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 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、マスクの着用や換気をしながらのエアコン使用が求められ、例年より熱中症への注意が必要とされている。対策としては、日傘や帽子で暑さを避けることや、こまめな水分補給などが基本だが、そのうえで、

「昔から熱中症の予防によいとされてきた“梅干し緑茶”もぜひ取り入れてほしいです」

 そう話すのは、梅干しの健康効果を医学的に検証している“梅干し博士”こと医学博士の宇都宮洋才先生。

梅リグナンが不調から身体を守る

「梅には、植物ポリフェノールの一種である“リグナン類”が多種含まれています。例えば、ピロリ菌の運動機能を抑制するシリンガレシノールや強い抗酸化活性力を持つピノレシノール、インフルエンザウイルスの増殖を抑制するエポキシリオニレシノールなど。

 これを総称して“梅リグナン”と呼んでおり、梅を食べることで、制菌・免疫・抗アレルギー作用、骨粗しょう症、糖尿病対策などへの健康効果があることがわかっています。熱中症対策にも効果的で、梅リグナンの抗酸化作用は、暑さによって引き起こされる酸化ストレスに対し、身体の防御システムを活性化してくれます」(宇都宮先生)

 梅干しに含まれるクエン酸は疲労を抑制し、夏バテ予防にも。梅干しは夏に欠かせない“天然のサプリメント”だという。

「梅干しだけ食べてもよいですが、熱中症・夏バテ予防効果を高めるためには、梅干しを水分と組み合わせてとることがおすすめ。水分は単独で摂取するより、塩分と合わせることで吸収力が高まるので、より効果的です。しかも、“水+塩”より“水+梅干し”のほうが熱中症の予防と身体の回復に効果がある。これは、マウスを使った実験で検証されています」(宇都宮先生)

 さらによいのが“緑茶+梅干し”だ。

「緑茶も梅干しと同じように、抗酸化作用など多くの機能性成分を含有。“梅干し緑茶”を飲むことで、両方の健康メリットを受けられると思います。平安時代には、疫病が蔓延(まんえん)したとき“梅干し緑茶”で対策をしたという言い伝えも残っており、古来より梅干しと緑茶の組み合わせは日本人の健康を守るものであったと考えます。梅の産地である和歌山県の梅農家でも、真夏の農作業時には、やかんに入れたお茶と梅干しが必須。熱中症対策として緑茶と一緒に梅干しを食べることが生活の知恵として受け継がれています」(宇都宮先生)

 平安時代の疫病も退散したという梅干し緑茶。新型コロナウイルス対策としても期待できる。

「近年、緑茶特有の成分である“エピガロカテキンガレート”(EGCG)には、強力な抗ウイルス作用があることがわかってきました。特に、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスのような、周囲にエンベロープという脂肪膜を持つウイルスに効果的。ウイルスの膜を破壊したり、人の細胞内でウイルスが複製・増殖されるのを阻止するなど、ウイルス感染症の予防効果が期待できるのです

 そう話すのは、食品の機能性研究を行う医学博士の平柳要先生。EGCGには強い抗酸化作用があるため、がんや動脈硬化などの生活習慣病を予防する効果も期待できるという。

「体脂肪の蓄積を抑えたり、体脂肪の分解を促進して内臓脂肪型肥満を防ぐなどメタボの予防や神経細胞を保護してアルツハイマー型認知症を防ぐ効果があることもわかってきました」(平柳先生)

必ず80度程度のお湯で淹れること

 両先生が夏の健康ドリンクとして推す“梅干し緑茶”。基本の作り方(写真ページの表参照)とポイントを聞いた。

 まず、使う梅干しはどんなものがよいのか?

「中粒程度の大きさで、塩味が多すぎず、少なすぎず、“いい塩梅”のものを。できれば食品添加物が入っていないものがよいですね」(平柳先生)

「緑茶と合わせて、美味しいと思うものを見つけるのがいいでしょう。動物は本能で“まずいもの”は身体に毒と判断して食べるのを避ける。同じように、自分の身体が自然に求める味(塩加減など)が自分に合ったものだと思ってよいと思います。梅リグナンの含有量マークが表示された梅干し(紀州梅効能研究会が認定する梅リグナン測定加工品)もあるので、参考にしてください」(宇都宮先生)

 作る際に必ず気をつけたいのは、緑茶を冷水で淹(い)れないこと。

冷たい水では、EGCGがあまり溶け出しません。必ず80度程度のお湯で淹れてください。その後、冷蔵庫で冷やすのはOKです。緑茶粉末であれば、冷たい水で溶かしてもよいですが、その際は無農薬か有機栽培のものを」(平柳先生)

『梅干し緑茶』作り方とポイント

 では、飲むのに効果的な時間は?

「いつ飲んでもOKなので、冷たい梅干し緑茶を携帯し、汗をかいたときなどに飲んで、熱中症や夏バテ予防に役立ててください。EGCGには糖質の吸収を抑える作用があるので、食前に飲めば血糖値の急激な上昇を防ぎ、脳卒中などのリスクを下げます。クエン酸は、骨を丈夫にするカルシウムやマグネシウムの吸収を助ける、女性には特に必要な成分。1日1杯でよいので、習慣化することが大切です」(平柳先生)

(取材・文/河端直子)


【プロフィール】
宇都宮洋才(うつのみや・ひろとし)先生 ◎医学博士。大阪河﨑リハビリテーション大学客員教授、和歌山県立医科大学准教授。梅干しの効能を研究し、テレビや講演などで活躍。監修書に『やせる! 元気になる! 焼き梅干しパワー』(宝島社)など。

平柳要(ひらやなぎ・かなめ)先生 ◎医学博士。食品医学研究所所長。ショウガやハチミツ、焼きねぎなど、健康効果の高い食材の機能性研究などを行う。著書『医学博士が考案した長生きふりかけ』(サンマーク出版)には健康メニューが満載。