不倫の話題が絶えない芸能界において、「憧れの夫婦」として幅広い世代から支持され続けているヒロミさん(55歳)と松本伊代さん(55歳)夫婦。ともに50代となり、結婚27年目を迎えた今も、その仲よしぶりはメディアでたびたび話題にのぼるほどだ。

「俺なんて、そんなたいした夫じゃないから」と苦笑いするヒロミさんに、夫婦論をあえて尋ねてみた。

ヒロミ 撮影/佐藤靖彦

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 結婚してるのに、まだ若いからって遊んでるような後輩に、俺たまに言うんだよ。「結局、お前が年をとったとき、まともに相手をしてくれるのは奥さんしかいないんだぞ」ってね(笑)。

 最近は、不倫や浮気に対して、ものすごく厳しい世の中になったよね。芸能界の不倫は本当に大騒ぎになって仕事までなくしちゃうけど、一般の家庭でも決して珍しいことではないと思う。

 俺だって、若いときは浮かれてたよ(笑)。ただ、男が外で女の子にちやほやされて勘違いして、家で奥さんを大事にしないのはダメだよね。年老いて自分が誰からも相手にされなくなって、あわてて奥さんのフォローをしたって遅いよ。そのときは奥さんのほうだって、もう旦那さんに嫌気がさしちゃってるだろうしさ。だから今のうちから、奥さんとたくさん話して、コミュニケーションをとっておいたほうがいいよね。だってそのほうが楽しいでしょ。

 こう言うと、なんだか俺が、さぞいい旦那さんをやってるみたいだけど、全然たいしたことしてないんだよ。

イライラすることもしょっちゅうあるよ

 ただ、昔からの習慣として、寝る前に「ママ、今日も楽しかったね」「ごはん食べに行ったあのお店、おいしかったね」とか、必ず何か言葉をかけるようにしてる。それ以外にも、ふだんから「コーヒー淹(い)れてくれてありがとう」とかね。

 あと、「ママ、今日もかわいいね~」って大げさなくらい、しょっちゅう言葉にするね。半分ふざけてんだけどさ(笑)。

 でもこれは、自分が経験した二度の大事故が影響しているのかもしれない。芸能界に入る前、18歳のときにバイク事故で本当に死にかけて、26歳のときにもテレビ番組のロケで大ケガしてるんだよね。

 そのせいか、28歳で結婚した当初は、「眠ったまま死ぬことだってある」「このまま、朝、目が覚めないかもしれない」っていう思いがどこかにあったんだよ。だから後悔しないように、いちいち言葉で伝えていたことが、もう今では習慣になっちゃった。
 
 それと、「一度、結婚したら離婚はしない」って決めて結婚したという覚悟もあったかな。

 自分の性格上、離婚したらまた再婚やら離婚やらを繰り返しちゃうだろうから、もし相手に不満が生まれたら、それをなんとかする方法を見つけようと思ったんだよね。離婚という選択肢がないのなら、危機を乗り越えること自体を楽しむとか、相手ができないことを自分がやるとか、工夫するしかないでしょ。

 うちの奥さんはアイドルだったし、独身のころは同居していたお母さんが家事全般してくれていたこともあって、料理とか掃除とかあまりできない(笑)。そんなの結婚前からわかっていたことだけど、ほんっとにできねぇんだなってびっくりすることもある(笑)。日ごろは仲よくしていても、小さなことでイライラすることも、そりゃしょっちゅうあるよ。

 そんなときもさ、仲よくしてる友達の憲ちゃん(※とんねるずの木梨憲武)から、「最近、伊代のネタないの?」って聞かれて、「そういえば、こないだこんなことあって参ったわー」って話してると、愚痴のつもりが、もう面白話になっちゃってるんだよ(笑)。「お前んちの奥さん、ほんと面白いな」って、話を聞いたみんながなごんでくれる。愚痴もそうやって浄化されるといいよね。

俺を上手に扱ってくれてるのかもしれないよね

 それでも何年か前、もうさすがに口もききたくなくなることがあった。ママが、いつも塩を入れている調味料入れに間違って砂糖を入れててさ。俺がステーキを焼いたとき、砂糖味になっちゃったんだよ。いま考えると大したことじゃないんだけど(笑)。

 でも、これまでの積み重ねがあったし、「この人ずっとこの調子だけど、70歳になってもこのままだとしたら俺、耐えられるのかな、許せるのかな」って真剣に考えちゃったのよ。

 もう、あきれて話す気もなくなったから、しばらく口をきかなかった。俺、腹立つとしゃべらなくなるからケンカにならないんだよね。もともと仕事以外では誰とも話さなくても平気な人間だから。

 そうしたらママもママで、「ねぇ、ねぇパーパ!」って毎日がんばって話しかけてくる(笑)。あの人も諦めない人だからね。最後のほうはもう、ふざけ半分で“口きかない遊び”みたいになってた (笑)。

