ダイドードリンコが「鬼滅の刃」とコラボした缶コーヒーは特大ヒットとなった(記者撮影/東洋経済オンライン)

 2020年に一大ブームを巻き起こした「鬼滅の刃」。鬼滅マネーは映画の興行収入やコミック販売部数に限らず、コラボ商品を扱う数多くの企業にも慈雨をもたらしている。新型コロナウイルスの影響で業績不振に苦しんでいた企業にとって、まさに救世主となっている。

 鬼滅関連ビジネスを扱う会社は多く、自力で探し出すのは大変だ。しかし『会社四季報』には、関連銘柄の情報が掲載されている。12月16日発売の『会社四季報』2021年1集新春号には、「鬼滅」というキーワードでヒットする企業が19社掲載されている。

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 例えば自販機飲料が主力のダイドーグループホールディングス。四季報には「『鬼滅の刃』コラボ缶コーヒーが想定超える特大ヒット」とあり、前号の秋号では営業減益予想だったのが、新春号では一転して増益予想になっている。さらに小売店のヴィレッジヴァンガードコーポレーションは「『鬼滅の刃』関連商品投入テコに上向く」と書かれている。

 この2社以外にも、書籍、映画、ゲーム施設の景品など幅広い業種が鬼滅マネーで潤っていることが見て取れる。四季報では、意外な関連銘柄を発掘することができる。

任天堂の取引先も一目瞭然

 実は四季報では、記事欄以外にも関連銘柄を探すのに適した欄がある。企業記事の右下に掲載されている【仕入先】【販売先】である。ここは毎号、四季報が会社にアンケートをとって、最大取引先として回答があったものを掲載している。

 業績好調なA社の株価が上昇するだけではなく、取引先であるB社の株価も連動して上がることは多い。勝ち組企業の【仕入先】【販売先】も知ることで、銘柄探しの選択肢を一気に増やすことができるのだ。

 たとえば任天堂。四季報では「巣ごもり契機にスイッチ人気爆発。『あつ森』筆頭にソフト販売絶好調」と記載がある。ゲーム機「スイッチ」と「あつまれ。どうぶつの森」をはじめとしたゲームソフトが売れに売れていることはすでに広く知られている。来期(2022年3月期)は巣ごもり需要が一服するとの想定で営業減益予想ではあるが、それでもまだ水準は高い。

 勢いに乗る任天堂の株も購入可能だが、現在の株価は6万6720円(12月18日時点)。100株単位で購入しなければならないため、最低でも約670万円が必要となれば気軽に手を出せるものではない。

 ならば任天堂の【仕入先】を見てみると、ホシデン、ミネベアミツミと記載されている。ホシデンは約10万円、ミネベアミツミは約21万円で株を購入できる。ホシデンはコネクターやジャックなどの部品大手で直近の有価証券報告書によると売上高の実に6割が任天堂向け。機械加工品を手掛けているミネベアミツミも、同様に1割強が任天堂向けとなっている。

 任天堂が【仕入先】の会社もある。たとえば玩具卸のハピネット。記事には「任天堂商材中心にビデオゲーム卸の好調続く」と書かれている。ハピネットの四季報記事を読み進めると「【救世主】『鬼滅の刃』関連玩具を10月末から展開開始」とある。

 ハピネットの【仕入先】には任天堂のほかにバンダイの記載もあり、バンダイナムコホールディングスの四季報記事では「『鬼滅の刃』関連商材も貢献大」と書かれている。ハピネットの株価は8月以降、右肩上がりが続いており、3月の935円を底にして足元は1600円前後で推移している。

連想ゲームでお宝銘柄を発掘

【仕入先】【販売先】の、ほかの例も見てみよう。スクロールという会社は生協の顧客向けに衣類などの通販を手掛けており、【販売先】にも生活協同組合連合会と記載がある。有価証券報告書によると生協との取引は営業取引額全体の48%を占めている。

『会社四季報』(2021年1集新春号)は12月16日発売。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。

 巣ごもり需要でスーパーはもちろん、こうした宅配サービスが急成長している。上場企業だとオイシックス・ラ・大地などが該当するが、生協は未上場のため株式投資の対象ではない。しかし関連銘柄としてスクロールをチェックすることは可能だ。四季報では「柱の生協向け通販は部屋着など在宅商材軸に想定超」と書いてあり、今期は最高純益を大きく更新する業績予想となっている。

 このほかにも、ユニクロを展開するファーストリテイリングが【販売先】のマツオカコーポレーション、無印良品を展開する良品計画が【販売先】の三栄コーポレーションなどもある。ファーストリテイリングも良品計画も、コロナの影響を徐々に脱しつつあるようだ。

 四季報をパラパラめくっていると、こうした企業のつながりがふと目に入ってくるときがある。連想ゲームのように楽しんで、隠れたお宝銘柄を探していただきたい。


田野 真由佳(たの まゆか)東洋経済 記者
2009年に大学を卒業後、時事通信社を経て東洋経済新報社に入社。小売りや食品業界を担当し、現在は会社四季報編集部に所属。幼児を育てながら時短勤務中。