氷川きよし 撮影/廣瀬靖士

 『NHK紅白歌合戦』でも、その存在感を見せつけた氷川きよし。'20年を「学んだ1年だった」と振り返る。そして迎えた'21年。「今年は堂々と歌って、思いを伝えていきたい」と力強く語る。その熱き思いとは?

昨年できなかったことを
今年はしっかりと

 氷川のライフワークであるコンサートツアー。例年であれば年間約60日〜70日(120公演〜140公演)、全国各地のファンに生歌を届けている。しかし'20年は、たったの7日(14公演)。言うまでもなく、新型コロナウイルスのため中止や延期を余儀なくされた。

「いい1年とは言えないですよね。でも“すべてに意味がある”といい方向に考えなきゃいけないと思う。そして、結果、よくなるんだろうなと思います。本当に学んだ1年でした。こうして生きていること自体、自分にはやっぱり使命があるんだと改めて感じています。自分にしかできないこと、氷川きよしにしかできないこと。伝えたいこと、伝えていくべきこと。しっかりと発信していきたいと思った年でした
 
 昨年できなかったことを、今年はしっかりやっていきたいと前を向く。

氷川きよし 撮影/廣瀬靖士

「例えば、コンサート。昨年の振り替え公演が、今年はたくさんあるんです。それをやる体力をしっかりとつけておかないと!」

 '20年、いちばんうれしかったことは、初のポップスアルバム『Papillon -ボヘミアン・ラプソディ-』を6月にリリースできたこと、と振り返る。

デビューしたときからの夢でもあり、自分の中で“ここまでやれた”という自負もあり。プロ歌手としての20年分の思いを音楽として吐き出すというか。そんな作品にすることができました。

 未曾有のコロナ禍でいろんなことが一時フリーズし、何もできない状態で家にいた時期だった。発売するかどうか、すごく悩んだけれど、聴いてくれた人から“励まされた”“元気になれた”という声がたくさん届いたから」
 
 と、誇らしげ。同じく6月にポップスコンサートを開催する予定だったが、これも中止。しかし8月に無観客ライブを行った。

コロナがおさまれば、ポップスコンサートをやりたいですね。通常の氷川きよしコンサートとは、また別に。Kiiコンサート? 名前はまだわからない(笑)」

夢やロマンはエンタメの
世界でしか表現できない

 8月には明治座で座長公演。2月2日のライブ以来、実に半年以上ぶりに観客の前に立った。

氷川きよし 撮影/廣瀬靖士

「初日、久しぶりにお客さんの前に立って、拍手をもらったときはうれしかったですね。涙が出ました。お客さんも不安というか、思い切り楽しめる状態で来られた方はいなかったと思います」
 
 “き・よ・し”コールは封印、かわりに拍手で氷川への気持ちを伝えるスタイルに。

「そうですよね。それでも来てくださったことは、本当にありがたいなとしみじみ感じました。キャストもお客さんも、みんなが万全に対策をしてくれたから、感染者は1人も出なかった。なんとしても成功させたい、という思いはすごく強くありました。

 無事に終わった大阪の千秋楽では、また涙が出ました。夢のある世界やロマンは、やっぱりエンターテイメントの世界でしか表現できないと思います。その灯を消せない、消さないようにしたいという思いはありました
 
 昨年後半は『SONGS』(NHK総合)や『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)、『The Covers』(NHK BSプレミアム)など、音楽番組への出演も普段以上に拡大させた。

「人前で歌うのは緊張するんですけど、やっぱり歌が好き。'21年はポップス系の番組にももっと出られたらいいな。堂々と歌って、思いを伝えていく'21年にしていきたい。なんか、肩で風を切るような思いで突き進んでいきたいです!

氷川きよし 撮影/廣瀬靖士

 新年の抱負をお願いします、とブラックボードを渡すと、ほんの少しだけ考えたのち、迷いなくさらさらと書き進めてくれた。達筆なのは存じ上げておりますが、ますます字がお上手になられたような?

「'21年は丑年ですよね。せっかくだから牛、描いてもいいですか?」

 もちろん! 何ともキュートな子を描き上げてくれた。スターは絵心までおあり。

「牛に見えます? 大丈夫かなぁ?」
 
 モウし分なし! さらには“週刊女性LOVE”のうれしいお年玉まで。

「'21年は、みんなで力を合わせて。まだ直接、近くで会ったり、マスクがない状態で、というところまではいかないけど、心だけはしっかり強く持って。いろいろ知恵を絞りながら、いろんなことをいい方向に持っていけるように。ともに考えていけたらいいですね
 
 週刊女性は、アーティスト・氷川きよしの煌めきを今年も追いかけ続けます!!

ちゃんと会って、顔を見ないと……

大阪での過ごし方

 いつもだったら大阪グルメに舌つづみを打つところだろうけど、今回は外食封印。

大阪のレコード会社のおじちゃんがたこ焼きを買ってきてくれて。本当においしかった。大阪にいると太りますね、食べ物がおいしくて(笑)。ホテル暮らしだったので、食事は基本的にはホテル内のレストランやルームサービスでした。でも、ちょっと贅沢しすぎた気がして、その後はカップラーメンを3日続けて食べて、バランスをとりました(笑)。贅沢すると罪悪感を感じるというか、そのぶん節約しないといけない気がしません? カップラーメン、すごくおいしかったです

氷川きよし 撮影/廣瀬靖士

買っちゃった♪ 

 大阪・新歌舞伎座での座長公演中(11月19日〜29日)、新作バッグをお買い上げしたことをSNSで報告していた。
 
 自分へのご褒美?

「旅支度、下手なんですよ(笑)。できれば毎日、違う服を着たいし、靴もカバンも毎日替えたい。でも、それが10日間ってなったら、ものすごい荷物になるんですよ。でも大阪に持っていったカバンは結局1つ。そんなわけで“カバンをもうひとつくらい持っておこう”と思って。やっぱり、いろんなカバン持って写真を撮りたかったし。ね?

あふれまくる母性

 氷川が一緒に暮らす家族はミニチュアダックスフントのココアちゃん(16歳♂)、ミルクちゃん(10歳♂)。昨秋には、さらにラテちゃん(1歳♂)を迎え入れた。

「いい出会いがあって。ダックスが好きだし、縁だなと思って。もう大変ですよ(笑)。ときにうわーってなるくらい、とにかくにぎやか(笑)。そして、やっぱり可愛いです。“ゴハン食べさせなきゃ!”“守ってあげなきゃ!”みたいな。もう完全に母性があふれてます(笑)。

 自分が働かなければ、困る子たちがいる。背負っているものがある。だから頑張れるし、倒れるわけにはいかない。そうやって自分にプレッシャーをかけているんだと思います。ココアたちだけじゃなく、両親の存在もそうですね」

氷川きよし 撮影/廣瀬靖士

友達は大切 

 故郷・福岡でコンサートの後、久しぶりに会った人がいたという。

「高校の同級生。一緒に演歌を歌って、一緒に頑張ってきた友達です。コロナの影響か、近ごろネガティブなメールが来ていたから……激励しなきゃと思って。久しぶりに会って、いろいろ話しました。そしたら“顔を見て話したら、気持ちが変わった”って言ってくれて。うれしかったですね。自分も励まされて、頑張ろうという気持ちになれました。やっぱりちゃんと会って、顔を見ないといけないんだって、すごく感じました。そして、やっぱり友達って大事だなと思いました」 

スタイリング/伊藤典子(hoop) ヘアメイク/遠山雄也(RELAXX)