左から、渡部建、木下優樹菜、東出昌大。たちの悪い不倫をする人には共通点がありました

 7月9日、複数メディアが木下優樹菜さんの不倫疑惑を報じました。木下さんと言えば、姉が働いていたタピオカドリンク店の経営者に対する恫喝騒動をきっかけに芸能活動を自粛していましたが、今月1日に活動再開しながらも、6日に芸能界引退を発表したばかり。しかも不倫相手に3人の男性が浮上しているほか、「裏は取れている」と語るメディアもいるなど厳しい論調が目立ちます。

 真相はわからないものの、あわてて引退発表して口をつぐんでしまっただけに、世間の見方を覆すことは難しく、「東出昌大、渡部建に続く、2020年3人目のゲス不倫」という声も少なくありません。案の定と言うべきか、まだ記憶に新しい2人と木下さんには、いくつかの共通点が見られるのです。

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

 それらの共通点は売れっ子の芸能人だけでなく、一般人にも当てはまることも含まれていました。世間を騒がせた東出さん、渡部さん、木下さんにはどんな共通点があり、なぜそれが不倫につながってしまったのでしょうか。

過剰な「よき夫」「いいママ」アピール

 まず誰の目にもはっきりわかる共通点は、結婚によってイメージアップし、仕事が増えるなどステイタスが上がったこと。東出さんはメインキャストとしてのオファーが増え、渡部さんは情報番組のMCや芸能界のグルメ王として定着し、木下さんはママタレントのトップクラスに登り詰めました。

 しかし、「好事魔多し」なのか、「油断大敵」なのか。仕事の調子がよく、ステイタスが上がったことが、「自分は成功しているから不倫くらい大丈夫」という根拠のない自信につながってしまいました。不倫が発覚したら家族だけでなく、現在の仕事やステイタスも失ってしまうリスクが高いにもかかわらず、利己的な欲求に勝てなかったのは、「こんなにうまくいっているのだから自分だけはバレないだろう」という気持ちがあったからとしか思えないのです。

 それに伴う共通点として特筆すべきは、3人が「よき夫」「いいママ」というアピールをしていたこと。実際ネット上には、たびたび家族の話を口にしていた3人に対して、「そこまでアピールすると、かえってあやしく見えてしまう」という声も上がっていました。

 これは芸能人だけでなく一般人も同じで、たとえば、あなたの周りに「よき夫」「いいママ」を自ら口にしたり、SNSでほのめかしたりする人はいないでしょうか。本当に家族のために行動している人は、周囲の目を気にしないものですし、ましてや、わざわざアピールする必要はありません。「よき夫」「いいママ」というアピールは、家族を喜ばせることより、「自分が周囲からどう思われるか」を先に考えてしまう性格の表れなのです。

 私の相談者さんでも、自分が「よき夫」「いいママ」と思われていることを意識している人ほど、かえって対極にある不倫の背徳感も意識しやすく、ハマりやすい傾向がありました。しかも3人のように、相手に恋をしてしまったり、何度も繰り返し会ったり、複数人だったりなど、たちの悪い不倫が多かったのです。木下さんとサッカー選手がインスタグラムへの縦読み投稿で「あいしてる」「だいすき」と書き込んでしまうというミスを犯したのも、「バレるとヤバイ」という背徳感を楽しんでいた感があったとしか思えません。

 あなたは周囲の人々に「よき夫」「いいママ」であることをアピールしていないでしょうか。もしそれを続けていると、自覚の有無にかかわらず、潜在的な不倫願望が高まっているリスクがあるのです。

隠し切れない不安やコンプレックス

 もう1つ、3人の共通点として挙げておきたいのは、本業に対する漠然とした不安やコンプレックス。東出さんは演技、渡部さんはお笑い、木下さんはママタレントとしての仕事に恵まれる一方で、周囲と比べたとき、自分が思っているほどの評価を得られず、ときどき批判的な声を耳にすることがあったのではないでしょうか。

 3人は不倫騒動の前から、バラエティ番組の出演時や雑誌のインタビューなどで、求められている以上のことをしゃべり続けて空回りするシーンが何度かありました。芸能人に限らず、「本業に対してどこかコンプレックスがある」「ライバルに勝てているのか、自信が持ちきれない」という人ほど、それを埋めるためによくしゃべる傾向があるものです。

