被害者の野口麻美さん(インスタグラムより)

《私が元交際相手野口麻美から多大なる嫌がらせを受け》

《どうしようもない憤りから彼女を許すことができず》

 自身が営む東京・世田谷区の洋菓子店『I』のインスタグラムに、そう怨念のこもった文章をしたためたあと、Tは凶行に走った。

 8月30日、日曜日の早朝、レンタカーに脚立、ガラスを焼き切るガスバーナー、包丁2本を積み込み、野口さんが住む中野区のマンションへと向かったT。

 部屋へ忍び込むと、包丁で彼女の背中や首など23か所をメッタ刺しにして、一部は肺まで届き、強い殺意が込められていたようだ。

 Tは犯行後、約2キロ離れた同区の実家マンションへ戻り、7階の共有通路から飛び降りて、みずからの命を絶ったのだった─。

昨年、Tは書類送検されていた

 3時間後、野口さんは実弟によって発見され、事件は発覚。

 そのときの様子を、野口さんの親族が絞り出すように週刊女性に語ってくれた。

「麻美の弟が第一発見者だった理由は、彼は姉がTからのストーカー行為や暴力を受けたことを知っていて気にしていたからです。Tのインスタを読んで、自殺するのではと感じたようです。

 麻美もかねてからTが自殺することを心配していたので、気になって姉のマンションを訪ねたのです。

 そこで、姉が血だらけで倒れていたので、状況がよくわからないまま、“ああ、姉も責任を感じて、自殺したんだ”と思ったようです」

 野口さんとTが交際していたことは、この親族も知っていたという。

「今から4年ほど前、2~3年は付き合っていました。しかし、結婚という段階までは至らなかったので、私は会ったことがありません。

 麻美とヨリを戻したいという表れだったと思いますが、別れたあとにTのストーカー行為が始まり、それが高じて暴力があったようです」

 Tがインスタにのこした麻美さんへの恨みつらみについては─。

「暴力を受けた麻美は警察に相談して、Tは書類送検になり(昨年5月)、ストーカー行為をやめるように警察に再三、警告を受けていました。

 麻美が働いていた店にTが出入りすることも、Tが心酔していたその店のオーナーのレストランに出入りすることも禁じられたので、逆恨みをした。その末の凶行だったのかもしれません」(親族)

 今年4月には、麻美さんは警察に「もう大丈夫ですから」と、Tとのトラブルが収束したことを告げていたが……。

女性からの評判は悪かった

 東京で生まれ育った野口さんは、バレエを習っていた幼いころから、母親が作ってくれたお菓子が好きで、菓子作りに目覚めたようだ。

「もともとはダンサーや獣医師になる夢を持っていたようですが、大学では美術を専攻。卒業後はスペインでキャンディー作りの修業をしていたようです」(野口さんの知人)

 その後、Tが店長をしていた世田谷区の洋菓子店(現在は閉店)に入り、'16年ごろから交際がスタート。'18年末にTが「I」をオープンさせたころには2人の関係は終わっていたようだ。

 野口さんもパティシエとして、1年前に開店した渋谷区の洋菓子店の店長として働き始め、インスタでは《人に感動やストーリーを伝えていく》と決意を語っていた。

「38歳には見えないほど若々しくて、美人さんでね。気さくな人柄だったから、みんなに愛されていましたよ。お店もシュークリームとチーズケーキがおいしくて、開店時から行列ができるほど評判だった」(近所の常連)

 一方、Tは大阪に生まれ福岡で育ち、高校まではサッカーに打ち込んだが、その後は製菓専門学校へ進学。大阪やフランスで修業を積んだ。

「菓子作りの腕がよくて、責任感が強くて、後輩の面倒見がいい、信頼されている存在だった。性格も穏やかだったので、まさかあんなことをするとは……」(Tの友人)

「I」のインスタやフェイスブックを見ると、おしゃれなお菓子がずらりと紹介されているが、近所の主婦はこう話す。

「タルトなど、お菓子作りの腕は確か。だから、遠方の人には評判がよくて繁盛していましたが、近所の特に女性には評判が悪かった。T店長の目つきが睨むように悪くて、従業員を人前で平気で怒るので、気分が悪くて」

 グルメレビューサイトでも、「ぶっきらぼう」との書き込みがあり、Tは昔気質の職人と言えば聞こえはいいが気難しく、思い込みの激しい性格をうかがわせる。

 そのような態度を野口さんに疎まれたのだろうか。別れた後も野口さんへの執着は続き、悲劇が起こってしまった。

「麻美がどんなに怖かっただろう、どんなに痛かっただろうということを思うと胸が締めつけられます。自分だけが勝手に自殺するのはかまわないが、恨んだ相手を巻き添えにしたことは絶対に許せない」

 野口さんの親族は、やり場のない怒りに身を震わせるしかなかった……。