五郎丸歩選手

 腰をかがめて、まるでお祈りをするかのように両手を前に組む。その後、蹴り上げられたボールは美しい放物線を描き、ゴールに吸い込まれていった。

 2015年に行われたラグビーワールドカップで、大金星を挙げた南アフリカ戦で24得点、1次リーグの計4試合で58得点を記録するなど、日本代表の躍進そして国内の“ラグビーフィーバー”の一翼を担い、流行語にもなった男。ラグビー元日本代表・五郎丸歩が今シーズンをもっての現役引退を発表した。

「12月9日にスポーツ紙各社によるリリース、また本人のインスタグラムで現役引退が発表されました。即引退ではなく、来年1月16日に開幕するシーズンをもっての引退となります。開催国かつ初めてのベスト8進出という記録を成し遂げた、2019年のワールドカップでは日本代表入りを逃しましたが、今年1月からはじまったシーズンでは、リーグ記録に並ぶコンバージョンキックを11本成功するなど、以前と変わらぬキックの精度を見せていました」(スポーツ紙記者)

 そう、五郎丸といえばプレースキック。冒頭のキック前のポーズは、ラグビー初心者にも人気を博し、2015年の新語・流行語大賞にノミネート。“五郎丸(ポーズ)”としてトップテンに選出された。いつもキック前に精神統一のためにしてきた、このルーティン。しかし、彼には別のルーティンもあった。それは意外な場所で……。

葉山にある“社交場”にナゼ、彼が

「五郎丸さんはよく来てましたよ。毎日のように来るときもあれば、日が空くこともありましたけど。でもここ数年は通っていたんじゃないかな」

 そう話すのは、とあるジムの会員男性。昨今のフィットネス・筋トレブームにより、都心だけでなく、日本全国いたるところにジムができた。社会の高齢化が進み、介護予防のニーズも高まっているため、場所によっては“高齢者の社交場”のようになっているジムも少なくない。

「あれだけの有名なトップアスリートじゃないですか。だからなんでこんなジムでトレーニングしてるんだろう、彼のトレーニングになるようなジムかな? って思って見ていましたよ(笑)」(同・ジム会員の男性)

 場所は別荘地としても知られる神奈川県葉山。葉山は、総人口に占める65歳以上の割合が30%を越えるなど高齢化率の高い町で、2045年までには10人に4人が高齢者になると見込まれている。その葉山にあるジム『F』は土地柄もあり、高齢者が非常に多い。会員はほぼ高齢者といえるほどで、地域の社交場としても機能していた。

 そこに混じり、通っていたのが、身長185センチ、体重100キロの五郎丸だった。ジムはランニングマシンが2台、エアロバイクが2台というような、一般人用のジムとしても決して大きいわけではなく、ましてやアスリートが使う場所には到底見えない。

マスクをしてランニングしたりしていましたね。マスクといってもコロナ禍で付ける布や不織布のマスクじゃなくて、おそらく低酸素トレーニングのためのものだと思います。コンディションを維持するような強度の低いトレーニングをするときに、ここを使っていたんじゃないでしょうかね。静岡のチームにいたけど、このあたりに住んでたみたいだから、チームから離れてるときに来てたのかな。

 そういえば去年のワールドカップは解説とかやってましたけど、その期間中も来てましたよ。テレビの仕事で身体を動かせないから、家の近くで多少でもって感じだったんですかね。やっぱり年寄りでもわかるくらい有名ですからね、話しかける人もいましたよ。でも、気さくに対応してくれてたと思います」(同・ジム会員の男性)

 ジムに五郎丸が訪れるようになった経緯について問い合わせたが、

「会員様の個人情報については、お答えしかねます」

 とのこと。ちなみにキック前のお祈りのようなルーティンは、現在はやっていない。現役引退で、お年寄りとの交流ルーティンも無くなってしまうのか……。最後のシーズン、期待しています!