新宿・歌舞伎町では「ステイホーム」の見回りも行われ、一部からは営業妨害の声も(4月)

「コロナが終息したら絶対、面白いことあるんですよ。美人さんが、お嬢(性風俗嬢)やります」

 とラジオ番組で発言したナインティナインの岡村隆史(50)だが、女性蔑視として世間から非難を浴びた。コロナ不況で仕事にあぶれた女性が、性風俗の世界に移ることを期待するような発言だったからだ。

風俗店は“超濃厚接触”

 新型コロナウイルスの新規感染者が増加を続ける現在、“夜の街”の代表格としてバッシングされたホストクラブに続いて、性風俗店での感染も報告され始めている。衣服を脱いで性的サービスを伴う業態のため“超・濃密接触”となり、感染リスクがあることは明らかだ。

 札幌では、「おっパブ」と呼ばれる性風俗店を含む21店舗で42名のクラスターが発生した。

 このご時世、そんなリスクを背負いながら働く人、遊びに行く人はどういう理由があるのだろうかーー。

 飲食店のような店内で、上半身をあらわにした女性が接客をしてお触りなどがOKな「おっぱいパブ」で、感染が増えるのは当然と、風俗ライターの所沢ショーイチさん。

「女の子は本数稼いでなんぼの世界で、1回出勤すると10回転はする。唇や乳首にはさまざまな客の唾液がついて、プレーが終われば、せいぜいおしぼりでひとふきする程度。アルコール消毒を繰り返すと、ただれてカサカサになるのでいちいちしない。ほかの客に感染しないわけがありません」

 ある性風俗業界関係者も、次のように言いきる。

性風俗店はどこも客が半減から3分の1になっている。特におっパブ、抱きキャバ、セクキャバなどは悲惨な状況。多くが休業をしなければいけない状態に陥っている。ほかの性風俗店でも感染情報があまり表に出ないが、かなりあることは間違いない。陽性者が出てことを公にすると、休業をしなければならないし、ますます客足は遠のいて死活問題になります」

 そんな状況で、彼女たちはどう感染予防に気をつけているのだろうか。

 風俗ライターの松本雷太さんは、こう証言する。

「ソープランドでは女の子がキスなどの、粘膜接触をしたがらなくなりましたね。ただ、お客さんの要求を断るわけにはいかないので、女の子としてはシャワーを頻繁にする、うがいをするなどして対処するしかありません」

 ピンクサロンで働く20代の女性はこう証言する。

「店では入り口での検温や消毒はもちろん、いまはお客さんが少ないこともあり、密にならないようにしています。お客さんの身体や自分の口をふくときはより入念に行います。それでも自分は風邪もひきやすいし怖い。でも、“私は絶対にかからないんだ”といい聞かせてやっています」

 デリバリーヘルス『贅沢なひととき』(東京)のひなさん(23)は、

「アルコール消毒や手洗い、うがいを徹底して、感染リスクを最小限にする措置をとっています。それでも感染する可能性はゼロではないので、通勤のために出歩くのも怖いなと感じている」

 と説明する。

彼女たちの生きる術

 東京・池袋のSMクラブ『無我』は、消毒をコロナ以前からやっていたと明かす。

「検温、マスク、密を避けるなどを求めた『感染防止徹底宣言』の認可を都に申請して、その紙を店に貼っています」

 さらに、7月中旬からは2か月に1回、抗体検査をすべての従業員に行うことに。

「PCR検査はなかなかできず、抗原検査も一般的ではないので、抗体検査にしました。全員が陰性だったので、ホッとしました。過去にうちの従業員からお客さまに感染させた可能性は低いですよね。 

 万が一、感染者が出たら、もちろん公表して、店もしばらく休業します。うちのお客さまは70~80代の高齢者が多いので、安心、安全がお客さまとのいちばんの信頼関係につながると考えています」(無我)

 逆に客側が“対策”をとっていることもある。

「お客さまからマスクをするから、キスはなしと言われる方もいらっしゃいます」(前出・ひなさん)

 このような面倒やリスクをかえりみず、なぜ風俗嬢たちは働き続けるのか?

