男女がすれ違う原因に、金銭感覚の違いがあげられることがあります。夫婦間でも、“お金がないと、しなくてもいいケンカをする”などと言われていますし、男女間だけでなく、親子間や友人間でも、お金がトラブルの原因になることがありますよね。ライターをしながら、仲人としても婚活現場に関わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、さまざまなテーマ別に考えてゆく連載。今回は、「お金の使い方に、その人の考え方や生き方が表れる」です。

今回は、「お金の使い方に、その人の考え方や生き方が表れる」です(写真はイメージです)

俺の金を1円たりとも無駄に使うな!

 1か月前に離婚をしたという葉月さん(38歳、仮名)が、入会面談にやってきました。

 葉月さんは、大手メーカーに勤めていて年収が600万円あり、とても自立している女性でした。だからこそ離婚も決意できたのでしょう。元ご主人の洋太さん(35歳、仮名)とは、婚活アプリを通じて出会ったといいます。結婚生活は10か月でした。

「彼は、商品や人物のPR動画を撮影するフリーの映像カメラマンでした。私の会社にいる男性は、典型的な日本のサラリーマン。スーツを着て定時に出社し、決められた業務を勤勉にこなしていく。自分で撮った映像を作品にして商売をしている彼が、とてもクリエイティブに見えて、どんどん惹かれていきました」

 はっきりした年収は知りませんでしたが、“300万円程度かな”と予想していたようです。でも、才能さえあれば年収も高くなっていくだろうし、年下ということもあって、“彼を支えたい”“才能を伸ばしてあげたい”という気持ちが芽生えたのだそうです。

 そして、あっという間に結婚を決めてしまいました。ところが一緒に生活をしてみると、お金に対する考え方が、根本的に違っているのを感じるようになりました。

「そもそもお金がないので、普段から無駄なお金を一切、使わない。仕事では地方にも行くけれど、旅行で遠出するのは無駄な出費と考えているようでした」

 仕事がある月とない月のばらつきはもともとあったのですが、今年に入り新型コロナウィルスの影響で、みるみる仕事がなくなっていきました。4月に入り緊急事態宣言が出されると、収入もゼロになりました。

「私はその期間中、在宅ワークになって週に2回はリモート会議もあったし、実質、月曜から金曜日まではしっかり働いていました。ところが、仕事のない彼はゲームをしたり、眠くなると昼寝したりと、自由気ままな生活をしていました」

 出会った当初は自由な生き方をしている彼に惹かれたのですが、コロナで仕事がなくなるや、家でゴロゴロしている様子に、だんだんとイライラを覚えるようになりました。

 そして、緊急事態宣言期間中に、葉月さんが買ってきた赤ワインから、大ゲンカが勃発しました。スーパーの袋の中のワインを見つけた彼が言いました。

「なんでワインなんか買ってきたの?」

「えっ、今夜は飲みたいと思ったから」

「いくらだったの?」

「2000円。ちょっと奮発しちゃった」

 そう言うと、洋太さんの顔がみるみる怒りに満ちあふれていきました。

「なんでそんな無駄遣いするんだよ」

 売り言葉に買い言葉で、葉月さんも語気を荒げて言い返しました。

「今週1週間、私は仕事を頑張ったし、そのご褒美に2000円のワインを飲むのが悪いことなのかな? 私は無駄づかいだとは思わないよ」

 すると、洋太さんはスーパーの袋の中に入っていたネギを取り出し、葉月さんの頭をそれで叩いて言ったのです。

「俺への当て付けか? 今月は仕事なくて無収入だったけど、貯金崩して約束の食費は入れたよな。俺の金を1円たりとも無駄に使うな!」

 その後は、大声で罵詈雑言を怒鳴りちらし、そのまま外に出て行ってしまったのです。

 ここまでの出来事を語ると、葉月さんは、私に言いました。

「仕事がなくてイライラしていたのはわかります。でも、たった2000円のワインを買っただけで、ネギで頭を叩かれる。私は何を見て彼のことを好きになり、結婚をしたのだろうと、そこで一気に気持ちが冷めてしまいました」

