする機会があったんですが、そのとき、うれしそうに私たちに言ったんです。“(リフォームしてもらえて)ラッキーだった!”って。その言葉に、愕然としました」

“何もできず、悔しい思いをした”と振り返る小島さん。というのも、小島さんがこの仕事をしている根底には、悪徳業者をなくしたいという目標があり、前回の取材でも“お金のために働いていない”と語っていた。

心に寄り添いたい

 そんな彼女が現場で心がけているのは、依頼者とのコミュニケーションだ。

「依頼者である、例えばご家族の方と一緒に片付けをすることもあるんですが、そのときは私から話を聞くようにしていて。最初は壁を感じるものの、だんだん思い出話をしてくれるようになる。そうすると、あぁ、ここに住んでいた人は愛されていたんだろうなって。もちろん、恨まれていたんだなとか、逆のパターンもありますが。そこに住んでいた“人”っていうものが見えてくるんですよ

 そこで受け取ったメッセージを、彼女は今でもミニチュア作品で表現したり、トークショーで伝え続けている。

「お金がどうこうじゃない。正直、片付けって誰でもできると思うんですけど、そこからもう一歩、入り込んだところに触れられるのが私たちですから。私は誰かを亡くしてつらい想いをしている人たちの心が、少しでもラクになったらいいなと思っています」

 今後も彼女は、依頼があれば現場へと足を運ぶ。

「コロナの影響でしばらくはストップしていましたが、また少しずつ依頼も戻りはじめているので。またそういう人たちの心に寄り添えることができたらいいなと思います」