(写真左上から時計回りに)中居正広、米倉涼子、神田うの、手越祐也、藤森慎吾、宮迫博之

 中居正広、柴咲コウ、山下智久、前田敦子、ローラ、神田うの、岡田結実、菊池桃子──。彼ら彼女らに共通するのは、昨年、所属事務所を退所したという点。

 上記の面々は、ほんの一例だが、昨年末にはオリエンタルラジオが吉本興業から退社し、3月には長瀬智也がジャニーズ事務所から退所することが明らかになっている。

芸能界は曲がり角、ますます退所は増える

 一過性のものではなく、大物を含めた芸能人の所属事務所退所が止まらない。

「ますます退所は増えていくのではないか。芸能界は曲がり角を迎えている。こんなにバタバタと芸能人が独立するのは、僕の芸能レポーター人生でも初めてですよ」

 と驚きを隠さないのは、昭和、平成、令和の芸能界を取材してきた芸能レポーターの石川敏男さん。個人事務所を立ち上げる、フリーランスになる、エージェント契約を結ぶなど、所属事務所に縛られない道を選ぶ芸能人が増えている背景には、何があるのだろうか?

「まず、芸能界を引っ張ってきた敏腕と言われるような人たちが、健康面を含めて老体化してきたという点が挙げられるでしょう。退所する芸能人の中には、芸歴30年を超える人も少なくない。事務所に入ったきっかけとなった人や、長年お世話になった人がいなくなることで、タレントの心情に変化が生じるのは当然のこと」(石川さん)

主力レベルが相次いで離れたオスカー

 その点を踏まえたうえで、社長クラスの世代交代がうまくいかなければタレント自身のポジションや人間関係が変わりかねない。そのため、いかにして不満が噴出しないようにスマートに継承するかが問われているのだが、「オスカープロモーションはそれができなかったと言わざるをえない」と石川さんはバッサリ。

 オスカーは、米倉涼子、剛力彩芽、忽那汐里、岡田結実など主力レベルが相次いで離脱。マネージャー陣を含め、優秀なスタッフが次々と辞めていったことは、その予兆と言えるという。

オスカーを退所した剛力彩芽(左)と忽那汐里(右)。事務所の“顔”だったが……

「オスカー創設者であった元社長が会長職に退き、新社長が就いた。その次は、会長の娘婿が会社を継ぐことが濃厚視されていますが、彼は芸能畑の人間ではなく、経費を締めつけるなどマネージャーたちを軽視していた。一方的な上意下達が引き金になり、スタッフの大量離脱を誘発した」(石川さん)

 よき理解者であるマネージャーがいなくなることで、タレントも退所を決意する機運が高まってしまう……。

「会長は面倒見がよく、来るもの拒まないタイプ。自身もマネージャー経験が豊富ですから、下の者の気持ちがわかる」(石川さん)

 ところが、娘婿にはその意思が伝わらず、さらには門外漢にもかかわらず経営に首を突っ込んだ結果、負の連鎖を招いた格好に。

「ただし、辞めていったタレントたちが安泰かというとそうとも限らない。特に、米倉は定期的にニューヨークでミュージカル公演を開催してますが、とてつもないお金を事務所が捻出していた。『ドクターX』などヒット作を飛ばす彼女への恩賞とも言えるわけで、赤字覚悟で公演していたわけです。フリーになった芸能人は、自らお金の管理をする必要もありますから、事務所のありがたみを退所後に痛感するケースも散見されるでしょうね」(石川さん)

ジャニーズは好転する可能性が高い

 一方、同じく主力タレントの退所が相次ぐジャニーズに対しても、心配の声が挙がっているが、石川さんは「好転する可能性が高い」と予測する。

「よき理解者であったジャニーさんがいなくなったことで、崩壊を危ぶむ声もありますが、最近は東山(紀之)さんが、バラエティーなどにジャニーズの若手と積極的に登場する機会が増えている。しかも、彼は若手を自宅に招いたり、ご飯に連れて行ったりもしている。ジャニーさん的な立ち居振る舞いをすることで、彼らのよき理解者になろうという姿勢が見えます」(石川さん)

 さらには、滝沢秀明氏が副社長として、藤島ジュリー社長とともに、不倫疑惑を報じられた近藤真彦の無期限の謹慎処分を下したことも大きいと付言する。

「聖域はないということを示した。マッチがミスを犯したことで、結果的に東山さんと立場が逆転した感があります。人間関係を重視する東山さん、芸能畑をよく理解している滝沢副社長の新体制が定着すれば、事務所は再び安定していくと思います」(石川さん)

