コロナ禍で株価が急落したのはの2020年の春先。ところが、そこから株価は急上昇! 「おばけ株」と呼ばれる、大化けした株でもうかった人の話も耳にした。初心者とはいえ、その恩恵にあずかりたい。そこで「どうやったら買えるのか」をプロに聞いてみた!

※写真はイメージです

不景気だけど実はバブル!?

 新型コロナウイルスの感染拡大で景気の低迷が続いている。冬のボーナスも前年比マイナス、それどころか支給を取りやめる企業も少なくないなど、各家庭のお財布事情にも如実に影響が。

 そんな中、実は、コロナショックで急落した株の反発上昇、いわゆる「おばけ株」などの恩恵を受けて、けっこうトクした個人投資家も少なくないのだとか! 景気は悪いのに株で利益が得られるとは、一体どういうことか、資産運用に精通する公認会計士の足立武志さんにその理由を伺った。

「コロナ禍による景気の悪化に伴って、世界各国で大規模な金融緩和が取り入れられました。その影響を受け、今の株式相場は景気実態と株価が乖離(かいり)した、いわゆるバブルの状態。景気が悪ければ株価も上がらないという従来の考え方は、今の株式相場には当てはまらないと考えておいたほうがいいでしょう」(足立さん、以下同)

 つまり今から株を始めるなら、景気と株価は別物だと認識しておかないと、上昇相場の波に乗り遅れてしまう!

短期なら成長株、長期戦狙いなら出遅れ株

「とはいえ、実態のないバブル景気であるがゆえ、株価が安定していないのも今の相場の特徴。また、業績不振で倒産する企業も相次いでいるように、どの株も一律上がっているわけではなく、業種、銘柄によって上がり下がりもバラバラですから、どの株を買っても勝ち抜けられるというわけではないことを肝に銘じたうえで、取引を行う必要があります」

 では、数ある銘柄の中からこの先、利益が期待できる株を選ぶには、どのような視点で選べばいいの? 足立さんは、大きく2つのカテゴリーに分けて購入する銘柄を検討している。

「カテゴリーのひとつは、コロナ不況の影響を受けない、またはプラスの影響を受けている業種。『成長株』とも呼ばれ、2〜3月のコロナショック前の株価を超えるほどの高値をつけた銘柄です。そして、もうひとつが、コロナで業績が落ち込んでいる旅行会社・航空会社などの業種。こちらは『出遅れ株』と呼ばれ、いまだコロナ禍前の株価には回復していないものの、逆に株価が割安なため、いま買うと長い目で見ると利益が見込める銘柄をいいます」

初心者でも勝ち抜けられる方法

 いま株を買うなら、これらのどちらかに当てはまる銘柄がおすすめだが、それぞれにはメリットとデメリットがあるという。

「成長株は上昇率が高く、短期間で利益を得られる可能性が大きい反面、一気に下落するおそれもあることから、慣れない個人投資家は大ケガをする危険性が。逆に出遅れ株はこの先、急激に下落することは少ないものの、今の経済状況が続けば短期間で収益を得ることは期待できません。コロナの影響があまりにも大きいと倒産で紙くずになってしまう危険性も」

 先にも指摘されたとおり今の株式市場は不安定。どのカテゴリーの銘柄であってもこの先、安心とは言い切れない。それでも、コロナバブルにあやかりたい! ということであれば、株価の上昇率が高い成長株に注目した銘柄選びがおすすめですと足立さん。

「成長株は、株価の動きをしっかりチェックし、短期間の売り買いに対応することができれば、初心者でも収益を得やすいのです」

「株を買うなら最低限知っておきたいファンダメンタル投資の教科書」より

大損失を防ぐためにチェックすべきこと

 おすすめの成長株は、医療関係や動画配信関連、また店舗や企業の買収(M&A)に関わる企業など、コロナ禍の今まさに需要が増えている業種の銘柄。ただし、購入前には必ずチェックすべきポイントがある。

「5〜6月あたりから軒並み上昇トレンドに乗っていた成長株で、ここ数か月で下落に転じたものも少なくありません。動きの激しい成長株は、株価のチャート(株価の推移をグラフ化したもの)を見て上昇していれば買い、と安易に判断しては危険。多少手間でも、その会社の業績を調べてから判断することが、最低限必要です」

 初心者が企業の業績をチェックするなら、まずは売上高と利益の2つだけでもいい、と足立さん。

「この2つが過去3年程度にわたって増加傾向にある企業であれば、株価の上昇が安定して続く可能性が高い。会社四季報などを利用すれば、簡単に調べることができます」

 また、動きの激しい成長株では、売り時・買い時の見極めが何より重要。それって初心者でも判断できる? と心配な人は、次のページをチェック!

