左から森本毅郎、ビートたけし、和田アキ子、関口宏

 高齢化社会が進む中、それはテレビ業界も例外ではないようだ。このところ、長年放送されてきた“長寿番組”終了のニュースが続いている。その裏で囁かれる、出演陣の「高齢化問題」。テレビの世界でいったい何がーー。コラムニスト・テレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

視聴率よりも視聴者層

『火曜サプライズ』(日本テレビ系)、『爆報!THEフライデー』(TBS系)、『メレンゲの気持ち』(日本テレビ系)など、このところ長年放送され続けてきたバラエティーの終了を知らせるニュースが続いている。

 コロナ禍の長期化によってアポなしロケが不可能になった『火曜サプライズ』のような不運もあれば、裏番組の『ザワつく!金曜日』(テレビ朝日系)との戦いに敗れた『爆報!THEフライデー』のような悲しい結末もあるが、最も業界内をザワつかせているのは、『噂の!東京マガジン』(TBS系)の終了。来年3月で約32年間にわたる歴史にピリオドを打つことになったのだが、視聴率は今なお日曜13時台の時間帯トップを叩き出しているだけにショックは大きい。

 ただ、業界内をザワつかせている最大の要因は、その理由にレギュラー陣の高齢化が挙げられていること。確かに森本毅郎(81歳)から、井崎脩五郎(73歳)、清水國明(70歳)、山口良一(65歳)、笑福亭笑瓶(64歳)、風見しんご(58歳)、深沢邦之(54歳)、さらにナレーターの乱一世(70歳)まで高齢者で固められている。

 芸能界のベテランであり、番組の功労者である彼らには、それなりの報酬が必要であり、しかも他番組と比べても明らかに人数が多い。コロナ禍で広告収入が激減する中、ベテランのリストラが最も手っ取り早い対処方法であることは、一般企業と同じ論理であり合点がいく。

 しかし、それでも民放各局は、かつてなら視聴率優先の方針を採ってきただけに、やはり「今春に視聴率調査がリニューアルされた影響が大きい」と見られている。これによって各年齢層の視聴動向がわかりようになり、各局は多くの広告主が求める13歳~49歳の視聴者層に向けた番組制作をはじめた。

 TBSはもう少し上限年齢が高く13歳~59歳を「ファミリーコア」と呼んでターゲット化しているが、高齢出演者の多い『噂の!東京マガジン』の視聴者層とは一致しないため、「高視聴率のメリットは限定的」「番組終了もやむなし」という声が聞こえてくる。

 同じTBSでは『爆報!THEフライデー』も高齢者の視聴者層がメインの番組。MCの太田光(55歳)、田中裕二(55歳)、田原俊彦(59歳)は『噂の!東京マガジン』ほど高齢ではないものの、視聴者層が「ファミリーコア」とは真逆の中高年層向けであることが終了する理由の1つと言われている。

『サタプラ』『ブランチ』の土曜を踏襲するか

 そんな流れがあるだけに、『噂の!東京マガジン』の前に放送しているTBSの日曜朝から昼の番組にも、終了やテコ入れの噂が絶えない。『サンデーモーニング』は関口宏(77歳)や張本勲(80歳)を筆頭にコメンテーターも高齢者ぞろい。『サンデージャポン』はレギュラーコメンテーターのテリー伊藤(70歳)、デーブ・スペクター(年齢非公表だが推定60代中盤)ら、『アッコにおまかせ!』はMCの和田アキ子(70歳)、峰竜太(68歳)と、高齢層の視聴者が好む人選となっている。

 ただTBS系列の番組でも、1日前の土曜朝から昼に目を向けるとムードが一変。今年3月で小堺一機(64歳)がMCを退き、丸山隆平(37歳)と小島瑠璃子(26歳)の2人体制になった『サタデープラス』(MBS制作)、佐藤栞里(30歳)がMCを務める『王様のブランチ』。どちらもファミリーコアにぴったりハマる情報番組であり、だからこそ日曜朝から昼も土曜にならった編成に切り換えても不思議ではないのだ。

 もちろん放送する番組のすべてがファミリーコア重視でなければいけないのではなく、実際に「報道番組は例外とみなすべき」という声もある。しかし、「そもそも報道番組が無駄に多すぎる」「ゴールデン・プライムタイムまで報道番組はいらない」「これは今まで視聴率偏重だった弊害だ」などの厳しい指摘もあるだけに、報道番組だから安泰というわけではないだろう。

ビートたけし

 たとえば、常に時間帯トップの視聴率を叩き出している土曜夜の『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)も安泰とは言えない。中高年層向けのニュースが中心である上に、MCは高齢のビートたけし(73歳)。視聴率より視聴者層を重視する流れがあるだけに、安住紳一郎アナ(47歳)をさらに押し出す情報番組への移行も考えられる。

 他局でも、高齢出演者や高齢視聴者層の問題で終了や移動が噂される番組は少なくない。スポンサーの中にも収入減に悩まされている企業があり、広告宣伝費の見直しによって民放各局の営業スタッフは、軒並み苦戦を強いられているという。

 とりわけ高齢出演者と高齢視聴者層の番組は、「視聴率がよくても広告が取れないケースが増えた」という声をよく聞く。民放各局は営利事業である以上、収益の上がらない商品=番組をそのままにしておくことはできず、「大物MCや長年の功労者だから」という理由だけでは延命できなくなっているのだ。

「視聴率」でも「技術や実績」でもなく、「高齢」が理由で番組が終了してしまうという現実に寂しさを覚える人は少なくないだろう。ましてや日本はさらなる高齢化社会に突き進んでいる真っ最中。たとえば、「低予算で高齢出演者の負担が少ない番組形式にリニューアルしつつ、BSなどで放送を続ける」などの落としどころがあってもいいのかもしれない。

木村隆志(コラムニスト、テレビ解説者)
 ウェブを中心に月30本前後のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。各番組に情報提供を行うほか、取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。著書に「トップ・インタビュアーの「聴き技」84」「話しかけなくていい!会話術」など。