ひと昔前の「手間のかかる節約」は時代遅れ。キャッシュレス化やネット銀行が普及していく今、スマートなマネー管理術を身につけましょう(写真はイメージです)

「家計を見直そうと通帳の整理をしてみたら、夫婦合わせて12口座も! 貯金を整理するつもりが、何から手をつけていいかわからず、結局放置しています。家計簿や節約は面倒で……」

 そう話すのは都内に暮らすYさん(50歳)。結婚後、いつの間にか口座が増えてしまい、管理しきれなくなったという。

ズボラな人ほど効果大! 魔法の貯金法

 そんな人にこそおすすめしたいのが『銀行口座を2つだけ持つ』という貯蓄術。「貯金したくても手間のかかる節約や複雑なマネーテクが苦手な人にこそおすすめです」とはファイナンシャルプランナーの坂本綾子先生。多くの人は、銀行口座を持ちすぎだと指摘。

「夫の給与振込口座のほか、複数の貯金用口座や、昔のバイト先の振込口座、すでに卒業した子どもの給食費の引き落とし口座などをずっと持っている人も多いのでは。家計管理では、毎月の世帯収入、支出、貯蓄額を把握することが大切ですが、たくさんの口座にお金を分散させていると、こうしたお金の流れが見えづらくなります

 あえて口座を複数に分けて貯める方法もあるが、お金を移動させる手間がかかるため、続かないケースも。また口座を管理する人が急に入院などした場合、お金が移動できない心配もある。逆に口座がひとつだと、システム障害などが起こった際に、現金を引き出せないリスクも。

「そこで世帯の口座は給与収入や生活費を管理するメインバンクと、貯蓄用のサブバンクの2つに絞るのがベスト。さまざまなリスクを避けながら、口座間で資金を動かす回数を最小限に抑えられます」

《口座を2つにしぼると得しかない! 5つのメリット》

1.  収入が入ったら貯金分を別口座に移すから、確実に貯まる!

 メインバンクに入った給与から、貯金する分をサブバンクに移動することで、生活費と貯金を混同することがなくなり、使いすぎを防げる。

2. 1つの口座で支出を管理するから、生活費のやりくりがラク
 食費を下ろしたり光熱費を引き落としたりする生活費の支出口座を統一。「家計の流れが一目瞭然となり、節約すべき点に気づけます」

3. 万が一のとき引き出しができないなどの、トラブルを防げる
 口座を2か所に分散させておけば、金融機関のシステム障害などで突然お金が引き出せなくなっても、もう1か所が利用できるので安心。

4. 貯金口座をまとめることで、資産を見える化できる
 貯金口座をひとつにしぼることで貯蓄額が明確になり、ローンを組むなどの判断がしやすく。目標額達成のモチベーションアップにも!

5. 手持ちの銀行口座を洗い出すことで、休眠口座が見つかることも
 口座数をしぼる前に、手持ちの口座をすべてチェック。「実は、長年放置していた口座から多額のお金を発見する人も多いんですよ!」

ほったらかしでOKな“自動貯金システム”

 手間は最小限なのに、確実に貯まる『口座2つだけ貯蓄法』の方法はページ下部で確認してほしい。生活費をメインバンクから引き落とす際は、クレジットカード=光熱費、電子マネー=食費、現金=レジャー費など、支払い方法で費目を管理するとラク。

「月に1度は明細を確認して、支出の見直しを。使いすぎがあれば、現金ならレシートを、カードや電子マネーならそれぞれの明細を確認。無駄があれば節約を検討して、より多く貯められるように」

 支出チェックは夫婦で行うのがおすすめ。削りたい支出がある場合も貯金額の推移を見せつつ話せば夫も納得する。

貯金は入金サービスなどを利用し、サブバンクに毎月入るしくみにすれば、手間なく確実に貯めることができます。貯金口座をひとつにまとめることで総貯金額が把握しやすく住宅など大きな買い物の計画も立てやすくなるメリットも」

 口座は夫名義のケースが多いけれど、妻名義が必要になることも。まず考えたいのは離婚など万が一の備え。

「貯金専用のサブバンクが夫名義の場合は、別に妻名義の口座を。家計をやりくりして余ったお金や、独身時代の貯金を貯めておきましょう」

 夫に預金残高や暗証番号を教える必要はなく、口座があることだけ伝えておけばOK。妻が先に死んでも、相続人が申請すればお金を相続できる。

「専業主婦で自分名義の個人年金を夫名義の口座から引き落としている人は注意。贈与税がかかることがあるので、自分名義の口座からに変更を」

 共働きの場合など、別口座を設けたほうがいいケースも。おすすめの管理法は下記で確認しましょう。

◎年金生活の場合
 メインバンクに夫の年金を入れ、生活費はそこから下ろす。年金は2か月分まとめて支払われるので、毎月半額ずつ使う。妻の年金は妻名義のサブバンクで管理し、なるべく使わず貯めておく。

◎共働き夫婦の場合
 妻の給与から家計費分を毎月メインバンクに入金。残りは自分名義の口座に貯金しておく。生活費はメインバンクから下ろし、貯金分をサブバンクに移動して、家族の貯金も確保する。

《口座2つだけ貯蓄法のやり方》
 夫が会社員、妻は専業主婦のケースで解説。口座のしぼり込みから、支出の振り返りまで夫婦で行おう。

1. 今ある銀行口座を2つに絞り、メインバンクとサブバンクを決める
 手持ち口座を洗い出し、口座を2つにしぼる。メインバンクは夫の給与振込口座か生活費をメインで引き落としている口座にすると合理的。近くに店舗がある銀行なら何かあったときに便利。サブバンクはメインバンクから資金移動しやすい銀行を選ぼう。
ポイント:給与振込口座と引き落としの多い口座に注目!

