たばこを「吸う人」と「吸わない人」の共存のヒントは?

 世の中で価値観を大きく分けているもののひとつに、たばこを吸う習慣の有無がある。

 吸わない人の迷惑感情はかなりのものがあるが、吸う人にとってはたばこはリラックスやストレス解消のよりどころだけに、お互い心地の良い関係づくりが求められる分野といえよう。

 そんな中、『週刊女性PRIME』では、5月18日から25日にかけて「たばこを吸わない人へのアンケート」を実施した。

 その結果、525名もの方に回答いただき、ノンスモーカーのリアルな意識が浮き彫りとなった。

 この記事では、そんな「ノンスモーカーの考え」を報告するとともに、スモーカーとのより良い“棲み分け”に向けた動きも紹介したい。

 まずはアンケート結果について。

 Q1.あなたはたばこを吸う人から迷惑を被っていると思いますか。

 はい 416(79.24%)
 いいえ 45(8.57%)
 どちらともいえない 64(12.19%)

「はい」がほぼ8割。やはりというべきか、予想以上のノンスモーカーの迷惑感情が垣間見えた。

 また、次の質問。

 Q2.(Q1で「はい」と答えた人に)たばこを吸う人、もしくはたばこ全般の何に困っていますか。(複数回答可)

① 流れてきた煙が煙たい 358
② 副流煙による健康被害が心配 355
③ 喫煙後に身体についた臭いが困る 298
④ 喫煙可能施設などに染み付いた臭いが困る 190
⑤ その他 55

 要はほとんどの人が「煙たさ」「臭い」「健康被害」に迷惑さを感じているということ。実はそれ以外にも迷惑を引き起こしている事柄がある。吸い殻のポイ捨てである。「喫煙をする人にこんな困ったことがあったという体験があれば教えてください」という質問も自由記述式で実施したが、こちらのような回答が目立った。

「吸い殻&ポイ捨てが迷惑」(女性 30代 公務員)
「家の前のタバコのポイ捨て」(女性 40代 公務員)
「池とか川にポイ捨てをする人」(女性 30代 会社員)

 これはマナー以前の問題という気がするが、喫煙者にはより一層の自覚とともに、携帯用灰皿の持ち歩きなど、具体的な行動が求められるだろう。

 ノンスモーカーのスモーカーに対する数々の迷惑感情が浮き彫りになった形だが、スモーカー側の努力は進みつつある。加熱式たばこの普及である。

 1月、厚生労働省の『国民健康・栄養調査(平成30年)』の結果が公表されたが、習慣的喫煙者の男性が使用しているたばこ製品の種類は「紙巻きたばこ」が77.0%、
「加熱式たばこ」が30.6%、女性の場合はそれぞれ84.9%、23.6%だった。

 同調査で加熱式たばこの普及が調査されたのはこれが初めてだったので、前年からの増加率などはまだわからない。ただし、今回のアンケートでは、回答者のうち217人(41.3%)が「家族・同僚・友人など身近な喫煙者が加熱式に変えている」と回答している。

周囲への配慮を欠かさない人が選ぶ「低温型加熱式たばこ」

 加熱式たばこは、煙、吸い殻が出ず、臭いも少ないというノンスモーカーの迷惑感情をかなり解決するツールである。

 そこで加熱式たばこの特徴について、加熱式たばこ、電子たばこを扱う『VAPE STUDIO』を運営する株式会社トレードワークスのバイヤー・阿久津光さんに話を聞いた。

阿久津光さん

「たとえて言えば、紙巻きたばこは、たばこ葉を焼く“直火焼き”、高温型加熱式たばこは“IHヒーター”、低温型は“せいろ蒸し”、でしょうか。低温型はカートリッジの液体が加熱され蒸気が発生。その蒸気がたばこカプセルを通過し、たばこ成分を含む蒸気となります」(阿久津さん)

 加熱式たばこの利点としては、

「モノを燃やす時に発生するタールを大幅にカットしつつ、ニコチンを摂取することができます。タールがほとんど出ないため、臭いや壁紙などにつく黄ばみも少なくなります」(同)

