コロナの感染者が増え続けている今、年末年始の帰省を断念する人も多いだろう。しかし、再会を心待ちにしている実家の親を考えると、やっぱり帰りたい。帰省を決断した人のために、コロナ感染者の診療にあたっている医師に注意ポイントを聞いた。

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 2020年、全世界が新型コロナウイルスの猛威と戦ってきた。制限された生活の中で最大の癒しとなるのは、やはり家族との時間だろう。年の瀬が近づくいま、帰省を決意した人は、今がいちばん大事なとき。

「帰省の2週間前から感染予防を徹底することが大切です。忘年会の参加は控え、基本の予防対策を始めてください」

 と言うのは、コロナ患者の診療に携わる医師の林功先生。

「従来の感染対策を今1度、家族全員で心がけましょう。会話により飛沫(ひまつ)感染のリスクが高まるので、帰省前は飲食を伴う懇親会を控えてください。不特定多数の人との接触を減らすこと、そして人と会うときは、できるだけ1~2メートル離れたソーシャルディスタンスをとること」(林先生、以下同)

 マスク着用や手洗いうがいはもちろん、再三、注意喚起が促されている密閉空間と密集場所、人との密接を避けるのは必須。ただし、園や学校に通う子どもの行動を制限するのは行きすぎた面がある。

「子どもから大人への感染は少ないと言われていますが、ウイルスを持ち込む機会が多いのは事実。手洗い、うがいを徹底させてください」

 感染予防のほか、症状チェックも重要となる。

「できれば2週間前から、最低でも10日前から、発熱や風邪の症状がないかもチェックしましょう。症状がなければ帰省して問題ないので、この“10日ルール”は必ず守ってください」

 高齢の親や祖父母が感染を恐れていても、家族全員が2週間前から予防と症状チェックを守っていれば、不安を和らげられる。

微熱だと自覚症状のないケースが多いので、検温は毎日欠かさず行ってください。37・5度以上はコロナ有症状としてとらえ、37度以上なら注意深く経過観察しましょう」

乗り換えが増えると感染リスクがアップ

 帰省当日に気になるのは移動手段だ。

「何時間も同じ電車や飛行機に乗ったり、地下鉄やバスなどの乗り換えが頻繁にあると、当然ながら感染リスクは高まります。とはいえ、日本の公共交通機関からクラスターの報告はなく、危惧(きぐ)するほどのリスクではありません」

 感染リスクを少しでも抑えたいなら、換気ができる自動車移動がおすすめだが、そもそもマイカーがない人は……。

「公共交通機関を使うなら、いろんなところをベタベタ触らず、ソーシャルディスタンスをできるだけとる。おしゃべりは控えるように、お互いに気をつけてください」

 同じ電車に20分以上乗るのであれば、下車したときに手洗いをすることを徹底。公共の洗面所が不衛生な場合は、携帯できる除菌スプレーやウエットティッシュを持参しておくと困らない。常に柔軟に対応できるように準備することが大事。

帰省先の対策本部は? 連絡先をメモしておく

 帰省先に到着したらすぐ、入浴するべきとよく耳にするが、本当か?

「コートや上着を玄関で脱いで、ウイルスを室内に持ち込まなければ十分です。入浴までする必要はありません」

 ただし、帰省先の親や祖父母を安心させるという意味では帰宅直後の入浴は有効。食事については、

「お正月は大皿料理が多くなりがちですが、1人分ずつ取り分けた状態で配膳すると安心。おせちも同様です

 また、感染予防に欠かせない部屋の換気。寒いとつい怠りがちだが、3~4時間に1度のペースで行うと効果あり。

 万が一、帰省先で体調が悪くなったらどう対処すべきか。

「自宅が近くの場合は、症状が軽いうちに帰る判断をするのも一案。すでに熱が出てしまった場合は、帰省先の自治体の相談窓口に連絡してください」

 今のうちに帰省先のコロナウイルス対策本部や相談窓口を事前に確認しておき、万全の態勢で帰省の日を迎えよう。

(取材・文/飯田帆乃香)

《PROFILE》
林 功 ◎「林医院」院長。厚生労働省指定の診療・検査医療機関として発熱患者の診療・検査を行う。宿泊療養施設、PCR検査センターにおいても新型コロナウイルス感染症の診療に従事。