2. 給与が入金されたら、サブバンクの貯金用口座にお金を移動させる
 メインバンクに給与が振り込まれたら、貯金したい額をサブバンクに移動。資金移動のし忘れや手間を省くため、自動的にお金を移すしくみを作っておくのがベスト。他行からの自動入金サービスが利用できるところもあるのでチェックしてみよう。
ポイント:1か月あたりの預金額は月収の2割を目安に設定して

3. メインバンクの引き落とし、出金の明細を見つつ生活費をやりくりする
 生活費はメインバンクから下ろすルール。現金だけでなく、クレジットカードや電子マネー、デビットカードなどもすべて引き落とす。毎月給与振込の前日に通帳や明細で1か月の収支をチェックし、無駄があれば費目ごとに予算を決めるなどして節約しよう。
ポイント:通帳を家計簿のかわりにすると支出がひと目でわかる!

銀行を乗り換えるなら今!

 口座を整理したら、使わない口座は早めに解約しよう。

休眠預金等活用法により、10年以上、取引がない預金は社会の課題解決のために活用されることになっています。申し出れば返済してもらえますが、時間がたつと忘れてしまったり、遠方に引っ越した場合は他行からの取り立てで手続きに高い手数料がかかることもあるので先延ばしにしないことが大切です」

 なお銀行選びは金利も大切だが、暮らしに合ったサービスの有無や、手続きの際の利便性なども重要。そこで注目したいのがネット銀行だ。

「若い人のものというイメージかもしれませんが、お得なサービスが日々進化しているので、銀行口座を整理するこのタイミングで乗り換えるのもおすすめ。引き落とし口座としても使えるので、メインバンクにもできますし、金利のいい定期預金を目当てにサブバンクにしてもいいですね」

 またネット銀行でなくても、使っている銀行口座の残高確認や資金移動がパソコンやスマホでできる『ネットバンキング』を検討するのも一案。ネットバンキングは難しいと思われるかもしれないが、初期設定さえクリアすれば、入金や振込など各種操作も簡単にできる。

「ネットに強くなっておけば、キャッシュレス化にも対応でき、何より外出できないときでもお金を動かせることは大きなメリット。大切な資産を守るためにもネット銀行やネットバンキングを検討、挑戦してみてはいかがでしょう」

《お得なサービスを狙いたい人はネット銀行がおすすめ!》
 金利やポイントアップ、バラエティーに富んだ貯金・投資など、幅広いサービスが利用できるネット銀行。母体となる企業が安定しているかどうかも選ぶポイントとなる。

■使うたびにポイントが貯まり買い物に使える『楽天銀行』
 振込などの取引で楽天スーパーポイントが貯まり、楽天市場での買い物にも使える。楽天証券との口座連動サービス「マネーブリッジ」を使うと普通預金金利がアップ。ボーナス時期など期間限定で定期預金の金利アップキャンペーンも。

■デビットカードで家計管理がラクになる『ソニー銀行』
 他行から毎月自動入金できる「おまかせ入金サービス」や外貨預金などのサービスあり。全国約9万台と提携ATMも多い。年会費・発行手数料無料のVisaデビット付きキャッシュカードは国内外で即時決済ができ、お金の管理も楽。

■証券口座との連動で金利アップ!『住信SBIネット銀行』
 母体は信託銀行で安心。連動するSBI証券を開設し、各口座をつなぐ「SBIハイブリッド預金」を使えば普通預金金利が大幅アップ。カードや光熱費の引き落とし口座にも使え、住宅ローンは1円単位で繰り上げ返済可能。
※金利などは2020年8月18日現在のデータ。各銀行の金利や手数料は写真ページの一覧表でチェック!

《現金管理派でATMをよく使う人は?》

■ATMの数が圧倒的! 1年中24時間、手数料無料の『ゆうちょ銀行』

 全国に約2万4千の窓口と、約3万2千のATMがあり、引っ越ししても、国内であればたいていのエリアで継続して使える。自分の口座なら24時間手数料無料で引き出せる。

■全国のしんきんATMなら入出金手数料が無料!『信用金庫』
 親が認知症の場合、子どもが生活費の分を管理できるなど、高齢社会の課題に対応。地域特産品を景品にした預金や、商店街のスタンプで貯まる預金など地域密着型のサービスも充実。

(取材・文/野中真規子)


【PROFILE】
坂本綾子先生 ◎ファイナンシャルプランナー。女性誌やマネー誌でお金の記事を執筆。情報サイト「All About」でマネーガイドとして金融機関の取材記事を担当。著書は『まだ間に合う! 50歳からのお金の基本』(エムディエヌコーポレーション)など多数。