小泉進次郎環境相
 今年、新型コロナウイルスの感染拡大によって、仕事におけるコミュニケーションが変わった。対面で顔を合わせる会議がZOOMなどのアプリを使うようになり、上司や先輩、友人と携帯やパソコンの画面越しに飲み会をするのが当たり前になった。今後、仕事をしていく上では、上司や取引先に対して、オンラインでどう振る舞うかが重要になってくるだろう。そんな“オンラインコミュニケーション”の極意について、『普通の僕らの負けない就活術 マスコミ就活革命(レボリューション)』(早稲田経営出版)をはじめ、3冊の就活に関する著書がある霜田明寛氏に、解説してもらう。

 いま、世界はオンライン化しています。新型コロナウイルスの影響で、ビシネスの場でオンラインでのコミュニケーションを余儀なくされましたが、一時的なものではありません。この流れは今後、ますます加速していくでしょう。これは、コミュニケーション史における重大な転換点です。

 私は3冊の就活本を執筆し、10年間にわたって大学生の就活指導にあたっていましたが、3月からすべてオンラインに切り替えました。ステイホーム期間中に100人以上の就活生と面接練習をしていく中で、面接で“オンライン映え”する人の存在に気づきました。

 また、多くの会社で出社するか、テレワークにするかを日によって選べるようになりました。私が編集長を務めるウェブメディアの会社は、基本的に出社しないのでメンバーとは約半年、直接顔を合わせていませんが、以前と変わらず、むしろ以前より効率的に仕事を遂行できています。

 仕事をオンラインにしてわかったのは、コミュニケーションがオンライン化することで、“得するタイプの人”と“損するタイプの人”がいるということです。

 そして、オンラインコミュニケーション元年の今はまだ“得する人と損する人がいる”程度で済みますが、これからは、その特徴を理解して、自分を得するタイプに近づけないと、仕事やプライベートなど、さまざまな場面で損をし、同僚たちに差をつけられてしまいます

 そこで、本稿では3回に渡って、“オンラインコミュニケーションで得する人”になるためのコツやポイントを紹介していきます。第1回となる今回は、基本編ということで、オンラインによって何が明らかになり、何が失われるのかを解説していきます。

“小泉進次郎タイプ”は不利になる!?

 まず、オンラインのコミュニケーションで失われるものは空気です。1対1でも、複数人でも、人が実際に集まれば、そこには場の空気が存在します。しかし、オンラインでは、その空気が形成されにくく、感じ取りづらくなります。例えば、これまでの大人数の会議では会議室1部屋に1つの空気でしたが、オンライン会議ではZOOMの窓枠の数だけその人の雰囲気があるので、全体の空気は形成されにくいんです。

 そこで不利になるのは、“雰囲気でもっていくタイプ”の人です。オーラのある人と言い換えるとわかりやすいでしょうか。会議の場などで、前に立つだけで惹きつけるタイプの人や自分の雰囲気で場の空気を変える人です。

 本人やその人に惹きつけられる聴衆の空気で、なんとなく内容もすごいように感じてしまう……。例えるなら環境大臣の小泉進次郎氏のような人です。彼のようなタイプはオンラインでは、不利になります。ネット上でもよく揶揄(やゆ)されていますが、環境問題の解決方法を聞かれて「ハッピーにセクシーに」と答えるような小泉氏の言葉は、文字に起こすと何を言っているかよくわかりませんが、実際に演説などを聞くと、なんとなくすごいと感じてしまいます。

 聴衆に対するアイコンタクトという技術だとわかっていても、彼と目が合うとイチコロです。しかし、オンライン上ではアイコンタクトはわかりづらく、彼のオーラも直接伝わってきません。そうした“実は中身がない人”をすごいと感じてしまうのは、本人のオーラに加え、聴衆の空気に引っ張られてしまうことが大きく影響します。

 ネットワークビジネスの入会用説明会でも、すでに会員になっている人を会場にサクラとして用意しておき、笑わせたり、大きく頷かせるといった空気の醸成が行われることがあります。これは人が空気に引っ張られる生き物である特性を利用した演出ですが、オンラインでは、話し手のオーラは薄くなり、聴衆の空気もあまり伝わってきません。これは、見方を変えると、普段より、自分の感覚に基づいて判断できるようになるとも言えるでしょう。周りに流されることがなくなり、熟考して判断する余裕が生まれます。つまり、より人の本質が見えるようになるということです。

“気遣い”が通用しない!?

 ほかに失われるものも見ていきましょう。私は常々“コミュニケーションの上手い人は、コントリビューションができる人”と言っています。コントリビューションというのは“貢献”という意味ですが、コミュニケーション中に、相手に貢献できている人が、“きちんとコミュニケーションができた”と思ってもらえるのです。コントリビューションは、主に以下の4つです。

(1)相手に気持ちよくしゃべってもらう

(2)相手が興味を持つような情報を伝える

(3)笑わせる

(4)気を遣う

 (1)は聞く技術、(2)と(3)は話す技術なので、割と習得が難しいものです。ビジネスの場では、特に新入社員や若手社員が会議などの場で、上司や先輩相手に②と③をするのは難易度が高くなります。プライベートで初対面の異性と食事をするケースも同様です。しかし、(4)の気遣いに関しては、誰でも簡単にできるものです。もう少し詳しく言えば、気遣いは初歩の定型のものだけ覚えて実行すれば、“気遣いができる人”と思ってもらえるコスパのいい技術と言っていいでしょう。

霜田明寛さん

 会議の場で言えば、相手が入ってきた瞬間に席を立つ、食事の場で言えばおしぼりやフォークなどを相手に渡す、グラスが空いていたら“何か飲みますか?”と聞く……といった初級のマナー本に書いてあるような内容です。これらはいわば型なので、そこに心があるかよりも実行しているかが問われ、型さえ覚えれば誰でも簡単に実行可能なものでした。

 しかし、オンラインにおいては、これらの“気遣いテクニック”がすべて封じ込まれます。ZOOMの画面に上座も下座もありませんし、コップが空いていることに気づいても注ぐことができません。オンライン上では従来の気遣いテクニックが通用しないのです。そうなると、今まで場の空気を読むことに長けていたり、“細かいところによく気づくね”と言われていたタイプの人は不利になります

 このように、オンラインでのコミュニケーションは、従来のものと同じだと考えてはいけないということを覚えておいてください。

 第2回は『話し方・聞き方編』ということで、オンラインでの会話において、どう話し方や聞き方を変えるべきかをお伝えします。