「昼にアルバイトをしていますが、コロナの影響で仕事が減った。生活していくためには、感染が怖くてもやらざるをえない」(前出・ピンサロ嬢) 

 都内の別のデリヘル嬢は、

「私も昼の仕事を契約社員でやっているが、給料が足りない。好きなジムや、趣味の釣りに行けなくなってしまう」

 と生活レベルを落としたくないと嘆く。

「風俗の女の子は、この仕事でしか自分を見いだせない子もいるのが現状。コロナの感染者が出たから辞めろと言われても、それでは彼女たちの生きる術を奪うことになる」

 と、前出の松本さんは彼女たちへの理解を求める。

 覚悟を決めたうえでの感染は、自己責任といえるかもしれないが、家族や“昼職”の同僚などに感染させてしまうおそれはないのだろうか。

 前出のデリヘル嬢は、こう説明する。

「ひとり暮らしで、帰省もしていないから、家族に感染させる心配はない。昼の職場は若者が多いので、もし感染させたとしても、重症化しないのでは……」

 前出の業界関係者は、性風俗を取り巻く状況について、次のように述べる。

「これまでの休業補償などは、性風俗店の従業員は対象外にされたこともあり、偏見にさらされるかわいそうな側面もあります。さらに、現在は自治体がPCR検査をホストクラブやキャバクラと交渉して積極的に行っていますが、性風俗店までには及んでいません」

客の言い分、岡村発言の現状

 性風俗業を必要悪、不要不急と切り捨てることは簡単だ。しかし、彼女たちが働くのは客がいるからでもある。男性たちの“言い分”は?

 都内のピンサロから出てきた客(50代)は、

「オレは健康だし、パチンコも行っていて、感染はあまり気にしていない。うちには家族もいるが、感染させることも深刻に考えていないね」

 と悪びれない。同じピンサロから出てきた10代の客も、

「感染は少し気になるけれど……。それでも、やっぱり、性欲のほうが勝るというか、我慢できなくなる」

 と苦笑するのみ。

 前出の所沢さんは、コロナ禍の客質の変化を感じ取っている。

「家族持ちや、一定の地位にいる人は行かないようになっていますが、輩(やから)系や、定職についていない人が相対的に増えている。性欲が強い人や、女の子への独占欲が異常に強い人も多い。

 とりわけ輩系は、禁止の本番行為を強要してくるなど悪質。女の子もこの時期だと断りにくいので、かわいそうな状況です。それで病んでしまった子までいる」

 前出のひなさんは、お客さんについて、

「最近、医療関係の方は見なくなった」

 と言うが、SMの無我はそうでもないと証言する。

「もちろん、この時期なので、客数は半減ですよ。でも、SMクラブは高額なので、昔からいわれているように、医師、弁護士、大学の教授といった方は相変わらずいます」

 コロナ不況も進み、冒頭の岡村発言のような状況になっているのだろうかーー。

「パーティーのコンパニオン、“パーコン”はパーティーが開催されなくなったため、一部が性風俗業界へ流れているようです。岡村さんの発言は真実をついているところもあります」(前出・業界関係者)

 1日の感染者数が日々更新されるなか、各自治体で緊急事態宣言を出し、接待を伴う店の制限が再び始まっている。性風俗店も含めた平等な規制や補償が必要だろう。前出の業界関係者はこう現状を分析する。

「PCR検査で性風俗店員が陽性になっても、“風俗で働いています”とは言えない人もいる。同時に、その客が陽性になっても、妻子や勤め先があれば、風俗で感染したとはなかなか言えないでしょう。そんな状況が、感染経路不明の最大の要因になっているかもしれません」

 性風俗への偏見をなくすことが、コロナの“第2波”を抑える手立てのひとつになるかもしれない。