参議院議員・河井案里容疑者

 故郷は南国・宮崎─。

 公職選挙法違反(買収)の疑いで2020年6月18日に逮捕された参議院議員・河井案里容疑者(※2021年1月に懲役1年4ヶ月執行猶予5年の有罪判決が下った)の少女時代を知る地元の男性は、

「悪知恵を働かせるような子ではなかった。政治家になるためには、きれいごとだけではすまんのだろうか」

 と、ため息まじりに話す。

相当おとなしい子だった

 2019年7月の参院選(広島選挙区)で票の取りまとめや投票を頼む目的で現金を配ったとして、夫で前法相の克行容疑者(57=衆議院広島3区)とともに司直の手に落ちた。買収対象は地元県議や首長ら94人にのぼり、計約2570万円を提供していたというからあきれる。

「なんとしても妻を初当選させたかった克行容疑者が主犯格とみられるが、案里容疑者もうち5人に対する計170万円分で共謀した疑い。夫婦で雲隠れしていたホテルの部屋に検察官が踏み込んだとき、乱暴なやり方に激怒した案里容疑者は“調べたければどうぞ”と服を脱いで全裸になり、生理中のナプキンまで投げつけたそうだ」

 と全国紙社会部記者。

 案里容疑者は容疑を否認しており、克行容疑者は現金提供を認めつつも「買収目的ではない」などと否認しているという。

 冒頭の地元男性は、案里容疑者のこうした鼻っ柱の強いエピソードが信じられない。

「だって、相当おとなしい女の子だったから」(同)

 宮崎県延岡市で建築家の父親と声楽家の母親の次女として生まれた。黒々とした毛髪量と眉毛の太さから、祖母は西郷隆盛を連想したそうだ。

 4歳のとき、国立大学の付属幼稚園に入学。自宅も宮崎市内に転居した。

おどけたポーズで写真に写る、幼少期の案里容疑者(公式HPより)

 このころは、

《将来パンダちゃんになろうとマジで決意していた。それが無理ならうさぎでもよかった》(案里容疑者の公式ホームページより、以下同)

 と、かわいらしい発想も。

 付属小、付属中と進学するに従い、控えめな性格が形成されていったようだ。

生徒会役員をやっていた

 10代のころを知る女性は「物静かで頭のいい娘さんでしたね」と振り返る。

外で友達と遊ぶよりも、自宅でお母さまとピアノを弾いたりするほうが楽しかったみたいです。中学生になっても反抗期はなく、合唱部に入部してお母さまを喜ばせていました。思春期にはフンッと澄ました態度をとるようになったり、どこか冷たい感じも見受けられるようになりましたが、グレることはありませんでした」(同・女性)

 中学では合唱部のほか美術部にも所属し、少女らしい一面をのぞかせる。美術部に入ったのは部室から校庭が見やすかったためで、友達と、

《好きな男の子の部活中の姿を見るのに忙しく、作品を作っている暇なんか、なかった》

 と恋心を募らせた。

 高校は、県内でも有数の県立進学校に合格。成績別の『私大文系』クラスでこつこつと学力を伸ばしていった。

高校生活は生徒会役員としてイキイキと過ごす(公式HPより)

 高校で同級生だった女性が言う。

「真剣に将来を見据えて勉強していました。まじめで明るくて美人で、元気ハツラツな素敵な子でした」

 一方、同級生の男性は、

「学校のマドンナとまではいかないけれど、案里さんのことを好きな男子生徒はいましたね。案里さんは生徒会役員をやっていて、“マフラーとコート着用の自由化運動”に取り組んだんです」

 と懐かしそうに語る。

 いわゆる“学校あるある”の類い。生徒がマフラーを巻いて自転車通学した場合、風にあおられてマフラーの端が木の枝に引っかかり、窒息する危険性があるため「禁止」とされていた。

 生徒側が学校に意見を言いやすい校風の中、案里容疑者ら生徒会役員は立ち上がった。

「生徒会は“いくら南国でも冬は寒い。マフラーとコートぐらいは自由に着させてほしい”と学校に申し入れたんです。しかし、残念ながら私たちの代では認められず、自由化運動は不発に終わりました」(別の同級生男性)

 後年、着用が認められたそうだから礎を築いたかたち。そんな高校時代に案里容疑者は《政治を勉強したい》と思うようになったという。

大学入学に伴い地元、宮崎を離れる(公式HPより)

叔母が語る案里容疑者の素顔

 卒業後は慶応義塾大学に進んで上京。科学技術振興機構などを経て、2001年に克行容疑者と結婚。

 広島県議を計約14年務めたのち、初めての国政挑戦で票の買収行為をした疑いが持たれている。

 おとなしい顔、まじめな顔、明るい顔、勇ましい顔、ずる賢い顔─。どれが実像なのか。

 生まれ故郷の延岡市で暮らす案里容疑者の叔母を訪ねると、やや狼狽しながらも「本当は素直な子なんです。明るくて、やさしくて」と、かばうように言葉をつなぐ。

「ひとり暮らしの私を心配して“元気してる~?”って電話をくれたり、年に1回はお墓参りのついでに立ち寄ってくれます。夫と姉夫婦、両親の6人で来るときは、笑い声もあってにぎやかな感じでしたよ」(叔母)

 子どものころから勉強が好きで、小・中学校時代に遊びに来るときは、必ず勉強道具を持ってきていたという。

「近くの公園などに遊びに行くこともなく、ひたすら宿題をこなしていました。終えると一緒に食事をしたり、たわいもない話をします。高校生になっても、大学生になっても、結婚してからも旦那さんと一緒に訪ねてきてくれた。政治の話なんていっさいしません。案里は、私の体調を気遣って連絡をくれる思いやりのある子なんです」(同)

 周辺の話によると、案里容疑者は両親と仲がよく、昨年の初登院時には姉から当選祝いでもらった“花柄のシャツ”を着るなど家族を大切にしている。

 参院選直前にあたる2019年の父の日(6月16日)。案里容疑者はフェイスブックで、隠居していた父親が東京の設計事務所からヘッドハンティングされ、現場復帰したことを喜ぶ書き込みをした。

 宮崎では著名な建築家だった父親は、慣れない飲食・焼き肉店経営に手を出して失敗した過去がある。

《私は、父が建築の世界に戻ってくれたことが純粋に嬉しい。そして、人間の人生とは、人の繋がりによって拓かれていくものだなと、改めて痛感した》(フェイスブックより)

 容疑が事実ならば、その舌の根も乾かないうちに“人とカネでつながろうとした”ことになる。

 また、2019年秋に“ウグイス嬢買収疑惑”が発覚して以降、議員辞職しなかった河井夫妻は仕事らしい仕事もできぬまま、計2484万円の議員歳費を受け取っている。

 宮崎市内の実家の両親を訪ねたが、インターホンを鳴らしても応答はなし。逮捕は今年の父の日の3日前だった。親不孝をしたことは間違いない。