(左から)沢尻エリカ、ピエール瀧、木下優樹菜、伊藤健太郎

 不祥事を起こし謝罪する芸能人たち。でも“謝罪”だけですむほど世の中は甘くない。スポンサー、テレビ局、映画会社……何億円とも報じられる違約金の“真相”とは──。

やらかし芸能人の違約金

 芸能人の不倫や薬物、交通事故が報じられたとき、セットで話題になるのが“莫大な違約金”──。しかしマスコミ報道で取りざたされる金額は、前例にならってメディアが産出する憶測にすぎない。そもそも違約金とは、なんなのか。“やらかし芸能人”に課せられたお仕置きの真相に迫ってみよう。

 今年の10月、車を運転中バイクと衝突。男女2人にケガを負わせながらも立ち去り、警視庁に逮捕された俳優・伊藤健太郎。ドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系)が映画化もされ一躍、大ブレイク。そんな伊藤が起こした不祥事に衝撃が走った。

「事務所を移籍してわずか1か月後の出来事で、違約金は5億円とも言われています。CMなどの多くの契約は前の事務所と結んでいるので、支払い責任は前事務所にあります。ですが、事故を起こした車を伊藤にプレゼントし運転を許可したのが現事務所ということを報じられるなど、所属タレントの管理が悪いとして、前事務所が裁判に持ち込む可能性も高い。金額が大きいですからね」

 と分析するのは、芸能界のご意見番・石川敏男レポーター。たった2日でお蔵入りしたCMもあり、ポスター代など販促物のような費用もすべてが無駄に。こうなると違約金は、契約金の倍額以上を請求される可能性もある。事故をきっかけに、今まで出てこなかった仕事現場での悪評も取りざたされ、伊藤にとって“泣きっ面に蜂”となった。

“自らの集大成”としていた大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK)の放送開始を前に、“逮捕”されたのが沢尻エリカ。昨年11月、合成麻薬MDMAを含む粉末を所持。麻薬取締法違反の容疑だった。急きょ代役が発表され、収録ずみの10話分を撮り直すドタバタ劇に発展─。

CM、ドラマなどの違約金が5億円とも報じられていますが、所属事務所のエイベックスがすべて肩代わり。事実上の引退に追い込まれましたが、復帰は確実。実際、映画『ヘルタースケルター』などでタッグを組む蜷川実花監督と復帰作に向けて企画が進んでいるという噂もあります」(石川レポーター、以下同)

 大河ドラマでは、昨年の『いだてん』(NHK)の放送期間中に麻薬取締法違反で逮捕され、代役が立てられたミュージシャン・俳優のピエール瀧も思い出される。

「電気グルーヴの活動と並行して個性派俳優としても大活躍。ディズニー映画『アナと雪の女王』にも声優として出演。活動の幅が広いので、一説によると違約金は5億円から10億円と高額。やはりディズニー映画の違約金が高かったとも報じられています」

 しかし来年には、映画で復帰が決定。捨てる神あれば、拾う神あり、ということか。

同じ不倫でも内容によって!?

 クスリではなく、下半身の不祥事で“どん底”に落ちたのが東出昌大。女優・唐田えりかとの不倫が発覚し、今年8月、妻の杏とも離婚。CM4社の違約金などが、およそ2億円と言われている。

東出昌大

「東出の不倫騒動が発覚して以来、1人で3人の子どもを育てる杏のイメージはうなぎのぼり。CM本数もさらに増えました。ただ“落ちた”東出は芝居がうまい。我慢していい仕事を積み重ねていけば、返せない金額ではない」

 長澤まさみの助け船もあって、映画『コンフィデンスマンJP』の続編への出演も決まっている。ピエールや伊藤に比べて、復帰が決まっているだけいいのかも。

 同じ女性問題でも、復帰に疑問符が投げかけられているのが、お笑いタレント・アンジャッシュの渡部建レギュラー番組やCMに対する違約金が1億円と報じられた

 大みそかの放送が恒例となった『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)の『笑ってはいけない』シリーズに、渡部の出演が報じられたが、

「過去には“アパホテル不倫”の袴田吉彦、“4WD不倫”の原田龍二たちも出演。この番組は、不倫タレントの禊の場と言われてきました。しかし、多目的トイレで裸になって笑いをとるような演出があるとするなら、グルメなセレブキャラで売ってきた彼にプラスに働くのか─。

