婚活市場が、元の活気を取り戻してきました。緊急事態宣言期間中に休業していたホテルのティーラウンジも営業を再開。お見合いカップルを多く見かけるようになりました。ライターをしながら、仲人としても婚活現場に関わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、さまざまなテーマ別に考えてゆく連載。今回は、オンラインお見合いで“交際”となったカップルたちの“その後”をお伝えしたいと思います。

オンラインお見合いで交際しても、リアルで会うと交際終了することも…(写真はイメージです)

オンラインとリアルのギャップに戸惑う

 年明けから新型コロナウィルスの感染者が日に日に増えていく中、婚活業界は、リアルにお会いする対面お見合いからオンラインお見合いへと切り替わっていきました。

「オンラインお見合いは、対面お見合いよりカップル誕生率が高い」

 当初、どの仲人さんもそんなことを言っていました。

 オンラインお見合いで主に使われていたのがテレビ会議のできるアプリ、Zoomです。結婚相談所では、個人情報を保護する観点から、交際になるまでは、連絡先はお相手に教えないことになっています。スカイプやLINEビデオは、個人のIDを交換しないと繋がることができないので、お見合いには使えませんでした。ところがZoomは仲人がホストとなり、お見合い開催のミーティングを設定して、URLとIDとパスワードを2人に送れば、個人情報を交換することなくオンラインお見合いができたので、とても使い勝手のいいアプリでした。

 ただZoomアプリを3人以上で無料のまま使う場合は、40分で切れてしまうという難点もありました。通常の対面お見合いは、1時間から1時間半なので、40分では短すぎるのではないか。最初はそれが懸念事項だったのですが、時間が短いと“もう少し話をしてみたい”という気持ちが生まれ、結果、“交際”になる確率も上がるという、いい結果につながりました。

 Zoomで交際になったカップルは、その後、LINEや電話でのやり取りを続けたり、緊急事態宣言が明けてからはリアルに会ったりするようになりました。すると、リアルに会った後に、“交際終了”を伝えてくる人も増えたのです。

 範子さん(33歳、仮名)も、そのひとりでした。

「洋輔さん(35歳)と先日、初めてお会いしてランチをしたのですが、交際終了にしたいと思います」と、連絡が来ました。

 お断りの理由は、こうでした。

「オンラインのときには、歯並びまで見えなかったんですが、リアルにお会いしたら、歯並びがガタガタで前歯がところどころ黒ずんでいたんです。タバコは吸わない方のようなので、虫歯を治療していないのかもしれません。いったんそこか気になり出したら、話をしていても、歯並びにばかり目がいってしまいました」

 範子さんは、小学校のころ、歯並びが悪く矯正した経験があります。その甲斐あって、今はとも美しい歯並びですし、虫歯が一本もない真っ白な歯をしています。

「自分がそんな経験をしているので、人とお話しするときに、ついつい歯に目がいってしまうんです。洋輔さんには申し訳ないのですが、歯並びを見てからは、キスのシュミレーションができなくなりました」

 確かにZoomお見合いでは、歯並びまでわかりませんよね。

ニキビと体臭が気になりました

 宏美さん(35歳、仮名)も、Zoomお見合いの後にお付き合いしていた康司さん(37歳、仮名)とリアルにデートをして、交際終了を申し出てきたひとりです。

「画面越しでは気にならなかったニキビが、お会いしてみたら、すごく目についてしまいました。あと、なにか独特な臭いが気になりました。体臭だと思います」

 これは女性にもいえることですが、肌がきれいだとそれだけで生き生きとした若々しい印象になります。また、今はどこに行くにもマスクが手放せないので体温が上がり、夏場は汗をかきやすくなります。そうするとマスクを取って会話するときに、お相手の体臭が余計に気になりますね。

「私に気を使ってくださる優しい方なのですが、見た目や匂いが受け入れられない。もうこれは理屈ではなく、お付き合いをしていくのは難しいと思いました」

 汗臭、加齢臭という言葉はよく聞きますが、男性化粧品会社“マンダム”によると、30〜40代のミドル男性の中には、特有の脂っぽいニオイを出す人がいて、それを“ミドル脂臭”と呼ぶのだそうです。

 体臭は確かに画面越しからは伝わりません。宏美さんが康司さんとリアルにお会いしていたら、交際希望は出さなかったかもしれません。

オンライン後、リアルにお会いしての成功例も

 ただオンラインお見合いからリアルにお会いして、好感度を高めたカップルもいます。恒夫さん(37歳、仮名)は、朱実さん(33歳、仮名)とZoomのオンラインパーティーで出会いました。

 Zoomのオンラインパーティーは、最初に全員が表示され、自己紹介からスタートします。その後、「この人と話してみたい」とホストにリクエストを出すと、ブレイクルームに移り、1対1で話すことができるのです。

 恒夫さんが言いました。

「画面越しの笑顔がすごく優しそうだったし、僕が『休みの日は何をしているんですか?』と聞くと、まずはご自身が答えてから、同じ質問を僕にも投げてくれました。そこに思いやりを感じたし、会話のキャッチボールがとてもテンポよくできたんです」

 オンラインパーティーでマッチングし、連絡先を交換してからは、リアルにお会いしたようです。

「駅で待ち合わせをしたのですが、予想していたよりも小柄で、可愛らしかった。そこからオープンカフェに移りランチをしたら、食事の仕方がすごくきれいでした。残さずにおいしそうに食べる様子に好感が持てました。画面越しでは気付けたかったことが、リアルにお会いしてたくさんわかって、さらにいいなと思いました」

 コロナによってオンラインお見合いは、一気にポピュラーになりました。遠方の方ともお見合いができますし、ソーシャルディスタンスに配慮しなくても話ができます。また、お見合い場所に出向きませんから交通費もかかりませんし、何より男性はお茶代の負担がありません。たくさんの利点があります。

 ただオンラインのやりとりだけで結婚へと繋がることはないので、出会いのきっかけは掴めても、次にはリアルな出会いが待っています。ご本人を目の前にして、オンラインではわからなかったことが見え、そのギャップがいい方向に出るか、悪い方向に出るか、そこか分かれ道になってしまいます。

 ですが、今後はコロナウィルスと共生共存の社会になっていきますから、婚活業界もオンラインお見合いと、リアルにお会いする対面お見合いの2本柱になるのは、確かなのではないでしょうか。 


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/