これが「おばけ株」ランキング

 足立さんの情報をもとに、注目株を編集部が調査。選ぶときの参考にしてみて!(※2020年12月17日現在の株価)

■2020年話題! でも売り時株

(1位)「マクアケ」
クラウドファンディングサービス運営
【銘柄コード:4479】株価:9,290円/売買最低代金:929,374円

(2位)「弁護士ドットコム」
日本最大級の弁護士検索・法律相談ポータルサイト運営
【銘柄コード:6027】株価:11,190円/売買最低代金:1,119,440円

(3位)「BASE」
Eコマースプラットフォームなどの運営
【銘柄コード:4477】株価:9,890円/売買最低代金:989,374円

 3銘柄ともコロナ禍でも業績がよく、コロナショック後は株価が順調に上昇していた成長株だが、株価チャートを見るとここ数か月で頭打ちの傾向に。再度上昇する可能性もあるが、そろそろ売り時の見極めが必要かも。1〜3位、すべて東証マザーズ)

■これから買うならこの銘柄

(1位)「エムスリー」
医療従事者向け総合医療情報サイト運営
【銘柄コード:2413】株価:9,514円/売買最低代金:951,774円

(2位)「日本M&Aセンター」
中小企業を中心としたM&A仲介
【銘柄コード:2127】株価:6,890円/売買最低代金:689,374円

(3位)「ブイキューブ」
クラウド型Web会議サービス
【銘柄コード:3681】株価:3,255円/売買最低代金:325,698円

 医療系、企業買収、Web会議サービスの運営と、コロナ禍でも需要が高い3業種からチョイス。中でもこの3銘柄はコロナ以前から業績が良好で、企業の価値を評価する指標である時価総額も大きいなど、安定感が抜群。(1〜3位、すべて東証1部)

慎重な人ほどうまくいく!

 初心者がやりがちな株投資の失敗が、株価が下落しても売り時がわからず、売るに売れない塩漬け株を作ってしまうというもの。

「塩漬け株を防ぐために大切なことは、売り時の見極めです」

 成長株のように短期で利益を得る場合、株の上昇が止まり、チャート(株価の推移を表すグラフ)が“下降トレンド(株価の動きが下向きになること)”に入ったところで売れたらベスト、と足立さん。

 とはいえ、下降トレンドかどうかの判断は誰にとっても難しいもの。特に初心者がそのつどチャートを見て見極めるのは、けっこう大変。

「そのため、例えば株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値)を下回ったら売るとか、買値を下回ったら売るなど、迷わずに判断できる売り時のルールを事前に決めておくのがおすすめです」

 株投資はポジティブでイケイケな性格の人より悲観的なくらい慎重な人のほうが失敗しないんです、と足立さん。いちばん重要なことは大きな損をしないこと。慎重さは忘れることなくコロナバブルの波を上手に利用し、収益のアップを目指そう!

おばけ株で失敗しない3つのポイント

■売り時・買い時を見極める株価トレンドの見方

 

 上のグラフ(※)の(A)は上昇トレンド、(B)は下降トレンド、(C)は下降トレンドだが上昇トレンドへの転換の可能性もある状態、(D)は上昇トレンドだが下降トレンドへ転換の可能性がある状態。相場の動きが激しい今、短期間で収益をアップさせたい場合は(A)の初期段階または(C)で買い、(B)の初期段階または(D)で売りに出せればベスト。

(※)外部配信先でこの記事を読まれている方は、記事中の写真リンクまたは「週刊女性PRIME」内の元記事をご確認ください。

【ポイント1】売りに出すルールを決めておく

 株取引を始める際、どこまで下がったら売りに出すかを必ず事前に決めておくこと。これは初心者に限らず、株で大きな損失を出さないための最も大切なルール。

「私の場合は、株価が25日移動平均線(25日間の終値の平均値)を割ったら売りに出します。もちろん、株価が買値より何%下がったら売るというのでもいいし、タイミングは自分で決めてOK。決めたら必ず実行する強い意志を持つことがポイント」

 自分で売却を実行する自信がない人は、逆指値注文など証券会社の自動売買を活用するのも手。

【ポイント2】初心者は“少額投資”で株に慣れる

 一般的な単元株より少ない単位でミニ株を扱っている証券会社が最近増えている。リアルタイムで取引ができないなどのデメリットもあるが、単元株より少額資金で始められるのは大きなメリット。また、貯めたポイントで株投資ができるポイント株の制度も拡大中。

「相場が大きく動いている今は、資金が少額でも利益が出やすい。初心者が株取引の雰囲気に慣れるためにも、まずはミニ株やポイント株から始めてみるのはよい方法」

【ポイント3】未来の株価を予測しない

 株を始めると、ついどこまで上がるかを予想してしまうもの。実はそのプラス思考が売り時を見誤り、大損を招くおそれが! 

「どの株でも下がる可能性がある。それを想定せず、いつか上がると思い続けてしまうことが、塩漬け株を増やす原因に」

※記事の内容は2020年12月17日までの情報に基づいています。

(構成/中村明子)

「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」(ダイヤモンド社)※記事中の画像をクリックするとアマゾンの商品紹介ページにジャンプします

《PROFILE》
足立武志 ◎公認会計士・税理士・個人投資家。株式会社マネーガーディアン代表取締役。書籍、セミナ-などで株式投資で成功するために必要な知識・情報を精力的に発信。「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」(ダイヤモンド社)は10万部突破のベストセラー。公式ブログ「公認会計士足立武志ブログ」https://kabushiki-adachi.com/