世の中には「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」だけでなく、「ヤバい男=ヤバ男(ヤバダン)」も存在する。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバ男」を分析していきます。
渡部建、佐々木希

第9回 渡部建

 6月18日号『週刊文春』が報じたアンジャッシュ・渡部建の不倫。

 米国の映画情報サイト『TC Candler』が選んだ「世界でもっとも美しい顔100人」にも選ばれた女優・佐々木希を妻に持ち、お子さんにも恵まれて順風満帆に見える渡部が、複数の女性と不倫関係にあったことに驚いた人も多かったことでしょう。

 しかも、付き合い方がヤバい。『週刊文春』によると、渡部は多目的トイレに女性Bさんを呼び出し、5分程度で行為を終えると1万円を渡して去っていったそうです。Bさんは渡部との関係を「“性のはけ口”くらいにしか思っていなかったんでしょうね」と振り返っていました。名古屋のホテルに呼び出されたという別の女性は、コトが済むと、すぐに部屋から出されて「デリヘル扱いされたことが本当に悔しかった」と話しています。女性を性欲解消のための道具としか思っていないような行為に、ネットはドン引き。「気持ち悪い」の声が上がりますが、私はあまり驚かないというか、ありえる話だなと思いました。

 渡部は自分より15歳も年下で、天下の美女・佐々木希を口説ける強いハートの持ち主です。そんな人にとって、一般人の女性を口説くなんて朝飯前のことでは? と思ったからです。

陣内智則の不倫と驚くほど似ている

 芸能界有数の美人女優を妻にしたお笑い芸人といえば、離婚してしまいましたが、陣内智則が思い出されます。

 陣内は女優・藤原紀香との婚姻中に不倫をし、相手の女性に陣内との関係を寝顔写真とともに『フライデー』に売られてしまったことがあります。相手の女性は「性欲を発散するみたいな感じ」と陣内のセックスが自分本位であったことをほのめかしていました。会見を開いた陣内は、同誌の内容をほぼ事実とし、浮気相手が複数に及ぶことを認めていました。陣内は女性とホテルで会っていましたが、それ以外は渡部と驚くほど似ていると言えるでしょう。

 高嶺の花に果敢に挑む渡部や陣内の根っこにあるのは、強い上昇志向やブランド志向なのではないでしょうか。みんなが憧れる女性を妻にしたり、多くの女性と関係を結ぶ、もしくは弄(もてあそ)ぶことで「こんなことができるオレってすごい」と優越感に浸るのかもしれません。こういう人にとって、女性は賞品みたいなものですから、多ければ多いほどいい。いくつ手に入れても満足はしないでしょう。

 しかし、陣内と比べると、渡部のほうがよりズルいかもしれません。陣内は記者会見で記者に詰められて謝罪するという、一種の通過儀礼を経験しています。それに対し、渡部は「番組に迷惑をかけたくない」ことを理由に『週刊文春』が発売される前に出演自粛を発表して雲隠れし、謝罪会見はなし。おかげで相方である児嶋一哉は悪いことをしていないにもかかわらず、渡部がパーソナリティーを務めるラジオ『GOLD RUSH』(J-WAVE)で謝罪せざるをえなくなってしまいました。

『週刊文春』によると、渡部はもてあそんだ女性の携帯をチェックして自分とのLINEのやりとりが本当に消されたかチェックしたり、文春の記者に直撃された後、「ちょっとクルマ停めてきていいですか?」と駐車場に入り、そのまま逃げてしまうなど、小ズルい印象を受けます。

妻に不満があるから夫が不倫する?

 しかし、ズルいのは渡部だけではありません。芸能人の既婚男性が不倫をしたとき、オジサマ御用達メディアでは、必ずといっていいほど「夫が不倫をするのは、妻に至らないところがあるからだ」という「妻がヤバい説」が浮上します。オジサマたちのこの言い分、一見もっともらしいところがズルくてヤバいと思うのです。

 6月10日付の『東スポWeb』では《アンジャッシュ・渡部 妻・佐々木希に大きな不満を感じていた?》として、渡部は佐々木が「片づけられない女」であることに不満を持ち、不倫の原因になったのではないかと報じています。じゃ、夫が服を脱ぎ散らかしたりしたら、妻が不倫してもいいんでしょうか?