 また中居や長瀬の例は、退所は一時的であって、“再結成”をするための環境作りではないかと分析する。

「中居としては、ジャニーズ事務所に所属したまま新しい地図と共演することは難しい。長瀬はTOKIOの5人で音楽活動をしたいという思いがある。山口をジャニーズに戻すことはできないから、城島・国分・松岡の3人は株式会社TOKIOを設立しました。長瀬が裏方として活動するのも、音楽活動を見通してのことではないか。事務所は離れても、メンバー同士はつながっているものですよ」(石川さん)

 メンバー間の関係性は、家族同然ということなのかも。

 退所騒動は、何も大手芸能事務所に限った話ではない。中堅事務所のスペースクラフトからも栗山千明、神田うの、有森也実、上坂すみれが退所を表明し、“第2のオスカー”ともいわれた。

30年在籍した事務所から、昨年離れた栗山千明。金銭トラブルも報じられたが……

 ある芸能記者は次のように話す。

「栗山は子役時代から約30年にわたって所属し、有森も37年間所属した事務所の顔的存在です。しかし、彼女らに代わる新しい顔がなかなか育たず、マネージャー陣は苦労していたようです。そういった焦りもあって、上層部と現場の人間に距離が生まれ、タレントだけではなく社員も事務所を去っていると聞きます」

雑誌『FLASH』でセクシーグラビアを披露した栗山千明(PRTIMESより)

公取の牽制に加え、ネットも後押しに

 また、こうした退所の背景には、「2019年に、公正取引委員会が芸能人などの活動にも独占禁止法を適用すると見解をまとめたことが大きい」とは前出の石川さんだ。芸能事務所とタレントの専属契約に違法性がある──。つまり移籍や独立をする際に障害があるのではないかと調査に乗り出したことで、所属タレントが独立しやすくなったというわけだ。'16年、のん(能年玲奈)がレプロエンタテインメントから独立したときは、圧力といった言葉が飛び交い、彼女の進退にも少なからず影響を及ぼしたが、時代は確実に変わっているのだ。

 輪をかけて、「インターネットの台頭がある」と先の芸能記者は話す。

「電通の『2019年 日本の広告費』によれば、インターネット広告費が初の2兆円超え、ついにテレビの広告費を逆転しました。それだけ多くのお金がネットの世界に流れている」

 昨年末にフリーランスになったオリエンタルラジオ・藤森慎吾が、同じく独立した手越祐也のYouTubeチャンネルに登場した際に、「YouTubeのギャラがテレビ超えてしまった」といった趣旨の発言が大きな話題を呼んだ。

“第2の人生”にYouTuberという道を選んだ宮迫博之(左)と藤森慎吾(右)

 テレビに出演せずとも、ネットやSNSでお金を稼ぐことができる時代に変わってきたことで、所属事務所の手を借りずとも、自らパフォーマンスをプロデュースし、お金を稼ぐことができることも独立の後押しになっているという。

「ネットが普及した現在、ブログやTwitterといったSNSを使って、タレントがファンにメッセージを直接送れるようになりました。つまり、記者会見などをする必要がなくなりますから、仲介する事務所やメディアとの接点も希薄化していく。自分ひとりでも十分できるじゃないかと考える芸能人が増えても不思議ではない」(同・芸能記者)

 実際、先述した手越祐也は、YouTube上で退所に伴う記者会見を生配信し、132万人を超える視聴者がリアルタイムで見届けた。

本当に人から好かれる人は独立しても大丈夫

 だが、YouTubeは水もの──そう指摘する声は少なくない。

「宮迫博之さんの動画は、ゲストを招かないと視聴再生数が伸びずに停滞しつつある。TKO木下さんの動画にいたっては、有名人とは思えない惨憺(さんたん)たる再生数です(苦笑)。ネットがあるから安泰ではなく、人気があるからテレビでもネットでも活躍できる」(同・芸能記者)

 たしかに、ワタナベエンターテイメントをクビになってからフリーで成功したフワちゃんは、YouTuberを経てテレビでも人気者になった。人気や話題性があれば場所は問わない。反面、なくなれば、茨(いばら)の道が待っていると言えそうだ。

