全国の新規感染者数が1日あたり3000人に迫る。いつ、どこでコロナに感染してもおかしくない今、ウイルスに対抗できる免疫力を身につけておくのは必須! そこで今日からすぐできる10の方法を免疫学の権威に聞いた。

※写真はイメージです

「誰もが感染している可能性があります」

 12月9日の会見で、日本医師会の中川俊男会長が警鐘を鳴らした。毎日数千人単位で新型コロナウイルスの新規感染者が増加している。北海道や大阪府、愛知県などでは病床数が逼迫(ひっぱく)。医療従事者は心身の疲労がピークに達しており、医療崩壊の危機が迫る。

「新型コロナに“かからない”“かかっても発症させない”“重症化させない”。そのためには免疫力を高めることが必須です」

 そう話すのは免疫学の権威、順天堂大学医学部の奥村康特任教授だ。

「免疫力は、私たちの身体の中にある免疫細胞の働きによる防衛システム。免疫細胞は体内にウイルスや病原体が入り込まないようにパトロールしたり、侵入を許したらそれを攻撃する働きがあるんです」(奥村教授、以下同)

 免疫力が下がると、病原菌を攻撃する細胞の力が弱まる。攻撃できなければ、病気にかかりやすくなる。

「風邪や普通の病気でも免疫力が下がれば、重症化のリスクが高まります。免疫は20歳をピークに下がり続け、高齢になればさらに低下します。免疫が高い人は下げないこと、低ければ上げることが大事」

 コロナ禍を生き残るためにはマスク着用や手洗いなどはもちろんのこと、自己免疫を上げて対抗するしかない。

 そこでお金も時間もかけずに、毎日の習慣に組み込むだけで免疫力がアップする方法をレクチャーしてもらった。

 まず、最も肝心なのが体温を上げることだ。

「免疫力は身体の中心部の体内温度が37度以上のときに最も活発に活動し、36度以下で弱くなります。皮膚体温で考えると、免疫力強化には36・5度をキープすることです」

 身体を温めるためには、少し早めの速度で歩くウォーキングがおすすめだという。息が上がるほどの激しい運動では免疫が上がりすぎて、逆に下げようと細胞が働くため逆効果。スポーツ選手らが体調を崩しやすいのはそのためだ、と奥村教授。

 癒し効果のある森林浴も免疫アップには欠かせない。森の中なら密も避けられ、気分転換にもなるだろう。

ストレスと不安が免疫力を下げる

「太陽の光に当たることで自律神経が整い、免疫力がアップするので1日15分ほど日光浴もしましょう」

 身体を動かすだけでなく、毎回の食事も大切だ。

「特にしっかり噛むこと。ひと口あたり30回以上は噛みましょう」

 噛めば噛むほど身体が熱を作り出す量が増え、体温が上昇。免疫細胞の活性化につながるのだ。

 もっとも重要なのが睡眠だ。

「“何時間寝るか”よりも“寝るべき時間帯にしっかり寝ること”が大切です。午後10時~午前2時までの間は1日の中で免疫細胞の働きが最も低下します。この時間はしっかりと眠りましょう」

 この時間帯にストレスを受けたり、疲れをためたりすると病気になるリスクが高まる。不規則な生活や徹夜を繰り返せば、若者でも免疫力が低下するおそれがある。

 しっかり眠るためにはまず、入浴して身体を温めよう。

「湯船につかることで体温が上がり、血行の改善につながります。身体の内部を温めるためには40度ほどのお湯に半身浴で20分ほどじっくりと入ることです。肩が冷えると風邪をひいてしまうので、肩に熱いタオルをかけたり、浴室暖房をつけるなどして、お湯につかっていない部分も温めておきましょう」

 ストレッチやマッサージも血行の改善には効果的。

免疫細胞はリンパ液の中に多く含まれています。しかし、リンパの流れが悪くなると、免疫細胞の流れも悪くなり、必要な栄養素や酸素が身体中にいき渡らなくなります。結果、ウイルスや細菌が侵入したときに戦えず、病気になるのです」

 そこで鎖骨、首、胸の上、わきの下、脚の付け根、ひざの後ろ、足首などにある「リンパ節」をマッサージしよう。流れがよくなれば、免疫細胞は体内でスムーズに流れる。

「手軽な方法は爪もみです」

 爪の生え際にある「井穴(せいけつ)」というツボには神経線維が集中している。ここを刺激すると、自律神経のバランスが整えられ免疫アップに。

「爪の生え際を反対の手の親指と人さし指で挟んで10~20秒ずつ強く押します。1日2、3回を目安に行うこと。ただし薬指の爪には自律神経に強く作用する神経が集中しているため、逆に免疫が下がるおそれがある。避けたほうがいいでしょう」

 免疫を上げる方法を習慣化しても油断は禁物。奥村教授いわく、いちばんの敵は不安や心労なのだという。

「収束が見えないコロナ禍、感染や生活の不安、長引く自粛で気持ちが滅入ることも多いでしょう。不安やストレスを蓄積することでも免疫は下がるんです。趣味に没頭したり、音楽を聴いたり、歌ったりして余計なことを考えないこと。とにかく頭を空っぽにしてぼーっとしましょう」

 悪口を言って嫌なことは吐き出して、スッキリすることも重要だ。

「そして笑いましょう。笑えば笑うほど免疫力は上がります。お笑いのDVDを見たり、笑うふりをするだけでもいい。毎日、鏡の前でにっこりとする習慣を作りましょう。笑うだけで確実に免疫力は上がります」

 食品に頼る方法もある。

「腸内環境を整えてくれるヨーグルトは免疫アップには最適な食べ物。それに身を温めてくれるトウガラシやショウガは身体にもいいでしょう」

 奥村教授は訴える。

「大切なのは新型コロナのことばかりを気にしないこと。家族や友人を大切にし、直接会えずとも電話などで交流を深めていくこともコロナ禍を乗り切る術になります」

 いつ終わるかもわからないコロナの流行。過ぎ去ることを希望に、免疫アップにはげみたい。

免疫力が上がる10の習慣

【1】早歩きでウォーキング
【2】公園などで森林浴をする
【3】1日15分、日光を浴びる
【4】ひと口30回ほどよく噛む
【5】質の高い睡眠をとる
【6】40度のお湯で20分半身浴
【7】1日2~3回、爪もみをする
【8】ぼーっとする時間を持つ
【9】悪口を言うようにする
【10】よく笑うようにする