デヴィ夫人

 デヴィ夫人の不妊を巡る発言が物議を醸している。

生放送で
「不妊の原因は堕胎」と主張

 ことの発端は、24日に放送されたバラエティー番組『胸いっぱいサミット!』(関西テレビ)での発言。菅義偉首相が掲げる不妊治療の保険適用拡大の話題に及んだ際、「不妊になるのは堕胎が原因です」と持論を述べたことにある。

 さらに27日に更新されたツイッターでは「私の知る限り不妊の多くは堕胎の経験者」「結婚後、昔お付き合いしていた人の子を医者や夫に中絶したと正直に言える女性は皆無でしょう。結果、医者は原因不明の不妊症に悩むことになる」と発信し、炎上する事態となった。

 そんな強気な姿勢から一転、デヴィ夫人は翌28日にブログを更新し、今回の発言に至った経緯を説明。また、「私の発言によって、不妊治療に当たっている方々、中絶せざるをえなかった方々等を心ならずも傷つけてしまったり、不快な思いをさせてしまったことは残念であり大変申し訳なく思っております」と謝罪した。

「テレビ局には多くの意見が寄せられたと聞いています。本人や事務所もよほどお叱りを受けたのではないでしょうか。これまで自分を通してきたデヴィ夫人が、自ら謝るのは珍しいことです」(テレビ局スタッフ)

 だが、本人が謝罪して一件落着、というわけでもない。今回の発言でSNSでは多くの女性から「悲しい」という声が上がり、その傷ついた心はそう簡単に癒えるものではなさそうだ。

 不妊症や不妊治療を巡る問題は、『週刊女性』でも度々、取り上げてきた。

 今や、子どもが「いる・いない」に関わらず、不妊を心配したことのある夫婦は35%(子どものいない夫婦では55.2%)。年々、不妊の検査や治療経験のある夫婦の割合は上昇傾向にあり、その割合は子どものいない夫婦では28.2%にのぼる(第15回『出生動向基本調査』より)。

 決して他人ごとではない。『週刊女性』がこれまで取材したり、話を聞いてきた人の中には、不妊治療の末、新しい命を授かった人もいれば、結果が出ずに「諦めた」という選択をした人も数多くいた。不妊治療には膨大なお金と体力、そして気力を要すため、不妊治療によって心が病み、仕事もままならず、ついには仕事を手放した女性もいる。

 実際に仕事と治療の両立ができずに仕事を辞めた・不妊治療をやめた・雇用形態を変えたという人は34.7%にのぼるという。その理由の多くが「精神面で負担が大きいため」「通院回数が多いため」「体調、体力面で負担が大きいため」とある(厚生労働省『平成29年度 不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査』より)。

 ほかにも、あちこちで何気なく言われる「お子さんはまだ?」という言葉に傷つき、毎月生理が来ては落胆、そして夫との関係も、ときには義父母や友人関係さえもギクシャクしていく。誰にも言えず、一人ぼっちで悩みを抱えている人もいる。デヴィ夫人はその人たちを責め立てたわけではないが、そんな苦悩を抱えた人たちが数多くいるなかでの今回の発言は、あまりにも残念なものだった。

 今回の発言を取り上げたJ-CASTニュースの取材に対し、厚生労働省の母子保健課は「不妊の一番の理由は年齢だと思う」とも答えており、厚生労働省の資料には「不妊の原因は、女性だけにあるわけではありません。男性に原因があることもありますし、検査をしても原因がわからないこともあります。また、女性に原因がなくても、女性の体には、治療に伴う検査や投薬などにより大きな負担がかかります」とも記述されている。(厚生労働省『仕事と不妊治療の両立支援のために』より)

「もう誰にも不妊だって言えないよ」

 ただでさえ不妊は他人に言いづらい個人的な問題。それでも昨今は、不妊治療についての理解を広める声が上がり、職場では周りの理解が必要ということもあって、前よりオープンにしやすい環境になってきた。しかし、今回の件で「もう誰にも不妊だって言えないよ」(ツイッターより)と言った声があがったのも事実だ。

 ほかにもネットでは、こんな戸惑いの声が聞かれた。

<心から妊娠を切望しても叶わないでいる方々の身になって>
<こんなに偏った考えで無茶苦茶なレッテル貼って人を判断してる人いたんだ>
不妊治療中、なんで普通に授かれないんだろう、こんな思いをしないといけないんだろうと苦しんできました。堕胎経験があるせいだなんて言われたら悔しい通り越して悲しい
<不妊で苦しんでいる奥さんが、旦那に堕胎経験を疑われるような事になるのでは……> 

 また、番組の質を問う声も止まず、

<他の番組もだけどコメンテーター選ぶならそこそこ専門の人や経験者の方がよくないか?>
<番組もデヴィ夫人も否定しなかった他の出演者も許せない。 知識もないのに情報番組なんてやるなよ>

 と、批判の声は収まる気配がない。

 そもそも、デヴィ夫人は出産に対して強い思いがあるように思う。自身の著書『選ばれる女におなりなさい デヴィ夫人の婚活論』(講談社)を出版したときのインタビューで、「出産を推奨する人をバッシングするべきではない」という流れからこう答えている。

「私はインドネシアに行ってからなかなか妊娠しなかったんですけど、女として生まれて、妻になることができて、母になることなく死ぬというのは、とても悲しいことだと思っていました。だから、妊娠を知った時は至上の喜びでした。その喜びを知らないままいるということは、不幸だと思います。生みたくても産めない人がいるのに……というのは屁理屈ですね。人口が減ったら日本は滅びますから。」(『あなただけに言うね:telling,』インタビューより抜粋)

 なかなか妊娠しなかった経験があるならば、なぜそんな悲しい発言ができてしまったのか。そのつらさがわかるのならば、不妊治療を続ける人たちに励ましの言葉を送ってほしかったが……。人気者である以上、自身に影響力があることを踏まえて、発言してほしい。