「本当に人から好かれる人は独立してもいいのではないか」と、石川さんはそう付け加える。

「かつて昭和40年代から50年代にかけて、レコード会社の力が衰退して、芸能プロダクションに人材が流出する時代があった。ネットが登場して、芸能界は再び転換の時代を迎えているということでしょう。

 転換の中でも人気が衰えなかった人は、人間関係を大事にしている人や、求心力のある魅力的なスターのような人でした。ある意味、フリーになることで、その人の人間性が試されるとも言える。自信だけで独立すると、手痛いしっぺ返しを食らうと思いますね」(石川さん)

いしかわ・としお。1946年生まれ。芸能レポーター。松竹映画宣伝部から女性週刊誌記者を経て、日本テレビで番組のレポーターとなり、以後は芸能界の情報レポーターとして活躍する。

原田龍二を支える名伯楽
“個人事務所だからできること”

 文春砲によって不倫が発覚したにもかかわらず、テレビやCM依頼、連載企画など引きも切らず。“文春砲命中後最速”と言われるほどの驚異の回復ぶりを見せている原田龍二

 彼は独立経験者で、現在は個人事務所の(株)ブローに所属。そして、原田の復帰の立役者と言われるのが、事務所の社長兼マネージャーである森卓一さんだ。原田と30年近い付き合いの森さんが語る、独立のメリットとは──。

原田龍二(左)、事務所の社長兼マネージャーである森卓一さん(右)

タレントと直で決めることができるスピード感は、大きなメリットだと思います。それなりの事務所ともなれば、現場のマネージャー、チーフマネージャー、社長という具合に、稟議(りんぎ)を上げるように判断を仰ぐ必要がありますから、決断に時間がかかります。しかし、個人事務所だとタレントとマネージャーがじっくり話し合い、仕事への熱量なども確認しやすいですよね。大手のメリットとしてはバーターなどが成立しやすい。だから若い子を育てるなら、大きな事務所のほうが成長させやすいかなと思います

 森さんは、大手芸能プロダクションに入社し、そこでまだ若かった原田と出会うが、その約4年後、会社は経営不振により倒産。その後、原田とともに別のプロダクションに移籍するが──。

「人間関係や人材育成の壁にぶつかり18年間お世話になった会社を辞める決断をしました。そのことを原田に伝えると“森ちゃんが辞めるなら俺も辞める”とついてきてくれたんです」

 出会った当初は、まるでやる気のない原田が嫌でしかたがなかったという。しかし、

「苦楽をともにして、一緒に辞めると言ってくれるまでの関係になったのかと思うと感慨深かったですね。違う事務所に移籍する話もあったのですが、彼と話し合った結果、個人事務所をつくることにしました。私自身、経営者になるのは初めての経験でしたから、経理の面など戸惑うことが多かったですね」

 今でこそ個人事務所は珍しくないが、当時はまだ珍しい存在。“弱小”と見られがちなだけに苦労はなかったのか?

「やっぱりありましたよ(笑)。仕事を振ってもらえないとかね。でも、個人事務所を選択したくらいですから、われわれは気にしなかった。わからないことだらけだから、できることといったら前向きになることくらい。原田も私も他者をうらやましがらない性格なのがよかったのかな。だから、不祥事の後も何とかなったんだと思います。あのときは私も原田も、仕事はすべてなくなると思っていました」

 不倫発覚時、原田は2つの生放送番組のレギュラーを持っていた。記者会見を開かずとも、収録前後にマスコミが押し寄せる。周りに迷惑をかけてしまうため、森さんとともに記者会見を開くことを決断したという。

原田龍二は、隠れて生きるような売り方をしてこなかった。なので堂々と裸一貫、正直に話して臨もうと。そういった意思確認ができるのは、私と原田のマンツーマンの関係性があるから。全裸になる仕事にしても、原田はまっすぐな性格ですから、絶対にうまくいくとしか感じなかった(笑)。ほかの事務所であれば、上の判断で裸になることは止められていたかもしれない。でも、本人はやる気に満ちていたし、私も面白いと思った。個人事務所は、さまざまなことにチャレンジできる。だからこそ、人との関係性を大事にする──とても大切なことだと思いますね

*31日間すべてが全裸というカレンダー『原田龍二 毎日反省 日めくりカレンダー』(扶桑社刊)が好評発売中! 失敗したあとも、人生は続く──。無駄に勇気づけられるカレンダー!