 そんなことがありつつ、もう結婚してから27年。お互い50代になって、最近は「ママは生きててさえくれりゃいいよ」っていう境地だね(笑)。そう言うと本人は「やったー」なんて喜んでるけど。でも本当に、この年になると、家事ができる、できないなんてささいなことだと思う。毎日、話し相手になってくれるだけで、ありがたいよね。

撮影/佐藤靖彦

 そういう俺だってさ、ママからしてみれば不満は絶対あると思うよ。俺は趣味もやりたいこともたくさんあるから、ちょっと時間ができればすぐ遊びに行くしね(笑)。

「あした休みなの?」って聞かれて、「休みだけど忙しいんだよね」って答えたら、「ふーん」で終わりだけど、それは「あ、出かけるんだな」って察してくれてんだよね。

 俺の趣味のひとつがアウトドアで、知り合いを遊びに連れて行って楽しませたりすることが好きなこともわかってくれてるから、何も言わない。

「浮気しないで」なんて言われるより、趣味を制限されるほうが俺はずっときついね。ママはそういうことはまったく文句言わないから。「はいはい、好きにして」って感じで、俺を上手に扱ってくれてるのかもしれないよね。

 結局、夫婦ってお互いさま。100%の人なんていないもん。俺はね、家族みんな合わせて100%になればいいと思ってるの。

 息子たちふたりも、もう成人して意外と頼りになってきたから、それぞれ20%ずつ。俺は家族の責任者だから30%。残りはママ。そうやって足りないところを補い合いながら、合わせて100%になれば、家族は成立すると思う。

 わが家のルールをひとつあげるとしたら、子どもよりもママを大切にするということかな。

 息子たちが子どものころから「何か起きたら、パパはお前たちよりもまずママを助けるからな」と、あえて言ってきた。男は女を守らなきゃいけないんだっていうことを、それで感じてほしかったんだよね。息子たちに彼女や奥さんができたとき、守れる男になってほしいという思いもあるから。

老後のことも話すようになってきた

 夫婦関係がなんとなくうまくいかなくて悩んでいるという人は、初めは“仲よしごっこ”をしてみるといいんじゃないかな。俺だって、わざとらしく言ってるんだよ(笑)。

「ほんとママはかわいい!」「けさの目玉焼きいちばんおいしいわー」ってね。毎朝、まともな目玉焼き出てきたためしがないけど(笑)。

 そんなふうに言われてイヤな人はいないし、ふざけて“ごっこ”をしているうちに、だんだんそれが習慣になって楽しくなってくると思うんだよ。言われたほうも、真顔で「何言ってんの」「バカみたい」なんて返さずに、「ありがとうー」って素直にノッてあげてほしいね。

 夫婦の関係がよっぽど悪いわけじゃないのなら、相性なんてこともあまり深く考える必要もないと思う。だって俺、ママじゃなくても誰と結婚しても幸せにできる自信あるもん(笑)。相手次第じゃなくて、自分次第だよね。

 最近は、老後のこともふたりで話すようになってきたよ。

 俺は自然が好きだけど、ママはあんまり好きじゃないでしょ(笑)。「年とったら俺は山にいるから、ママは都会にいていいよ」って言うんだけど、今のところ向こうは「いや、一緒にいるよ」って言ってるね。

 そもそも夫婦で趣味もまったく違うし、先のことなんてわからない。もしかしたらこの先、年をとった彼女が、アウトドアに興味を持ち始めることだってあるかもしれない。そうなったらそうなったで楽しくなるしね。

 この先もなんとなくだけど、まぁ、うまくいくような気がしていますよ(笑)。

撮影/佐藤靖彦

(取材・文/植木淳子)

<プロフィール>
ヒロミ/1965年2月13日生まれ、東京都八王子市出身。血液型A型。1986年にミスターちん。デビット伊東らとともに「B-21 SPECIAL」を結成。'92年、27歳でマネージメント事務所『ビィーカンパニー』を設立。スポーツ全般を得意とし、芸能活動のかたわらトレーニングジム『Body Conscious 51,5 HIROMI BODY ART』を経営し、レーシングドライバーとしてもSUPER耐久レースに参戦するなど幅広い分野で活動。

<出演情報>
現在、『ヒロミと後藤のトークバラエティ!ウチのガヤがすみません』(日本テレビ系・毎週火曜23:59~)、『東大王』(TBS系・毎週水曜19:00~)、『ヒロミ・指原の“恋のお世話始めました”』(テレビ朝日・毎月第4金曜0:50〜/第1〜第3週はABEMAで配信)などでMCを務めるほか、レギュラー出演番組も『バイキング』(フジテレビ系・火曜11:55~)など多数。