 この番組で頑張れば頑張るほど、けなげに夫を支えてきた妻の佐々木希のヒンシュクを買い、夫婦関係に亀裂が入るのではと心配しています」

 ちょっとした“お遊び”が取り返しのつかない騒動になることもある。2017年、17歳の女子高生との飲酒及び不適切な関係を持ったとして書類送検された俳優・小出恵介。示談が成立、不起訴処分となったが、小出は無期限活動休止。裁判所に出された資料によると、当時の所属事務所への負債額が5億3305万円ということがわかった

「ハニートラップだったという説もありましたが、大阪だからマスコミの目も少ないと思って、はっちゃけちゃったんでしょうね。未払いの報酬と相殺することで違約金はアミューズが清算。今年から活動も再開して、復帰に向けて動き出しています」

小出恵介

事務所を味方につける?

 吉本興業の“やらかし芸人”で明暗を分けたのが、『雨上がり決死隊』の宮迫博之と『チュートリアル』の徳井義実のふたり。

徳井義実

「宮迫は闇営業問題で去年、レギュラー番組を降板。違約金5億円ともいわれましたが、所属事務所と仲違いしながらもYouTuberとして成功。3年くらいで違約金を払い終えるでしょう。ただし、地上波復帰は難しいかな。後ろ盾を公言していた明石家さんまは“YouTubeは敵”と公言してはばからない。テレビ局との橋渡し役になるはずのさんまから、どうやら怒りを買ってしまったようです」

 一方の徳井は去年、所得の無申告を国税局から指摘され、芸能活動を自粛。追徴金は自身で払ったものの、CM打ち切りやレギュラー番組の再編集などで数億円といわれる違約金については、吉本興業が徳井の肩代わりをすることで復帰への道筋を立てた。

徳井は吉本の言うとおりにしたから、違約金も肩代わりしてもらい復帰もかなった。そこが宮迫と違う。自粛中に徳井を支えた女性との結婚もありそう。そうなれば、ナイナイの岡村隆史のように好感度もV字回復するでしょう」

 そんな中、芸能界復帰が難しいとみられているのが、“ユッキーナ”こと木下優樹菜。去年の11月、実姉が勤務していたタピオカ店の経営者を自身のインスタで恫喝したことが明るみになり、謝罪して活動を自粛。出演していたCMなどに対し、違約金は1億円とも。今年7月、芸能活動を再開したが、その5日後に芸能界からの引退を発表してファンを驚かせた。

「いろんな男性との不倫関係が噂されましたが、元夫のフジモン(藤本敏史)も、事務所もその“真実”を知っている。知らないと思っているのは木下本人だけ。隠し通すつもりの彼女は、信頼がおけないと事務所をクビになってしまいました。また、9月から新しいインスタで個人活動を始めましたが、復帰したら男性関係のスキャンダル流出は必至です。子どもへの影響を考えたら、難しいでしょう」

2020年9月、直撃取材を受ける木下優樹菜

好感度急降下

 オトコ関係で痛い目を見たのは、2016年“ゲス不倫騒動”を巻き起こしたベッキーCM降板などで違約金は5億円にものぼったという。

「『ゲスの極み乙女。』のボーカル・川谷絵音との不倫をスクープされ、記者会見を開き“ただの友達”であると“偽証”して大失敗。

 本来なら事務所の社長同席で会見を開くのに、自分の言うことを聞いてくれるマネージャーだけに相談して記者会見を開いちゃった」

 なんとベッキーは、この違約金を事務所に頼らず自腹で払ったという。これが彼女なりのケジメのつけ方!?

 そして2019年、女子高生に対し強制わいせつを行った容疑で書類送検され、事務所から契約解除が言い渡された『TOKIO』の元メンバー、山口達也CMなどの違約金は4億円と言われる。

2018年、山口達也が女子高生への強制わいせつ容疑で謝罪

「来年4月に設立される城島茂、国分太一、松岡昌宏の会社『株式会社TOKIO』に山口もスタッフとして入る予定らしい。もし、酒気帯び運転をして捕まっていなかったらスタッフではなく……」

 そうなれば『TOKIO』の冠番組『ザ!鉄腕!!DASH!!!』(日本テレビ系)にも山口はスタッフとして参加するかも。

「いずれ世間が納得してくれたら、長瀬智也も合流して『TOKIO』再結成も夢ではないかもしれない」

 身から出た錆とはいえ、それぞれが抱えるペナルティー。でも結局は復帰できる芸能界、やっぱり甘すぎ?

