明石家さんま、ビートたけし、タモリ

 かつて1988年から1999年まで、お正月の“風物詩”とも言える特番が放送されていた。タモリ、ビートたけし、明石家さんまらによる『BIG3世紀のゴルフマッチ』(フジテレビ系)だ。お笑い界の、いやテレビ界の大御所3人が一堂に揃い、様々な珍ルールの中で誰が優勝するかを決める番組だった。最後の第10回目の放送最後から20年、彼ら「ビッグ3」も“晩節”を迎えているーー。

「かねてより“60歳で引退”を公言していたのがさんま師匠。その理由を“後輩のために、俺らが退かないと新しい笑いが生まれない”という格好いいものでしたが、宣言からあれよあれよと5年が経ちました。どういうわけか引退しない(笑)。今も怒涛のしゃべくりで“お笑い怪獣”として君臨しています」(放送作家)

 ビッグ3最年少の明石家さんまも2020年7月で65歳を迎えて、いわゆる前期高齢者の仲間入りをした。“引退宣言”から5年経っても勢いは衰えず、12月30日には『アメトーーク! 5時間SP』(テレビ朝日系)にも出演する。

「昨年に引き続いて“明石家さんまVS若手芸人”として、“第7世代”を中心とした若手を相手にトークを繰り広げます。最近は若手と絡むことも多くなった師匠ですが、実は第7世代の面々が大好物で、特にEXITがお気に入りなんです。

 兼親大樹からは“シーフードパイセン”と呼ばれたときは実にうれしそうでしたし、相方のりんたろー。もよく自分の番組に呼んでかわいがっています。積極的に絡むことで若者世代にウケるお笑いを吸収しようとしているのか、それとも育てているのか。とにかくお笑いに貪欲なんですよ」(前出・放送作家)

10年後もお笑い界のトップはオレ

 それにしても、“引退宣言”とはなんだったのだろうか。2017年11月に放送された日本テレビ系の密着特番のインタビューで、さんまは「10年後のお笑い界のトップは誰?」という質問にこんな答えを出していた。

《今、俺がお笑い界のトップとしたらやで? ほんなら10年後もオレ。72歳ならいけると思うわ》

 65歳になっても進化し続けるさんま。それは「自分が一番おもしろい」という確固たる自信の表れだ。芸能ジャーナリストの佐々木博之氏は「引退はシャレでしょう」として、こんなエピソードを明かす。

おもしろいことが本当に大好きな“ザ・芸人”なんですよ。例えば、移動中の新幹線で自分の出演VTRをパソコンで見ているのですが、反省や研究のために見直していると思いきや、さんまさんはただただ自分がおもしろくて笑って見ている(笑)。おそらくは自分を“おもしろくない”と思うようになるまでは、芸人をやめることはないのではないでしょうか」

 しかし、そんな彼も時代の流れには気をつける必要がある。特にネット上では、ちょっとしたことで発言内容が叩かれ、炎上する危険が潜んでいるからだ。12月5日の『ヤングタウン』(MBSラジオ)でも炎上ギリギリの発言をしていた。

「アンジャッシュ・渡部建の謝罪会見を話題にしていたのですが、どこか彼を擁護するような物言いが続きました。そして例の件に触れると“2人(渡部と不倫相手)は一応了解で多目的トイレで愛を確かめ合ったわけで。多目的トイレで愛を確かめ合ったらあかんのか”と、多目的トイレを使用したことを“よし”とするかのような発言をしたのです。

 しかし、場の空気から“まずい”と察知したのか、消え入るような声で“どうなんでしょ”とトーンダウン。本音を話せるラジオはしゃべり芸の見せ所ですが、ナイナイ・岡村(隆史)さんの“お嬢”発言のように、時代を読み違えなければいいのですが」(お笑いライター)

 ビッグ3全盛のころとは状況が大きく変わったのがビートたけし。2021年1月で74歳を迎える。

 2008年からリニューアルを経て12年間続いている『新・情報7DAYSニュースキャスター』(TBS系)を代表するように、たけしは今や芸人というよりもニュースを舌鋒鋭く切る“ご意見番”のほうが板についた感がある。しかし、ここ最近はというと……、

『オレたちひょうきん族』1980年代のお笑いブームを牽引したたけしとさんま

最近のたけしさんは加齢なのか、太りすぎなのか、滑舌が悪くなって話が聞き取りにくくなり、時に“これはまずい”と言うような話もしたりと、周囲も冷や冷やしている。よって、視聴者からの反応も思わしくなく、またVTR中にウトウトする場面も見受けられると言います。

 それにニュース番組ではおもしろいことを話すわけでもなく、“たけしが出ているから”と視聴するファンも少なくなっている。芸人ではなく、文化人・北野武のイメージが強くなりすぎていることも一因でしょう」(テレビ局幹部)

 プライベートでは2020年2月に、かねてから不倫関係を囁かれていた18歳年下の女性Aさんと再婚したたけし。2015年に個人事務所を設立し、2018年には「オフィス北野(2020年1月に名称を「TAP」に変更)」を退社して独立。先導してきたのがAさんだったという。ワイドショースタッフはたけしの変化を明かす。

