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 世の中には健康に関するあらゆる情報があふれていて、いったい何をどこまで信じればいいのか、見極めるのが難しいと感じている人も少なくないはず。そこで、週刊女性では6人の名医たちに、今こそ知りたい、正確な健康情報をたっぷり伺いました! 

【最強の医師団】
◎オックスフォードで難病の特効薬発見に貢献:下村健寿先生
 福島県立医科大学病態制御薬理医学講座主任教授。英オックスフォード大研究員時代に新生児糖尿病の特効薬の発見に貢献。

​◎最先端の関節痛再生医療の第一人者:繁田雅弘先生 
 東京慈恵会医科大学精神医学講座主任教授。森田療法を駆使した認知症の早期治療で、高い成果を上げている。

◎世界標準の糖尿病研究の旗手:坂本昌也先生
 国際医療福祉大学医学部教授。三田病院内科部長。高血圧、糖尿病、脂質異常症のトリプルリスクを診るスーパードクター。

◎公認心理師の資格も持つ慢性痛治療の専門医:北原雅樹先生
 横浜市立大学附属市民総合医療センターペインクリニック内科診療部長。トリガーポイント療法「IMS」の第一人者。

◎低侵襲肝胆膵手術の“神の手”:三澤健之先生
 帝京大学医学部外科学講座教授。パーフェクトな手術の手技は、膵臓・胆のう摘出手術の“神の手”と呼ばれている。

◎AIを駆使する内視鏡診断治療の先鋒 :炭山和毅先生
 東京慈恵会医科大学内視鏡医学講座主任教授。AIを駆使した内視鏡手術の達人で早期の胃・大腸がんも内視鏡で摘出。

 睡眠・認知症の新常識

■脳トレで認知機能改善は期待できない

 下村健寿先生と繁田雅弘先生によると、「脳トレは楽しめないと効果が出にくい」とのこと。

 2010年に1万1430人を対象に行われた調査の結果、残念ながら脳トレに認知機能の改善効果は認められないという結論が。その一方で、「楽しい脳トレなら認知機能によい効果が期待できる」という意見を持つ科学者たちも多い。そのため、趣味の一環として楽しみながら脳トレに励むぶんにはいいが少しでも苦痛ならやる意味なしというのが下村先生のアドバイス。

 また、認知症が専門である繁田先生によると、認知症の予防には、家族と同じ時間を過ごし、コミュニケーションを図ることが効果的だとか。脳トレも家族みんなで楽しめれば、効果が期待できる。

■自信を失うと認知症のような状態になる場合が

 人の行動にはメンタルの状態が大いに影響を及ぼすもの。

高齢者に対して些細な指摘は避けるべき。何かしらの事情で自信を失った状態にあると、実際には認知症でなくても認知症のような症状が見られることが少なくありません。物忘れが多くなった高齢者に心配した身内がこまごま指摘することで自信を喪失させてしまい、かえって今までできていたこともできなくなって認知症のような状態になってしまう場合もあります(繁田先生)

 誰しも年をとるにつれて物忘れが多くなるのは当然のこと。厳しく接しすぎてもよくないと心にとめておいて。

■ガンコな自信家ほど認知症になりやすい

 極端に頑固だったり自信家だったりすると、自分では認知症の症状に気がつかない傾向がある、と繁田先生。

 特に、「自分は認知症にはならない」と自信満々な人ほど要注意。

周りからの意見に耳をかさないと受診も遅れがちになり、その結果、いつの間にか認知症の症状が悪化する可能性がいちばん高いんです。たとえ認知症になっても早めの段階で気づけば、衰えた機能を補う生活習慣を身につけることができ、生活の破綻も起こりにくくなります。自分の身体の変調を柔軟に受け入れる素直な心と、認知症に対する正しい知識を持つことが大切です」(繁田先生)

■毎日同じ時間に起きると長寿&脳力UP

 健康のためには早寝早起きが大切だとよく言われるけれど、安定した生活リズムを作れていれば、仮に昼夜が逆転していても何ら問題ないといいます。

「早い遅いよりも、睡眠の時間帯がコロコロ変わることのほうが脳や身体への負担が大きく、健康面で悪影響を及ぼします。中でもいちばん大切なのが起床時間。例えば仕事で就寝時間が遅くなった場合、多少寝不足でもいつもと同じ時間に起床するほうが健康のためになります」(繁田先生)

