「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。ライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
木下優樹菜、指原莉乃

第43回 木下優樹菜

 7月6日、木下優樹菜サンがいきなり引退を発表しました。昨年のタピオカ騒動(実姉がアルバイトをするタピオカ店の店主に恫喝メッセージを送った)がもとで休業していた優樹菜サンですが、7月1日に活動再開を発表しています。

 たった数日後の電撃的な引退発表に「いったい何があったんだ」と世間はザワザワしていますが、2020年7月23日号『女性セブン』は《木下優樹菜、引退の裏に妻子ある2人の男性との同時不倫か》と報じています。同誌によると、男性との関係を知った事務所が、もう面倒を見切れないと優樹菜サンに愛想をつかしたと書かれています。

 優樹菜サンと言えば、仲良し夫婦、ママタレとして高い人気を誇ってきました。たとえば、明治安田生命が毎年調査している「理想の有名人夫婦ランキング」。2018年の調査では、優樹菜サンとフジモンこと藤本敏史夫妻は総合ランキングにこそ入らないものの、20代から多くの支持を集めていたと発表されていました。

 そんな「理想の夫婦」は昨年末に離婚を発表しています。しかし、今は離婚をしたからといって、タレントとしての価値が落ちるという時代でもないでしょう。けれど、ママタレとして支持されてきた優樹菜サンが不倫、しかも相手が複数の男性とはさすがにヤバい、ヤバすぎる。事務所が匙(さじ)を投げてもしょうがないと思うのです。

目に余っていたフジモンへのブサイクいじり

 優樹菜サンが本当に不倫をしたかどうかはわかりませんが、私は謎がとけたような気持ちになったのでした。今から約1年前、本連載28回で優樹菜サンを取り上げたのですが、そのころの彼女について、どうも気になっていたのがフジモンへの執拗な「ブサイクいじり」だったからです。

 たとえば、2019年6月12日放送の『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)に出演した優樹菜サンはフジモンからの着信時に俳優・斎藤工の写真が出るように設定していることを明かし、その理由を「毎日ブサイクと一緒にいるから。電話かかってきたときぐらいは、一瞬でも、自分の旦那さんは斎藤工だって現実逃避したかったから」と説明しています。どんな男性が好みかを聞かれた彼女は「もう、フジモンじゃなければ大丈夫」とも答えていました。

 優樹菜サンはイケメン好きで、自身のエッセイ『ユキナ婚。』(講談社)によると、フジモンにアプローチされても恋人候補として見ることはできなかったそう。けれど、フジモンの一途さに心を動かされて、交際・結婚を決めます。仲がいいからこそ、テレビで夫を落としているという見方もできるでしょうが、自分の夫でお子さんたちの父親をここまで貶(おとし)める必要があるのか私には疑問でした。不倫疑惑が勃発した今になって考えてみると、もうあのころ、すでに優樹菜サンの気持ちはフジモンから離れていたのかもしれません。

コメントで発覚した指原莉乃のヤバポイント

 人気芸能人の突然の引退劇を、各局のワイドショーはこぞって取り上げます。7月12日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、タレント・指原莉乃は「芸能界ってめっちゃおそろしい。運とか勢いだけで売れることができるじゃないですか」「芸能人がバーッて売れて、持ち上げられて、売れた後にフツウの人と交わったら、こんなことになってしまうのか」と自分が見えなくなる恐ろしさについて真面目にコメントした上で、「そもそも、憧れカップルと言われていましたけれど、誰か本当に憧れていたのかな」「メディアがワッショイワッショイ持ち上げすぎ」と締めくくっていました。

 バラエティーの女王らしく、笑いでオチをつけたと見る人もいるでしょう。しかし、私はここにニュー・ヤバ女の誕生を感じたのです。

 ヤバポイントは2つあります。

 まず1つめ。芸能界のご意見番、和田アキ子は『アッコにおまかせ!』(TBS系)で優樹菜サン引退の特集に「引退されたら、芸能人じゃないのにやっていいんですか?」とコメントしています。日ごろは辛口コメントで知られる和田アキ子でも「一般人だから」攻撃しないという仁義を守っていることがわかります。しかし見方を変えると、「一般人だから」というのは芸能人サイドから攻撃する際の口実にも使えるのではないでしょうか。

 優樹菜サンは決してほめられることはしていませんから叩きやすい上に、「一般人だから」芸能人に何を言われても言い返すことはできません。指原を含め、コメンテーターは報復されないことがわかっていますから、キツめに茶化しやすい面はあるでしょう。でも、だからこそ、芸能人は攻撃しすぎないように注意しないと自身の好感度が下がるでしょう。「一般人だから」好き放題言うのなら、単なる弱い者イジメと変わらないと思うのです。

「誰が本当に憧れていたのかな」「メディアが持ち上げすぎ」発言もなかなかヤバい。なぜなら、これらの発言は「ランキングが正しくない、数字が恣意的に操作されている」と悪意的に解釈されて、アンケートをとった側やランキングそのものを貶める可能性があるからです。

 指原と言えば、AKB48の選抜総選挙で前人未到の3連覇(1位は通算4回)を達成しました。これは今日の指原を築いた重要なキャリアと言えると思います。その指原が「発表されているランキングが正しくない」かのように解釈できる発言をすることは、指原自身の成果も否定することと変わらないことに気づいているのでしょうか。世の中に発表されているランキングの信ぴょう性を証拠もなしに疑うような発言をすることは、「AKBの選抜総選挙は正しくない、指原に憧れている人はいない、メディアが持ち上げているだけ」という意見も認めなくてはならなくなるでしょう。

自分でブーメランを投げていないかご注意を

 指原が出演する『今夜くらべてみました』に、優樹菜サンはゲストとしてよく出演していましたが、こんな話をしていたことがあります。優樹菜サンは「八方美人な女」が嫌いで、学生時代、「話に出てくる友達全員呼び出して、みんなの前で暴いていくっていうか。こいつのときにこう言っていたとか。そしたら、全部ウソがバレて、そいつが学校に来られなくなるっていう」とイジメを武勇伝化して語ったことで炎上しました。

 これは非常に寓話的なエピソードです。友人のウソをバラして学校に来られないようにしてしまった優樹菜サンが芸能人になり、世間に内緒にしておきたい恫喝メッセージをバラされて、芸能活動ができなくなってしまったのですから。これは因果応報もしくは投げたブーメランが、ながーい時を経て返ってきたと見ることができるのではないでしょうか。

『今夜くらべてみました』で、占いが大好きであることを明かしていた指原。芸能人にとって運気は大事なことなのかもしれませんが、日本には「好事魔多し」ということわざもあります。いい時ほど無意識にブーメランを投げていないか注意するというのは、芸能人に必須の危機管理意識なのかもしれません。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」