 しかし、しゃべればしゃべるほど聞いている人にプライドの高さを感じさせたり、余計なことまで話して中身が薄くなったりしてアンチは増える一方。その点3人は前述したような「よき夫」「いいママ」アピールがかえって本業への漠然とした不安やコンプレックスを感じさせていました。

 そんな不安やコンプレックスを埋めたい人ほど目をつけるのは異性関係。異性から求められることで自信を得て、それによって不安やコンプレックスを軽減させ、全能感を得ようとするのです。あなたの周りには、一度にしゃべる言葉数が多い人、まくしたてるようにしゃべる人、しゃべったあとに「うんうん」「そうなんだよ」と自ら肯定する人はいないでしょうか。これらはすべて「不安やコンプレックスがあり、それを自分の存在を誇示することで打ち消したい」という気持ちの表れなのです。

実績ではなくスキルを評価されているか

 3人の不倫が発覚したとき批判の声が激しかったのは、「夫妻と同業の若手女性と長年にわたる不倫」「多目的トイレを不正使用」「複数の異性と関係」というたちの悪さによるところは間違いないでしょう。

 ただ、その批判をさらにエスカレートさせたのは、世間の人々から本人の予想以上に本業を評価されていなかったこと。アンチを中心に「もともとたいしたことなかった」「いなくなっても問題ない」などの厳しい声が飛び交い、逆に「惜しい」「待っている」という声があまり出ていないことがそれを物語っています。

 これはビジネスパーソンも同様であり、たとえば、あなたが不倫や他の不祥事を起こしてしまったとき、上司や同僚から「あいつはいなくなっても問題ない」と言われるのか、それとも、「干してしまうのは惜しい」と言われるのか。その分かれ目は、ある程度の人間性さえあれば、「信じてもらえるスキルがあるかどうか」なのです。

 不倫のような不祥事を起こす人は、それが発覚したとき、「自分には実績がある」という自負を拠りどころにしがちですが、これは大間違い。不祥事を起こしたとき、「これまでの実績は会社(芸能事務所)や同僚(共演者)などがあって得られたもの」とみなされやすく、自分だけの評価には直結しづらいところがあります。また、「その実績は過去のものにすぎず、今後は実績をあげられないだろう」と思われないことも重要です。

 やはり不祥事を起こした際のセルフフォローとなるのはスキル。「こんなに実績を作ってきたじゃないか」「会社に貢献してきたのに厳しすぎる」と口にしたところで、それはスキルを認めてもらえなかったことを喧伝しているだけなのです。

 最後に1つ、3人の共通点を挙げておきましょう。それは不倫疑惑に関する初動対応のまずさ。謝罪会見を開かずに身を隠し続けて批判をエスカレートさせ、結果的に配偶者や関係者に謝罪させてしまいました。

 不祥事による危機が訪れたときに重要なのは、少しでも早く頭を切り替えて、それを謙虚に受け入れること。そんなクライシス・コミュニケーション(危機管理広報)の基本さえできていれば、おのずと初動対応は早くなり、ダメージを最小限にとどめられるものです。その点で3人は日ごろからリスクに対する意識が甘かったため、厳しい現実を受け入れられず対応できなかったのではないでしょうか。

 少し3人のケースとは異なりますが、私の相談者さんに取引先の女性社員との不倫が明らかになって証拠もあるのにもかかわらず、それをはっきり認めずなかなか謝罪しない男性がいました。男性はけっきょく部署異動させられたあげく、妻にもバレて両親を巻き込んだ離婚騒動に発展。さらに上司が取引先へ出向いて謝罪し、妻もその上司に謝罪を余儀なくされるなどの迷惑をかけてしまったのです。すぐに認めて取引先と上司に謝罪しておけば、部署異動や妻への発覚は避けられたかもしれないだけに、痛恨の対応ミスでした。

彼らの今後は?

 話を3人に戻すと、彼らの未来に光がないわけではありません。実際、東出さんは出演映画「コンフィデンスマンJP プリンセス編」の公開が7月23日に迫り、PR絡みで情報番組やバラエティに出演しはじめていますし、渡部さんへのバッシングも小康状態。木下さんも芸能界から身を引いたことで、時間の経過とともに批判の声は減っていくでしょう。

 とはいえ芸能活動をしていくのなら、完全に批判を封じ込めることは不可能。できるだけそれをやわらげられる本業のスキルを手に入れ、見せ続けていくことで少しずつ信頼を獲得していきたいところです。それがうまくいったとき、ここで挙げた共通点はなくなっているでしょう。


木村 隆志(きむら たかし)コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者
テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。