違約金ってどうやって算定する!?

 タレントとスポンサーなどとの契約で語られる「違約金」は、大きく分けて映画やCMなどをもう1度、撮影するためにかかる「実費」と、続けていたら得られたはずの「逸失利益」の2つ。

後者は上映中止やイメージ毀損などによって得られたはずの売り上げがどれだけ減ったのか。細かく試算することは難しく、多くの場合は契約書の損害賠償の条項に一律の金額を明記するのが一般的

 こう話すのは、芸能事務所の契約書作りにも携わっている高橋裕樹弁護士。実際にはタレント相手に裁判を起こすと企業イメージが悪くなるので、請求しないケースもあるという。では、違約金が発生する線引きはどこなのか?

 伊藤健太郎の『とんかつDJアゲ太郎』は不祥事が起きても公開に踏み切った。しかし、新井浩文の主演映画『善悪の屑』は公開中止に。このあたりの線引きが日本の場合、はっきりしていない。

ハリウッドでは、出演者に不倫や薬物問題が起きても公開します。日本の場合は、犯罪かどうかで線引きすると法律上はスッキリすると私は考えています」(高橋弁護士・以下同)

 つまり、薬物や交通事故によるトラブルは法律上、問題があるのでアウト。逆に不倫や金銭トラブルは犯罪ではないのでセーフということ。

 CMの場合、不倫はイメージ毀損にあたるかもしれない。近藤真彦もあの騒動でCMが切られても致し方ない。だが、妻も許しているのなら無期限の芸能活動自粛は重すぎると高橋弁護士は話す。

競泳男子の五輪代表に内定している瀬戸大也選手の不倫騒動に至っては、9月末日付で所属先との専属契約を解除。犯罪行為をしたわけではないのに、契約の解約条件に当たるのか……。瀬戸選手が不当だと訴えると、もめる可能性もあったはずです

 ケースによって対応が定まらない現状だが、はっきりとラインが引かれた例もある。

 小出恵介の事件は「18歳未満の夜中の連れ回しは禁止」とし刑罰を定めている大阪の条例に違反していた。もし山Pが今回、問題になった未成年との飲酒&連れ回しを大阪でしたら書類送検。東京の条例では刑罰があるのは相手が「16歳未満」だったため、山Pは条例違反での摘発を免れて違約金は発生しなかった

単純に違反したかそうでないのか。CM、ドラマ、紙媒体、音楽配信などそれぞれのメディアごとにガイドラインを作るべきだと思います

最近の“やらかし”芸能人の違約金

■ピエール瀧【5億〜10億円】CM、ドラマ、映画と数多く出演。大河ドラマの撮り直しや、ディズニーの『アナと雪の女王』で声優の降番が莫大な金額の原因とも

■新井浩文【5億円以上】バイプレーヤーとしての出演が多いので、その作品の配信や販売が中止になると、もっと高額な違約金になる可能性もあるという

■沢尻エリカ【5億円以上】CM、ドラマ、映画など主演での作品が多く、CMだけで3億5000万円超えとも。大河ドラマ10話分の撮り直しもかなりの負担増に

■宮迫博之【5億円以上】闇営業が発覚した当時、7本ものレギュラー番組を抱え、声優や俳優の出演も予定していた宮迫。テレビ復帰を熱望しているが……

■小出恵介【5億3305万円】NHKの主演ドラマや、ネット配信のドラマが放送中止や撮り直しになった違約金を事務所が肩代わりし、その額が裁判の手続きで発覚

■伊勢谷友介【5億円】出演映画が中止にならないという“追い風”もあるが、事務所から契約解除されて支払い責任を彼個人が背負うとも……。

■徳井義実【3億円】1年の謹慎後、地上波で復帰。視聴者からのクレームもあったというが、事務所のバックアップもあるので、支払いは安泰!?

■東出昌大【2億円】4社のCM契約が解消され、杏と離婚。しかし映画やドラマの出演オファーは届いているというので、支払いという“禊”に専念!?

(取材・文/KAPPO INLET GROOVE)