口まわりの筋肉を動かして美しい表情に! “ぴよレロ”くちトレ

 新型コロナウイルスの猛威を目の当たりにして、改めて健康への意識が高まったという人は少なくないはず。でも、健康第一とはいっても家計を圧迫するほどのお金はかけたくないのが正直なところ。それに仕事に家事にと毎日忙しくしていると、健康維持のために外へ出る時間を作るのもひと苦労。すき間時間を使い自宅で手軽にできるセルフケアで健康や美容の促進ができれば、うれしい限り。

 そこで今回は、週刊女性6月30日号で掲載して大好評だった人気企画「名医たちの0円健康法」の第2弾を決行! 誰でも・手軽に・お金をかけずに取り入れることができるうえに、その健康&美容効果は、日本を代表する名医たちのお墨つき。年齢にもウイルスにも負けず、健康でハッピーな生活を送るためのヒントがいっぱいです!

《健康法その1. 口もとストレッチ》

低栄養による心身衰弱を防ぐ!

 60〜70代になると十分な栄養がとれず、低栄養による衰弱状態になる高齢者が少なくないと、医学博士の太田博明先生は警鐘を鳴らす。その原因として近年、注目を集めているのが「口腔フレイル」だ。フレイルとは加齢により生じる虚弱状態全般を示す言葉。フレイルを放っておくと要介護状態になるおそれも。

口腔フレイルにおちいると食事内容に偏りが生まれるため、低栄養状態に体力低下と筋肉量の減少へとつながり、身体活動は低下社会的・精神的フレイルの起点となる場合が多い。特に高齢者は注意が必要です」(太田先生、以下同)

 では、口腔フレイルとはどんな状態なのか?

口腔フレイル

口腔の筋肉の衰えが口腔フレイルを招く最大の要因口腔の筋力が落ちると食べものをかむ力と飲み込む力が弱くなりますさらに唾液の分泌量も減少するため、虫歯や歯周病の危険性も上がります。身体と同様、口まわりの筋肉も動かす機会が減れば衰えていくもの。機能の維持と向上には口まわりの筋肉を動かすトレーニングが有効です」

【1】固いものを食べにくく感じる
【2】飲み物でむせることがある
【3】口の中の渇きが気になる

 上の【1】〜【3】のうち2つ以上、思い当たる人は口腔機能が低下している可能性あり。まだ大丈夫とタカをくくらず、「口の機能向上トレーニング」を始めよう!

