映画公開日に釈放された、伊藤健太郎容疑者

 

 ひき逃げなどの疑いで29日に逮捕された俳優の伊藤健太郎容疑者が、30日に釈放された。数々の作品やCMに出演する人気者だけにその影響は大きい。

 同容疑者が出演予定だった同日のフジテレビ系『アウト×デラックス』は、急きょ当日の午後に番組を再収録。番組MCの矢部浩之が、番組冒頭に「いろんなことがございまして。急きょ放送内容を全部差し替えて、お送りしたいと思います」「『アウト×デラックス』の中でも扱えないアウトもあるということで」と語り、差し替え放送をおこなった。同局での他の出演予定番組も、放送内容の変更や再編集などを行い放送すると発表されている。出演するCMも各社放送を見合わせとなっている状態だ。

“作品に罪はない”論争

 一方、伊藤容疑者が出演し30日から公開された映画『とんかつDJアゲ太郎』は初日の舞台挨拶は欠席となったものの、映画本編は予定どおり公開された。また、11月6日公開予定の主演映画『十二単衣を着た悪魔』も、予定どおり公開するという。

『とんかつDJアゲ太郎』も『十二単衣を着た悪魔』も、どちらも伊藤容疑者と、薬物違反で逮捕された伊勢谷友介被告が出演しています。コロナ禍での公開、伊勢谷逮捕に続いて、伊藤の逮捕。3度目の災難ということで、なかなか厳しい運命を背負わされていますね。とはいえ、『アゲ太郎』は再編集なしでそのまま公開となりましたが、ピエール瀧のコカイン逮捕あたりから、“作品に罪はない”論が浸透し、映画や有料の配信など、観客や視聴者の意思でお金を出して見るものに関しては大丈夫という流れになっていますね」

 ピエール瀧の逮捕後、配給会社の社長が会見をし「中止または延期、編集したうえでの公開、ノーカットでの公開など議論が重ねられましたが結論に至らず、配給担当の弊社の判断で、ノーカットのまま公開することにいたしました」と明言した。しかし、テレビの地上波放送は、差し替えや放送中止となる場合が多い。なぜか。

「それは、『もう撮ってしまったもの』と『これから収録するもの』という違いがありますね。とはいえ、映画などでも撮影中に事件が発生した場合は、中止や代役への切り替えになる場合があります。また、入場料を取るといっても舞台などは代役をたてることになります。撮影済み、放送中であっても、CMに関してはほぼ放送中止の扱いになります」(同記者)

なぜ、“番組に罪はない”論争は起きない?

 実際、伊藤容疑者が出演しているCMはすべてネット上の動画を削除した。各メディアには立ち位置の違いがあり、中でもテレビは特別だ。「テレビはスポンサーのCM収入で成り立っている」というのは、あるテレビ関係者。

「テレビ番組は、“作品”ではなく“商品”という考え方なんです。イメージのよくないタレントが番組に起用されないのと似ていて、逮捕されたことでそのイメージが悪化したら、番組は“商品”にならなくなってしまう。だからタレントが不祥事を起こしたら差し替えましょう、ということになる」(同関係者)

 広告が売れない今、テレビ局の立場はますます弱くなり、局はスポンサー企業をより大切にしないといけないというわけだ。

 テレビは差し替えもしくは中止、映画は再編集せずに時期を見るなど、ケースバイケースで公開するとうい現在の流れは、今後も続くと前出のテレビ関係者は言うが、その流れが変わる可能性はあるのだろうか。

「あるとするなら、世の中の反応が『番組に罪はない』となるのならという場合です。しかし、テレビ局という巨大な組織に対して、『かわいそう』という感情を抱く人はおそらく多くありません。そう思われる段階には至っていませんね」

「番組に罪はない!」「それでも見たい!」「差し替え作業するスタッフや出演者が気の毒」といった見方をしてもらう番組づくりが求められる。

〈取材・文/渋谷恭太郎〉