「たけしさんの財産や給料、資産運用、また体調面の管理をしていたのが、40年間連れ添った元妻の幹子さん。しかし、Aさんと出会ってからは幹子さんとは別居状態となり、ギャラも新しい個人事務所に振り込ませるようになったといいます。

 また、これまでオフィス北野に入っていた映画や著書の印税も、Aさんの手腕で権利を移したそう。すっかり彼女の言うことだけを聞くようになってしまい、“殿、それはダメです”と物申してきた“たけし軍団”とも距離を置くようになったとか」

このまま芸能界引退だな

 こうして“第2の人生”をスタートさせたたけしだが、まもなく新型コロナウイルス感染拡大が起きる。

自宅からのリモート出演が多くなり、巣篭もり生活に相当参ったようで“鬱を通り越して、自棄になってきた。下手すると、このまま芸能界引退だな”とこぼしていたそう。

 また追い討ちをかけたのが志村けんさんの他界です。ドリフ加入前の志村さんを浅草時代から知っていて、“土曜8時”にしのぎを削り合った“戦友”同士だっただけにかなりショックをうけたのでは」(番組制作スタッフ)

 新型コロナウイルスの感染拡大により、テレビ業界も様変わりした2020年。特にたけしら大御所は、感染リスクを避けるためのリモート措置が各局でとられた。

高齢のタレントやコメンテーターのみなさんが、“リモートはいやだ、しゃべりにくい”と同じことを言うそうです。画面を見ながら話すことに抵抗を感じるようで、特に芸人であれば普通はスタジオ内のリアクションを観察し、空気を読みながら話をするので、それができないのでしゃべりにくく感じるのでしょう」(佐々木氏)

 そんな老いが見え隠れする御大だが、これぞ“芸人・たけし”と思わせる一幕もあった。12月23日放送の『ビートたけしの公開!お笑いオーディション』(TBS系)で、勢いのあるお笑いコンビ「マヂカルラブリー」がネタを披露すると、

《ああいうのが子どもとか、おばあさんとかが笑ってくれて勘違いしちゃうんだよ》

 と評し、彼らが2020年の「M-1」王者だと知らされると、

《これ優勝しちゃったの? じゃあ、文句言ったろう。漫才じゃないとか何とか》

 世間で起きている“漫才論争”にチクリ。やはり、今も芸人としての血が騒ぐのだ。

 2014年3月に、32年間続けてきた『笑っていいとも!』(フジテレビ系)終了後は、新番組を始めることなくレギュラー番組を粛々と続けている印象のタモリ。そんな彼も今年で75歳、“後期高齢者”になった。

「それだけに新型コロナは脅威でした。街ブラロケをメインとするNHK『ブラタモリ』、また大勢の出演者が集う『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)では“タモリさんを絶対にコロナに感染させてはいけない”とばかりに、万全な感染防止対策がとられたそうです。

 特に生放送の『Mステ』は無観客にしながらも、検温や消毒、マイクの共有をしない、などの対策に加えて“3密”にならないようマニュアルを徹底。当のタモリさんは“ここまでやるの?”と苦笑いしていたそうですが、現場では逆に一体感が生まれているそうです」(番組制作スタッフ)

定年ってこういうことなんだ

1984年には『日本放送演芸大賞』も受賞したタモリ

 自粛期間中は、芸能人生で初めてと言っていいほどに“仕事をしない生活”を過ごしたというタモリ。

奥さんと2人で自宅で粛々と過ごしたみたいで、“定年ってこういうことなんだな”と少々寂しげに漏らしていましたね。多趣味のタモさんなら老後も暇なしでしょうが、それでもまた“仕事ができる”ありがたさをあらためて感じているのでは? ただ、彼を慕う芸能人らによる新年の“タモさん詣で”は、今年ばかりは遠慮されるかもしれませんね」(芸能プロ関係者)

 歳を取れども、まだまだビッグ3は健在ということか。彼らの“引き際”はいつになるのだろうか。

「そもそも芸能界において、わざわざ“引退”を口にする人はそう多くはいません。昔で言えばキャンディーズや都はるみのように、一度引退してもしばらくしたら復帰するもので、“芸能人の引退は本当の引退ではない”のです。スキャンダルや違法行為などの不祥事を起こして引退に追い込まれても、戻ってくる人もいますからね(苦笑)。

 例えば、みのもんたさんのように病気を患った、身体が動かずに芸ができなくなった、しゃべれなくなったといった身体的理由以外は、“自分はまだできる”と思っている限りは需要の有無は別として続けられる職業。舞台俳優は“舞台で倒れたら本望”とはよく言われますが、芸人も“テレビでギャグを披露して倒れることが花道”だと考えているのではないでしょうか。しゃべりができなくなった時こそ、彼らの本当の引退なのだと思います」(佐々木氏)

 たけしは2018年の著書『「さみしさ」の研究』(小学館新書)で、“老後”についてこう語っている。

人生は、年齢を重ねるほどつまらなく不自由になっていく。夢のように輝かしい老後なんてないーー。それこそが真理だ。老いるっていうことは、想像してる以上に残酷だ。まず、それを受け入れることから始めないと

 それでも、彼らはしゃべりつづけるだろう。