おうちでできる、口の機能向上トレーニング

 はじめに、姿勢を正してイスに腰かけ、安定した姿勢をとる

 おなかを膨らませながら息を大きく吸い込み、口をすぼめてゆっくりと息を吐く腹式深呼吸を3回繰り返し、リラックスした状態に

《食べにくい(口からこぼれる)》

●唇:口まわりの筋肉を鍛えることで食べこぼしの改善に

「イー」と発声しながら口角を横に引く。次に「ウー」と発声しながら唇をとがらせる。 ※3回繰り返す

●頬:口まわりと頬の筋肉を鍛えられる

 頬をふくらませたり、すぼめたりする。 ※3回繰り返す

《むせやすい》

●首:首の筋肉をほぐして呼吸のコントロールと嚥下力の低下を予防

 顔を左右にゆっくり傾ける。次に首を左右にゆっくり回す。 ※3回繰り返す

●肩:肩のストレッチ&リラクゼーション効果で嚥下力の低下を防ぐ

肩のトレーニング イラスト/アライヨウコ

【1】肩をゆっくり上げたら、一気に力を抜いてストンと下げる。
【2】肩を前から後ろへ3回、後ろから前へ3回まわす。 
※【1】【2】を3回繰り返す

●咳払い:吸い込む力と吐き出す力を鍛えられ、誤嚥の予防につながる

咳払いのトレーニング イラスト/アライヨウコ

 おなかを膨らませながら息を大きく吸って、少し止める。「エヘン」と咳をして息を大きく吐き出す。 ※3回繰り返す

《食べにくい・むせやすい・口が渇く》

●舌:食べものをのどに送り込みやすくなり、唾液の分泌も増加する

舌のトレーニング イラスト/アライヨウコ

【1】舌を前に出す。
【2】舌を前に出した状態のまま左右に動かす。
【3】舌で唇をゆっくりなめる。
※【1】〜【3】を各3回

●発声:食べたり飲み込んだりするときに使う筋肉を鍛えられる

 ゆっくり大きな声で「パ」「タ」「カ」「ラ」と各3回ずつ発声する。

●口開け:飲み込みに大切な筋肉を鍛える

 口を閉じた状態から、最大限に口をあける。10秒キープしたら口を閉じ10秒休憩。 ※5回繰り返し×2セット

《健康法その2. “ぴよレロ”くちトレ》

口まわりの筋肉を動かして美しい表情に

 年齢があらわれやすい口もとのたるみ。口まわりの筋肉を意識的に動かす簡単トレーニングで、美しい表情と心身の健康をキープ!

 最近はほぼ1日中、マスクをつけて過ごしているという人も多いはず。でも、マスクの下は無表情になりがちで、表情筋を使う機会が減少してしまうもの特に口もとの緩みは美容と健康に悪影響が!

「実は口のまわりには、顔の筋肉の7割が集結しています。そのため、マスクをして口もとまわりの筋肉を使う機会が減ることで、顔全体の筋力低下にもつながってしまうのです」(歯科医師の石井さとこ先生、以下同)

 このような表情筋の衰えは、顔の老け見えの大きな要因にそれだけでなく、口角が下がってこわばった表情になることで、暗い印象を相手に与えてしまったり、口腔機能低下のおそれも。予防策としては、毎日意識して口の筋肉を動かす習慣をつけることが、何よりいちばん効果的、と石井先生。

「口の筋肉を動かすと顔まわりの新陳代謝を促す効果が。若々しい口もとと同時に引き締まったフェイスラインが手に入りますよ」

今すぐやってほしい! 石井流「くちトレ」

●フェイスラインに効く! ぴよぴよぷーエクササイズ

 口まわりやフェイスラインの筋肉を鍛える動き。唾液量アップや唇の老化予防にも効果あり。

ぴよぴよぷーエクササイズ

【1】唇をすぼませて「ぴよぴよ」

 頬を思い切り吸い込み、くちばしをまねて唇をすぼませる。そのまま、小鳥のように唇を上下に上げ下げ。10回やる

【2】「ぷー」と勢いよく膨らませる

 大きく深呼吸して、唇をすぼませたまま両頬を勢いよく「ぷー」と膨らませる。1回やる

●ストレス対策にも! 真上耳ひっぱり

 顎関節まわりの筋肉と筋膜をほぐし、ストレスの軽減や歯のくいしばり予防、むくみの解消に。

【1】両耳の上部を指で持つ

 耳の上の少しとがった部分を、親指と人さし指でつまむように持つ

【2】斜め上にひっぱり上げる

 指で持ったまま、頭蓋骨から離れるように斜め上へ向かってひっぱる。寝る前にするのがオススメ

●舌の老化を防ぐ! レロレロエクササイズ

 舌の筋力が低下すると誤嚥の原因になるだけでなく口まわりの筋肉が緩んで顔の歪みの原因にも!

レロレロエクササイズ

【1】舌を思いっきり出して「レ」

 英語のRを発音する感覚で「レー」と発声しながら舌を思い切り出す

【2】口の中で舌を丸め「ロ」

 舌を巻くように引っ込め、「ロー」と発音。このとき、舌先が上あごに触れるように意識する。1→2を10回やる

●下あごのたるみに! 下唇ふーエクササイズ

 あごにあるオトガイ筋と首にある胸鎖乳突筋のトレーニング。二重あごや、首のシワ対策になる。

【1】首筋を伸ばして顔を上に向ける

 胸を張って背筋を伸ばし、顔をゆっくりと上へ向け首の前面を伸ばす

【2】下唇を上に突き上げ「ふー」

 深呼吸をし、下唇を上に向かって引き上げ、5秒かけてゆっくり息を吐いて首まわりの筋肉に刺激を与える。5秒×3回やる

《健康法その3. ちびちび水飲み》

悪い“体内水”を流して健康に!