 起床時間を一定に保つと、脳の働きも活発になり、いいことずくめ。

 さらに、「質の悪い睡眠を続けていると、生活習慣病のリスクを高める可能性があります。夜の睡眠を深く安定させるには、適切な仮眠を取り入れることが効果的。ポイントは、仮眠時間を15分〜20分間程度にすること。1時間も眠ってしまうと夜の睡眠が浅くなり、かえって悪影響。同じ理由で遅い時間の仮眠もおすすめできません。仮眠は遅くとも15時までに」(繁田先生)

■血圧の大敵は睡眠不足だった!

 高血圧は心筋梗塞や脳梗塞、脳出血にも直結する健康長寿の大敵。血圧を下げるために、まずは食事の塩分を控えることをすすめられるけれど、実は睡眠不足も高血圧の大敵なのだそう。食事を外食やコンビニ食に頼ることが少なくない現代、減塩食を徹底するのはかなりハードルが高いもの。

「血圧の大敵は実は睡眠不足。解消すれば、自然と血圧が下がってきますよ」(坂本昌也先生)

がん関連の新常識

■日光浴はマイナス要素のほうが多い

 ビタミンDは骨の成長や筋力強化に大きな役割を果たすことに加え、最近では免疫向上や糖尿病予防などの役割を担うことが判明した、健康長寿に欠かせない栄養素。日光浴がビタミンDをつくると言われるが……。

「ビタミンDは日光浴でなくサプリメントなどで補うことも可能です。むしろ紫外線の照射量が増加傾向にある今の時代、紫外線による皮膚がん発症の可能性を考えると弊害のほうが多いくらいです」(北原雅樹先生)

■豪快な人ほどがんに負けない

 多くのがん患者の治療にあたってきた三澤健之先生は、同じ病状でも神経質な人とおおらかな人では後者のほうが生存率が高くなるケースが多い、と指摘する。

「数字によるエビデンスがあるわけではないものの、小さなことにこだわらず、豪快で楽観的に治療できるほうが病気に強いことは間違いない」(三澤先生)

 とはいえ、性格を変えることは難しいし、自分の身体の状態を不安に思うのは当然。でも、心配するのは医者の役目と割り切って、できるだけ「病気は治る」「薬は効く」と信じて治療を受けることも、病に打ち勝つための大切な要素といえそう。

がん関連の新常識〜後編〜

■野菜を食べればがんを防げるとは限らない

 食べ物とがん予防に関するさまざまな説は世にあふれている。でも実際は、これを食べればいいという食材はない。むしろ、「好きなものを食べすぎないことのほうが重要です」というのは、炭山和毅先生。

がん予防として食事の面でまず避けるべきことは、暴飲暴食。特に脂質と糖質のとりすぎには要注意。ただし、脂質も糖質も身体に必要な栄養素なので、ゼロではなくバランスよくとること。野菜も絶対がんの予防になるとはいえないものの、食物繊維が豊富。ただ、食物繊維は通常の食事から十分に得ることは難しいので、バランスを考えると『積極的に野菜をとる』くらいの意識でちょうどいいでしょう」(炭山先生)

■口腔ケアはがん予防につながる

 前出の三澤先生は「舌を磨けば大腸がんの予防につながります」と主張する。

「例えば、口腔ケアのひとつである舌磨き。これで洗い流される「舌苔(ぜったい)」は、食べかすや口腔内の粘膜と口の中の細菌が固まってできたタンパク質です。適切にケアしないと、細菌を含んだ舌苔が消化管を通り、最終的には腸まで侵入。免疫力の要ともいわれる腸内フローラを乱す原因になる可能性もあります。口腔ケアが健康に寄与しないわけがありません」(三澤先生)

 がんに限らず、病気全般の予防のためにも正しい口腔ケアはマスト。

(構成/中村明子) 

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