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 ここ数年、腸内細菌への関心が高まっているが、実は顔にも約10億個の皮膚常在菌が存在し、肌の状態を左右している。

「なかでも、表皮ブドウ球菌は、24時間休むことなく肌のために働いてくれるとてもいい菌。“美肌菌”として注目しています」

 そう話すのは世界でも数少ない皮膚常在菌の研究者であり、“美肌菌”の名付け親でもある皮膚科医の出来尾格(できお・いたる)先生。美肌菌は微生物のひとつで、皮脂や汗をエサに保湿成分のグリセリンなどを作って、肌のバリア機能を高めている。まさに“天然の美容液”だ。

スキンケアの方法で美肌菌が大きく増減

「美肌菌がすむのは表皮のいちばん外側にある角質層の表面や隙間です。厚さわずか0.02ミリの角質層がうるおっているかどうかで、肌の美しさが決まります。美肌菌が多いほど、肌の水分量が増えてキメが整い、保湿力が高まって、シワなど肌の老化を抑える作用も。悪玉菌が増えるのを防ぐ働きもあり、肌トラブルも減りますね」(出来尾先生、以下同)

 美肌菌は、生まれたときに家族など周囲の人からもらい受け、顔の表面1平方センチメートルにおよそ2千個~2万個が常在する。年齢によって増減はしないが、スキンケアの方法によっては大きく減ることも。

「例えば、芸能人は濃いメイクとクレンジングを繰り返すため、美肌菌が千個以下の人も多い。通常の洗顔でも美肌菌の半分量が洗い流されるので、洗いすぎはいちばんの敵です。ダブル洗顔は乾燥を招くので、軽いメイクなら石けんのみで十分

 ほかにも、美肌菌は寒さが苦手なので、冬は顔を冷やさないよう気をつける必要がある。

「肌の表面で美肌菌が働いていることをイメージして、丁寧なお手入れを実践してください。美肌菌が増えれば、自然とうるおいのある肌に変わっていきます」

【肌に大きな影響を与える3つの菌】
 表皮ブドウ球菌とアクネ菌は、ともに働いて肌にうるおいを与え、肌を弱酸性に保つことで、病原菌や黄色ブドウ球菌の大増殖を抑えている。

◎美肌菌……表皮ブドウ球菌
保湿成分をつくる。抗菌ペプチドをつくり悪玉菌を退治する。

◎中間菌……アクネ菌
酸素があると保湿成分をつくり、酸素がないとニキビをつくる。

◎悪玉菌……黄色ブドウ球菌
アトピー性皮膚炎の悪化因子、黄色ニキビの原因になる。

美肌菌活を始めて冬の乾燥肌とオサラバ!

 ここからは、若見えを促すためにおすすめしたい4つの“美肌菌活”をご紹介します。

1. 洗顔料は1日1回にする

「洗顔料の主成分は界面活性剤で、洗顔料を使うと美肌菌の量は半分以下になり、元に戻るには約10時間かかります。洗顔のたびに洗顔料を使うと、増えてきた美肌菌がまた洗い流されてしまうので、洗顔料を使うのは1日1回にし、美肌菌が復活する時間をあげましょう」

 表皮は数十日で生まれ変わるため、多少の皮脂や汚れが残っていても大丈夫。キュッとした洗い上がりは不自然と心得て。

【朝】……洗顔料なし +“ぬるま湯”洗顔

「34~35度くらいのぬるめのお湯を使えば、夜に使ったスキンケアの余分な油分などは落とせます。ゴシゴシこするのは厳禁。やさしく洗いましょう」

 皮脂が過剰な部分や、毛穴の詰まりがひどい部分だけは、洗顔料を使ってもOK。

【夜】……泡で押す +“ひたひた”洗顔

「洗顔料は、なるべく表示成分の少ないシンプルな固形石けんがベターです」

 ネットなどを使ってしっかり泡立て、キメ細かな泡で顔を押し洗い。すすぎは、両手でぬるま湯をすくい、その中に顔を浸すようにして泡を落として。

2. お風呂はぬるめのお湯で短時間にする

 寒いからとじっくり入浴するのは、肌にとってNGだった!

「40度以上のお湯は、皮膚常在菌にとって高温すぎますし、長時間の入浴は、角質層がふやけて肌の奥にある保湿成分や水分が出てしまうなど、いいことがありません」

 美肌には、湯温38度前後、15分程度が目安。

美肌菌の大きさは、1マイクロメートル(1mmの1000分の1)。肉眼では目視できないけれど、存在している。(C)CDC,JaniceCarr 

ホエイのチカラで美肌菌を増やす!

3.  就寝前にうっすら汗をかく

「汗は、美肌菌の最高のエサ。就寝前に少し汗をかいておけば、外部刺激が少ない睡眠中に美肌菌がしっかり増えてくれます。また、汗に含まれる抗菌ペプチドで悪玉菌の増殖も防げます」

 日中に、階段の上り下りや散歩などで汗ばむのも、美肌菌のエサ作りに有効!

4.ホエイでパックする

「ビフィズス菌が入ったヨーグルトのホエイ(上ずみ液)には、美肌菌を増やす物質が含まれていると科学的に証明されました。ホエイを使ってパックすることで、美肌菌の増殖を促進し、保湿や毛穴のつまりを溶かすといった効果が期待できます」

 ソフトなピーリング作用があるので、週2回を限度に試してみよう。

【ホエイパックのやり方】

◎用意するもの
・ビフィズス菌入り無糖タイプのヨーグルト(無脂肪・低脂肪は避け、賞味期限内のものを使う)
・市販のフェイスマスクシート(ウエットタイプ・美容成分配合タイプは避ける)

1. ヨーグルトの容器からホエイ(上ずみ液)だけを器に取り出す。ホエイが少ないときは、スプーンで切るようにヨーグルトを混ぜ、数分おくとしみ出てくる。

2. ホエイを集めた器にフェイスマスクシートを浸す。

3. シートを顔にのせ、10分間パックする(しみたら、すぐに取り除くこと)。

4. ぬるま湯で“ひたひた”洗顔をして洗い流す。

※肌の目立たない部分でパッチテストをしてから行ってください。また、肌に傷・炎症があるときや乳製品アレルギーがある人はやめておきましょう。

(取材・文/河端直子)


【PROFILE】
出来尾 格(できお・いたる)先生 ◎日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。ミルディス皮フ科勤務。専門はアトピー性皮膚炎、にきび、皮膚微生物学。NHK『あさイチ』、『美と若さの新常識』などのテレビ出演、美容雑誌でも活躍中。