 6月16日付『日刊ゲンダイDIGITAL』では《産後妻を持つ夫に潜む“渡部建リスク” 家庭に居場所なしか》という記事を掲載しています。「子供と奥さんの濃密な空間に男性が入る余地が少しずつ減り、家庭で自分の居場所を失っていったのだろう」と、不倫の原因を“疎外感”だとしていますが、初めての子育てで、妻がてんてこ舞いしているのに、なぜ夫の居場所まで妻が配慮しないといけないんでしょうか?

 オジサマたちの言うことにゃ、妻がしっかりしていることも不倫される原因になるそうです。女優・杏の夫、俳優・東出昌大が不倫した際、2020年1月26日付の『日刊ゲンダイDEGITAL』では、《東出昌大は「帰宅拒否症」だった“理想の夫婦”の哀しい現実》という記事を掲載しています。「家庭生活で完全にイニシアチブを握ったのは、役者としてのキャリアが上で、しっかり者の杏。夫婦が役者を続けていくために、育児と家事をきっちりと分担することを東出に提案したという」「これが東出が“イクメン”と呼ばれるきっかけにもなったわけだが、理想の夫を演じ続ける中で彼の心の中に少しずつ“見えないストレス”が蓄積されていったようだ」と書いています。あのぉ、仕事と家事と育児をしている妻にはストレスがないと思っているんでしょうか?

「不倫するのは、配偶者に不満があるから」説のズルい点は、「男性にだけ」適用されることなのです。たとえば、女優・斉藤由貴が夫と子どもがある身でありながら不倫をした際、「夫に不満があったから」と日刊ゲンダイも東スポも言いません。2017年9月9日付『日刊ゲンダイDIGITAL』では、斉藤由貴の不倫について「とくに全盛期を知らない若者世代から見れば、年甲斐もなく肉食でキモいおばさんにしか映らない」「年も立場も忘れて男に走った罪は自分で償うしかなく、罰は重い」と手厳しい。これってつまり、「オトコの不倫は妻のせいだが、オンナの不倫は身の程を知らないおばさんの罪だから、罰を受けよ」ということでしょうか? もしそうなら、オトコに都合よすぎてヤバいでしょう。

独身のときにヤバい人は、結婚してもヤバい

 結婚願望のある独身女性は、こういう記事を目にすると「夫に不満を持たせると、不倫されてしまうんだ」と恐れを抱いてしまうかもしれませんが、そんなことはないよと申し上げたい。

 上述したとおり、陣内智則は藤原紀香と結婚している身でありながら、複数の女性と関係を持ったことで好感度は大幅に下落します。それで懲りたかというとそうでもなく、その後、フジテレビアナウンサー・松村未央とモデル女性が、陣内の自宅マンションに代わりばんこに宿泊する“二股疑惑”を『フライデー』に撮られています。結局、松村アナと結婚して1児の父となった陣内ですが、2019年12月9日放送の『中居くん決めて!』(TBS系)では、「(浮気は)絶対にバレない」と変な自信をのぞかせています。

 渡部は、事務所の後輩であるおぎやはぎ・小木博明に『おぎやはぎのメガネびいき』(TBSラジオ)で、ふたりの結婚が決まった際に「長くて1か月」「結局浮気する」「渡部さんて、いちばんかわいい子から結構下のほうまで全部落とすもんね」、不倫報道が出た後の『バイキング』(フジテレビ系)で、矢作兼は「世間と佐々木希ちゃんだけなんだよ、渡部さんを信用してるのは」と発言していました。渡部の身近な人にとっては、オンナ癖の悪さは周知の事実だったということでしょう。

 結局、「不満があるから、不倫する」というのは後づけで、単に「独身のときにヤバい人は、結婚してもヤバい」というだけの話ではないでしょうか。

 今回の件で面白いと思ったのは、評判というものの正確さなのでした。同じ事務所の後輩、おぎやはぎ・小木博明の「結局浮気する」は結果的に当たったことになります。オアシズ・大久保佳代子は『ノンストップ!』(フジテレビ系)で渡部を「いい意味でも悪い意味でも、損得を考える人」と話していましたが、これは妻を表向き大事にしながら、陰で一般人女性を手荒く扱うという行為の説明になっているように感じます。

 キャリアの長い渡部は芸人に人脈があるはずなのに、大物芸人から擁護する声が上がらないのは、渡部に“人望”というものがないことを示しているのではないでしょうか。

 ネットの発達で、私たちは何が本当で何がウソかわからない情報の海の中にいます。しかし、「本当のこと」が知りたいのなら、「一緒に仕事をしている人」に「あの人ってヤバくない?」と聞いてみるのがいちばん正しいのかもしれないと思ったりしたのでした。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」