 たばこメーカー各社とも加熱式たばこに力を入れており、フィリップ モリスの『IQOS(アイコス)』、ブリティッシュ・アメリカン・タバコの『glo(グロー)』、JT(日本たばこ産業)の『プルーム・テック』が代表的な機種となる。

「周囲への配慮、とりわけ臭いを抑えたいならプルーム・テックをおすすめします。タバコ葉は高温で熱するほど臭いは強くなりますが、プルーム・テックは30度で熱する低温加熱式で残り香はほとんどありません。

 旦那さんの喫煙もプルーム・テックならOKと納得してくれる奥様もいるようです。そのぶん、吸いごたえが弱いとも言われますが、そこを改善したのが後発機種の『プルーム・テック・プラス』で、加熱温度が10度上がり、カプセル内のたばこ葉の量も多くなっています」(同)

低温型加熱式たばこ、『プルーム・テック・プラス』

 その他、紙巻きたばこ1箱と加熱式たばこのカプセルのセットは同じ価格帯だが、プルーム・テック(低温加熱式)の方が紙巻きより持続時間が長い。そもそも、紙巻きは一度火をつけたら一度に1本吸いきらなければいけないが、プルーム・テックは1カプセルを吸ったり、やめたりと断続的に吸える。そのようなコストパフォーマンスも魅力となっている。

 “スメハラ(スメルハラスメント)”という言葉もあるように、臭いによる迷惑が意識される昨今、紙巻きユーザーはデバイスから喫煙習慣を変えていくことも検討に値するだろう。

4月1日から飲食店は原則禁煙になっていた

 さて、新型コロナウィルス感染拡大による「STAY HOME」の動きにすっかり隠れてしまっていたが、この4月から法制によって一層の分煙が進んだのをご存じだろうか。健康増進法が改正され、2020年4月1日に全面施行されたのである。また、同じ日、東京都では受動喫煙防止条例が施行された。この2つの法制によって飲食店が大きく変わった。具体的に何が変わったのだろうか。

改正健康増進法施行にともない、使われるようになった飲食店の喫煙関連の標識

 わかりやすく言うと、飲食店は全国的に屋内原則禁煙になったということ。ただし、飲食店内でも一部を喫煙可能にすることができる。具体的には、上記①の標識がついた喫煙専用室では、たばこを吸うことができるが、飲食などはできない。

 上記②の標識のある加熱式たばこ専用喫煙室では、加熱式たばこのみを吸うことができる。飲食なども可能となる。

 また、店内の全部を喫煙可能にできる飲食店も残る。まず、シガーバーなど、喫煙を嗜むためのバー・スナック。店舗には上記③の標識が掲げられる。

 そして、経営規模が小さい既存の飲食店も店内すべてを喫煙可能にすることができる。条件は、客席面積100平方メートル以下かつ資本金5,000万円以下で、2020年3月31日までに開業している店舗。そのような店は上記④の標識が掲げられる。

 受動喫煙防止条例が施行された東京都はどう違うのだろう。

 改正された健康増進法より厳格となっている。具体的には店内の全部で喫煙可能な小規模飲食店の条件として、客席面積100平方メートル以下かつ資本金5,000万円以下であることに加え、従業員を使用していない店舗(つまりオーナー1名で営業している店舗)であることが求められる。

 今回のアンケートでは、「どんなシーンで煙たいと感じたことがありますか」という質問も実施したが、回答者の約54%にあたる、289人が「会食・飲み会での喫煙」に煙たい思いをしたと答えている。

 新型コロナによる接触自粛の動きで会食、飲み会などは避けられる傾向だが、終息後はノンスモーカーもそこで煙たい思いをすることは少なくなるはず。

 令和2年も、既にほぼ半分が終わろうとしているが、低温型加熱式たばこのようなデバイスと、改正健増法に代表される制度、この2つが主役となり、スモーカーとノンスモーカー、お互い心地良い棲み分けが進む年になりそうだ。