 人の身体は約6割が水で占められていて、この水を体内水という。体内水は3分の2が細胞の中に、残りの3分の1が血管内、脳脊髄腔(のうせきずいくう)、リンパ管内、そして細胞と細胞の間の空間である間質液として存在。

 体内水は普段の生活では意識されにくいけれど、栄養の運搬や老廃物の排出など、健康維持のための重要な役割を担っていると、医学博士の森下克也先生

これらの体内水は、ただ身体の1か所にとどまっているわけではなく、絶えず体内を循環していますこの流れが滞ると、老廃物をため込んだ体内水が長期間、身体の中に残って、悪い体内水となり、だるい、疲れる、頭が働かないなど、身体のつらい症状につながってしまうのです」(森下先生。以下同)

 体内水のよしあしを決めるのは、【1】量【2】流れ【3】にごりの3つの要素が関係する。

 近年、お茶やコーヒーの常飲によるカフェインの利尿作用から、慢性脱水症の人が増えており、これが、この3つの要素と深く関係すると森下先生は指摘する

慢性脱水症はのどが渇かないため、自分では気がつきにくい。下のチェック表を参考に、慢性脱水症の疑いがある人は、体内水の流れが滞っている可能性が。体内水をうるおす対策が必要です」

慢性脱水症チェック

 下のうち6項目以上、当てはまる人は「慢性脱水症」の兆候あり!

□ 疲れやすい
□ 口の中がネバつく
□ 目が乾く
□ 口臭がひどくなった
□ 味を感じにくくなった
□ まぶたや手足の筋肉がピクピクする
□ 微熱が続く
□ オシッコの回数が減った
□ 頭痛が続く
□ 甘いものを好むようになった
□ 肌があれる
□ シミができやすい

 慢性脱水症を防ぎ、にごりがなくスムーズに流れるよい体内水をキープするための簡単な方法として、森下先生が教えてくれたのが、水の“ちびちび飲み”だ

ちびちび飲みは、1度に大量の水を飲むのではなく、のどの渇きにかかわらず、ひと口程度の水を頻繁に飲む方法。無理なく水が摂取できて、常に一定量以上の水を体内に維持できます」

 ポイントは、お茶やコーヒーなどではなく常温の真水を飲むこと。できればミネラルがより豊富な硬水のミネラルウォーターがおすすめ。1日1・2リットル程度の摂取を目安に、毎日続けよう

1日に出入りする水の目安 イラスト/アライヨウコ

体内水の流れをよくする「体内水エクササイズ」

 身体全体の体内水の流れをよくする効果的なエクササイズをご紹介。

指もみ手もみ法は、体内水のひとつであるリンパ液を流すのに有効な手段。カメさん体操は手足の末端に滞った体内水の流れを促す効果が期待できます」

●指もみ手もみ法

 手足の指の先端から根元に向かって絞るようにもみほぐしたら、手のひら、足の裏をそれぞれまんべんなくマッサージ。特に足の指の付け根はリンパ腺の働きを活発にするので念入りに。手と足それぞれ2分ずつ行う

●カメさん体操

 あお向けになり、両手足を伸ばしたまま持ち上げ、ひっくり返ったカメが手足をバタバタさせるように動かす。30秒続けて10秒休憩を3〜4回繰り返す

太田博明先生
医学博士。山王メディカルセンター女性医療センター長。藤田医科大学病院国際医療センター客員病院教授。日本の女性医療の第一人者。著書に『筋肉は若返る!−尿もれ・骨折・フレイルは防げる! 治せる!』(さくら舎)
石井さとこ先生
歯科医師。「ホワイトホワイト」院長。歯のホワイトニングを日本で広めた第一人者。多数のビューティーセレブからの信頼も厚い、口もと美容スペシャリスト。著書に『美しい口もと』(ワニブックス)
森下克也先生
医学博士、もりしたクリニック院長。久留米大学医学部卒業後、浜松医科大学心療内科にて永田勝太郎博士に師事。漢方と心療内科の研鑽を積む。著書に『医師が教える 不調を治す水の飲み方選び方』(KADOKAWA)

(取材・文/中村明子)