鈴木おさむとしげるちゃん

『しげログ』は商品プロデューサーとして活躍し、海外のファッション・流行などをナビゲートしているしげるちゃんが毎回「会いたい人」と「好きなお店」で対談! ゲストの“素”を引き出しちゃいます。第9回目のゲストは放送作家の鈴木おさむさん。緊急事態宣言明けに行われたソーシャルディスタンス対談の行方は──? 

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しげる「おさむさんが脚本を書かれているドラマ『M』と言えば、水野美紀さんの怪演! すごいですよね。しげるも大好きなんですけど、ネットでもすごく話題になってましたよね」

鈴木「水野美紀さんもすごいんですよ。日本の女優さんって、海外と比較すると、歳を重ねるたびに役柄の幅が狭くなっていくんです。でも水野さんは違うんですね。彼女も美少女としてデビューしているのに、30、40代になってきて、例えば『M』では、あそこまでの怪演を見せてくれています。そうすると、なんか40代の女優さんにも“希望”が出てくるんじゃないかって

しげる「例えば、最近だと広瀬すずちゃんとか、10代の女優さんが主演を演じることが多いから、30代〜40代の女優さん達がお母さん役を演じる機会が多い。すると、必然的に主演やヒロインを演じる機会が減ってきますよね~」

鈴木「確かにおっしゃる通りですね。広瀬すずちゃんは主役もやるし、ヒロインもやるし、あとちょっと変わった役とか大変な役(男性に暴行される役など)もやったりする。若い俳優さんや女優さんはオファーされる役柄の幅が広いんです。

 でも、宮沢りえさんのように、若いころはアイドル的な存在で、40代になってもずっとお芝居をされていて、今も培われたものを発揮できている方もいるじゃないですか。そういう風に、40代の女優さんのあり方が、もっとバリエーションに富んでていいと思うんです

年齢を重ねていった先に

しげる「歳を積み重ねてきたぶん、実力もあるわけですしね」

鈴木「そうなんです。山口智子さんにしても鈴木保奈美さんにしても、皆さん、あんなにお芝居が上手なんですから。制作側も、もっとビックリするような役柄をオファーすればいいのにって僕なんかは思ってしまいます

しげる「素敵。おさむさんって本当に楽しい方ですね! しげるも、確かにそれは思うな」

鈴木「今回、『M』で水野美紀さんを見ていて改めて思ったんですけど、水野美紀さんみたいな方がどんどん出てきて、どんどん面白い役柄をやっていけばいいなと。そうしたら、“日本の女優も、年齢を重ねていった先に、いろんな選択肢があるじゃん”みたいな感じになっていく。経験を重ねたぶん、若い方にはない力があるわけですし、日本にももっとミドル世代の女優さんが活躍できる幅が広がればいいなと思っていますね。もったいないですよ!

アフターコロナのYouYube

しげる「話はちょっと変わるんですけど、『M』は、90年代の音楽がすごくたくさん流れているのも楽しいですよね。90年代の芸能界や音楽業界の事情も誇張して描かれていたり。お金に対するちょっとエグい描写も(笑)」

鈴木「今になって思うと、90年代の芸能界ってすごいよなっていう世界なんです。音楽業界も、バブルの後で不景気だったって言われますけど、改めてデータで見ると“躁”状態ですよ。だって、CDが何百枚も売れて、ミュージシャンも音楽関係の人も、何十億、何百億って稼ぐわけじゃないですか」

しげる「実は以前、暇だったときに松田聖子さんのシングルってどのくらい売れたのかな? とか山口百恵さんのこの歌はどうだったのかな? なんて70〜80年代の音楽についてネットで調べた事があったんですが、具体的な数字は覚えてないけど、意外とミリオンにはいってないんだという印象があります」

鈴木「いってないんですよね。30万とか50万とか、そんなもんで」

しげる「だから改めて、90年代のダブルミリオン連発の異質な感じにビックリした記憶があります」

鈴木「90年代だと、100万枚売っても、ベスト10に入らない時代がありましたから(笑)。大飽和状態で、今思うととんでもない時代だなって 今はYouTuberが儲けてますけど、世の中のいろんなお金が芸能界とか音楽シーンに集まってたっていうことですよね。だからミュージシャンが今CD売れないからってライブとかバンバンやったりしてますけど、売れないというよりは、90年代以前に戻ったというのが僕の認識です

 

しげる「当時は、歌を宣伝して、すればするだけCDが売れるし、みたいな時代でしたから」

鈴木「実は90年代以前は、歌をCMで流すっていう文化があんまりなかったんです。『M』の脚本を担当していろいろ本を読んで知ったのですが、それをやったのが、松浦(勝人)さんのエイベックスなんじゃないかと。今となっては当たり前ですが、自社でCM枠を買い取ってプロモーションしたい音楽を流す。でも音楽番組には出ない。

 90年代以前だと音楽番組とかで歌を宣伝してましたもんね。でも音楽番組じゃなくCMで楽曲をヒットさせるというやり方は、エイベックスさん、あとビーイングさんもそうだったかな。だから当時、CDのCMってすごく多かった