 この出来事が、葉月さんに離婚を決意させました。

 さらに葉月さんは、私に言いました。

「彼は、生きるための最低限のお金があればいい人。心を豊かにすることにはお金を使わない。それは無駄づかいなんです。例えば、バーに行って1杯1000円のハイボールを飲むなら、家でウィスキーを買ってソーダで割れば100円ですむ。2000円のワインも200円のカップワインも酔っぱらえば同じ。私は一生懸命に働いた自分へのご褒美に、たまには奮発して美味しいものを食べたいし、旅行にお金を使うことも贅沢だとは思わない。無駄なお金を一切使いたくないという彼とは、根本的に考え方が違うんです。お金をどう使うか、その考え方が一致していないと、一緒に生活していくのは難しいですよね

 葉月さんは、「次の結婚相手は、金銭感覚の会う人を選びたい」と、言いました。

身の丈に合ったお金の使い方をしろ

 お金の使い方やお金に対する考え方は、本当に人それぞれです。洋太さんのように“お金がないから無駄な出費をしない”という人もいますが、例え年収が1000万円を越えていても、お金の使い方にシビアな人もいます。

 先日、麻美さん(35歳、仮名)が、外資系に務める昭栄さん(38歳、仮名)と、お見合い後に交際に入りました。麻美さんの年収は350万円、昭栄さんは1300万円でした。

 初めてのデートで珍しい日本酒が取り揃えてある和食屋さんに行ったのですが、会計の1万2000円は、きっちり割り勘でした。そこは麻美さんが、「日本酒が好き」とお見合いのときに言ったのを昭栄さんが覚えていて、予約をしたお店でした。次のデートは、「ビールが好き」という昭栄さんに合わせて、ビアホールに行きました。そのときの会計は、8000円で、そこも割り勘でした。

 麻美さんは、割り勘には抵抗がなかったのですが、2回目のデートを終えたときに、昭栄さから言われたことに、どうしても納得がいきませんでした。彼はこう言ったのです。

「あなたは前回も今回も、金額を考えずに高いものをバンバン頼みますよね。自分の身の丈に合ったお金の使い方をしたほうがいいですよ」

 この言葉を聞いて、彼女は、“交際終了”を決めました。麻美さんは、私にこう言いました。

「彼にごちそうになったわけじゃない。割り勘なのですから、私のお金で食べたいものを食べて、飲みたいお酒を飲んで何が悪いのでしょうか。何を頼もうが、いくら使おうが、彼に言われる筋合いはないと思います」

 これもお金に対する考え方の違いでしょう。昭栄さんにしてみたら、 “こんなふうに散財する女性に家計を任せたら、家計の出費もかさむ”と思ったのかもしれません。

 ただ麻美さんの言い分もわかります。“ごちそうになったわけではない。きっちり割り勘なのだから、頼みたいものを頼んで、何が悪いのか”、と。

 これも、お金をどう使うのかの考え方が、双方で違っていたから起こったトラブルでしょう。

お金の使い方には、人間性が映し出される

 人それぞれにお金の使い方は違います。ですが、これまで多くの成婚していった会員たちを見ていると、金銭感覚が細かかったり、奢れなかったりする男性は、女性には好かれない傾向にあります。

 男女平等の世の中ですし、若い人の間では割り勘デートが当たり前になってきているといわれています。でも、多くの婚活女性たちは、こう言うのです。

「2人で食事をして1万円。それを5000円、5000円の割り勘にするなら、5000円で2人ぶんの食事ができるお店に連れて行ってほしい。そのほうが、相手から大事にされている気持ちになる」

 ただ、女性たちもおごられることを当たり前だと思っていたらいけない。食事をごちそうになったら、次のお茶代を出したり、次のデートのときにお礼の小さなプレゼント(お菓子やお茶など、消え物がいいですね)を、持っていったりする。そうした気遣いを忘れないでいてほしいですよね。

 金額云々ではなく、その時間を楽しんだり、心を豊かにしたりするためにお金を使う。相手に喜んでもらうためにお金を使う。そんなふうに考えられると、生きたお金の使い方につながる気がします。

 また、“1円たりとも無駄にお金を使いたくない”と思っている人は、そういう考えのパートナーを選ぶと結婚生活もうまくいくのではないでしょうか。


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/