写真右・北井容疑者(本人のフェイスブックより)、左・バレーボール部に所属していた中学時代

「とてもいい孫娘だったのに、こんなことになってしまうなんて……」

 そう悲嘆にくれたのは、東京・港区東新橋の公園に生まれたばかりの女の子を遺棄した容疑者の祖母。

「子どもがいては夢が叶わない」

 大学4年生だった昨年11月3日、就職活動のためにたびたび上京していた北井小由里(さゆり)容疑者(23)は産気づき、羽田空港にある多目的トイレの中で出産。

 女の子だったが、産声をあげたため、ティッシュを口に詰め込んだ。

「それでも泣きやまなかったので、首を絞めて殺した。子どもがいては夢が叶わないと思った」

 と、のちに供述。亡骸(なきがら)を紙袋に入れて、いったんは宿泊先のホテルへ。そこで公園を検索したあと、高層マンションに囲まれたJR浜松町駅近くの「イタリア公園」で土の中へ遺棄したのだった。

 公園で遊んでいた幼児が発見して、事件が発覚したのは5日後だったが、目撃者は皆無。

 警視庁は空港や公園の防犯カメラなどで該当する約30000人を解析して、1年後の11月1日、衣料品販売員・北井容疑者を死体遺棄の疑いで逮捕した。

 遺体にはへその緒もついたままだったというが、なぜ妊娠したままで就職活動を続けたのか。周囲に相談できる人はいなかったのだろうか。

 北井容疑者は、兵庫県神戸市郊外の田園地帯出身。

 近所の住民は、

「おとなしくて、弟や妹をかわいがるいい子やったよ」

 と言い、地元の中学校時代の複数の同級生も、

「バレーボール部に所属していたが、おとなしくてほとんど目立たない子だった」

 と口をそろえた。

 北井家は祖父母、両親、容疑者、弟(大学3年)、妹(大学1年)と7人の大家族だが、母親と子ども3人はすべてバレーをやるバレー一家だ。

憧れのCAを目指す就活中に妊娠

 容疑者は、地元の公立高校から県内の私立大学へ進学し、ハワイの大学へ留学したこともある。

 大学の体験記には、

《4時間ひたすらタイピングで大変だったけど、終えた時の達成感はとても良いものでした! 普段はできない貴重な経験ができてとても良かったです!!》

 と充実していた様子がうかがえる。

ハワイの大学に留学していたときの容疑者(’18年)

 4年生になると、憧れのCA(客室乗務員)を目指して就活を始めるが、そのころにはすでに新しい命を宿していた。近所の主婦は、

「就職してからもそうやけど、大学のときも母親が娘さん(容疑者)をよく車で駅まで送っていた。とても仲のいい一家やし、母娘もとても仲がよくて、話しやすい母親やから、妊娠について相談できなかったんやろか」

 実家の敷地内の別棟に住んでいる祖母が週刊女性の取材に答えてくれた。

「(容疑者とは)最近では食事も別々やし、生活の時間帯が違うから、1日に1回も顔を見んこともあったからねぇ。

 私らも、家族もまったく妊娠には気づかなかった。

 変わったことといえば、ここんとこ……、服装が急に派手になったぐらいやなぁ。

 だけど母親は異変に気づいとったようで、“妊娠してないか?”“身体がおかしくないか?”と何度も聞いたみたいやけどね。それでも、本人は何も言わんかったんや」

 子どもの父親にも相談できなかったのだろうか。

 昨年9月、身ごもって7か月ほどの北井容疑者は、市内の産婦人科を受診して、妊娠を告げられたという。

赤ちゃんの父親は心当たりがない

 すでに人工中絶できない時期になっていたが、その後も家族に相談することはなかったようだ。

「結局は甘やかされて育てられて、なんも苦労せずに育ったということやろ。20歳を越えたら、普通やったら分別がつくのになぁ。うちの子はそれがなかった、アホやったということやろ。

 家族に話してシングルマザーになるのと、黙って産んで、今回のことになるのと、どっちがええかいうことは判断つくと思うのに、それができんかったんやから」(祖母)

 赤ちゃんの父親は、容疑者の妊娠を知らなかったのだろうか。男性も責任を問われるべきだが、心当たりはないと祖母が続ける。

「男を家へ連れてきたことは1度もなかったからなぁ。相手もわからないし、いまさら詮索しても無駄なので、私ら年寄りは相手を責める気持ちはないわ」

家族7人が住む北井容疑者の自宅

 容疑者は世間体を気にしたのかもしれない。北井家は集落でも有数の田畑を持つ大きな農家だが、祖父はこう語る。

「こんな田舎やけど、いまはできちゃった婚やシングルマザーは珍しゅうないよ。

 父親がいない子どもができたのは、いいとは言えんけど、くっついた離れたが当たり前の時代。堕ろせなかったら、認めんとしかたない」

 そして、ため息まじりに肩を落とした。

「まあ、最悪のことをしてくれたわ。先祖が長い間かけて築き上げてきたものが、これで台無しや。先祖に泥を塗った形やな。でも、世間さまに顔向けできんことをやってしまったけど、それをいまさら言っても、しょうがない」

 これから先を見つめて、やっていくだけと語った。

もみ消しなんかはできないから償え

 地域では大学や就職となると、大半の若者が家を出ていくが、容疑者は実家暮らし。それだけ居心地がよかったのだろう。

「うん、だからこそ、仲のいい家族に迷惑をかけたくない、心配させたくないというのもあったかもしれんけど……。だけど、現実を、先を見んとな……」(祖父)

 会うことができなかった初ひ孫に祖母はしみじみと……。

「ほんまに残念やわ。息子(容疑者の父)に、“うちの墓に入れたってな”と言ったら、“わかった”と……。まだ遺骨は戻ってきてはないけど、戻ったら冥福を祈るだけですよ。

 孫が警察に連れていかれたあと、母親が心配して警察に勤める(母親の)弟に相談に行ったんよ。そしたら、“もみ消しなんかはできん。きちんと罪を償ったほうがいい”と言われたみたい。

 私もあとは孫娘にちゃんと罪を償わせることが肝心やと思っています」

 ただし、80代半ばの祖父母が元気なうちに、容疑者が家へ戻ってこられる保証はない。

「そやなぁ……。頑張って東京の裁判へ行くか、刑務所の面会に行こうと思っています。本人はまだ若いしやり直せると思うから、家族として精いっぱい支えていこうとね」(祖母)

 亡くなった赤ん坊の父親には、北井容疑者や、その家族の心の叫びが聞こえているのだろうか──。