しげる「代理店さんにとっても音楽業界が大きなクライアントだった時代だったんですね。今は昔かもしれませんけれども」

YouTubeがしっかりと予算を組んで

しげる「で、さっきちょっとお話に出ていたYouTuberについてなんですけど、このコロナ禍とかで、モデルさんやタレントさん、つまり芸能人が一気にYouTubeに流れていったじゃないですか。テレビの収録が止まっちゃったりそういう背景があったからだと思うんですけど。で、アフターコロナっていうのかな? コロナ禍が境ってわけじゃないお話になるのかもしれないですけど、今後、YouTubeって立ち位置は、どのようになっていくと思われますか?」

鈴木「僕はYouTubeは今、黎明期だと勝手に思っているんですけど、実は、芸能人が参加してくるだろうなということは予想がついていたんです。それで今後についてなのですが、おそらく、しっかり予算を組んで、YouTubeで番組を作る人が出てくるんじゃないかと

しげる「それぞれの個人のプラットフォームでってことですか?」

鈴木「かもしれないですし、どこかの企業がお金を集めて番組的なものを作るとか。例えば、過去に海外であったんですけど、自動車メーカーがお金を集めてYouTubeでフェスを開催していたんです。“YouTubeのこのチャンネルでしか見られないフェス”というものですね」

芸能人YouTuberの今後

しげる「なるほど。テレビではなく、YouTubeで音楽番組が作られる可能性があるということなのかな」

鈴木「そうですね。実は今、もう『THE FIRST TAKE』っていう音楽チャンネルがあるんですよ。白壁の前にアーティストがいて一発撮りをする。いろんなアーティストさんが出演していて、音楽マニアの間では有名だったんです。そこにアニメ『鬼滅の刃』の主題歌『紅蓮華』を歌っているLiSAさんが出演したんですけど、ここで結構ドンッって再生数が跳ねたんです」

しげる「LiSAさん効果で広まったんですね」

鈴木「そのようです。今はTik TokとかYouTubeとか、そこからSpotifyなどの急上昇チャートに上がるという現象が多々起こっているのですが、YouTubeのなかでは、その『THE FIRST TAKE』の影響が結構大きくなっているんです。そうなってくると、いろんなミュージシャンが『THE FIRST TAKE』に出演したいと思うはずなんですよ。これを見て僕は、『COUNT DOWN TV』とか『ミュージックステーション』みたいに影響力を持つYouTubeの音楽チャンネルがいよいよ出てきたなと感じました。黎明期と先ほど言ったのはそういう理由です」

しげる「なるほど! でもきっとそれは、音楽番組に限らずですよね」

鈴木「どうマネタイズするかは別として、ドラマやバラエティで出てきてもおかしくないというのが僕の意見です。今、“お笑い第7世代”が人気を集めているじゃないですか。彼らはもう自分たちでYouTubeもインスタもやっているんです。そしてテレビもネットでのプロモーションも大事に考えてやっている。でも僕からすれば、“お笑い第7世代”はテレビよりも、ネットでの方が跳ねるんじゃないかとも思うんです。

 例えば、皆で音頭を取ってお金を集めて、昔で言う『夢で逢えたら』……若い頃のダウンタウンさんやウッチャンナンチャンさんなど、当時の気鋭の新人を集めて作った伝説の深夜バラエティーですが、そういう番組をYouTubeでやったほうが、彼らは当たりそうな気がする

 

しげる「今の芸能人のYouTubeと言えば、ドキュメンタリー的に見せるものが多いけど、そうじゃなくて、しっかり作り込んだYouTubeチャンネルが生まれるかもしれないってことですね」

鈴木「そう思います。今、たくさんの芸能人がYouTubeに参入していますけど、従来のやり方やYouTuberのマネをしているだけでは、すぐに淘汰されていくんじゃないかって思いますね。テレビ的なクオリティーがないと

(編集部)――なぜ、見せるプロである芸能人の個人のYouTubeチャンネルが、すぐに淘汰されてしまうと思われるのでしょう?

鈴木「それはもう本気度の違いです。だってYouTuberって日夜、YouTubeのことだけ考えて生活しているんですから。だからYouTuberのチャンネルが面白いのは当たり前なんですよ。一方で芸能人は、芸能人の活動をしながらYouTubeをやることになる。そんな中でも江頭2:50さんはすごいですね。

 エガちゃんはYouTubeに命をかけているのが見て取れる。“そりゃ当たるよな”って感じです。あとカジサック。彼もYouTubeにすべてを注ぎ込んでチャンネルをやっている。だから“当たる”。そもそも歌手でも、片手間で歌手をやっている人がいたら怒ると思うんですよ。YouTuberは職業の一つなので、そこで本気でやらなければ、勝てないですよね」

しげる「ちょっと暇だからやってみよう、みたいなことでは……」

鈴木「絶対に無理だと思いますね。例えば堀江貴文さんもYouTubeチャンネルをやっていますが、今は政治の解説で当たっています。でも堀江さんは、当たるまでにさまざまなことを2000回ほど投稿しているんですよ。普通は2年も続けていて当たらなければ、そこでくじけてしまいますよね。でも彼はやり続けた。このやり続けるということが大切で、それぐらいの根性がなければ、YouTubeで勝負するのは難しいと僕は個人的に思っています