ところ変われば、お金の貯め方使い方も変わる! 意外なところに県民性がにじみ出る、お金にまつわるランキングを、専門家の解説とともに見てみよう!

イラスト/水口アツコ

 お金にまつわる都道府県別ランキングをみてみると、「やっぱりね~」と納得の順位のところがある一方で、「えっ、そこ!?」と驚く順位の都道府県も……。

「ランキングを見比べていくと、その背後にさまざまな事情がからみあっていることがわかってくるんですよ」

 というのは、都道府県ランキングサイトを運営している統計ジャーナリストの久保哲朗さん。今回はその久保さんが、お金にまつわるランキングとその裏事情についても、くわしく解説!

1年に1億円以上儲けるやり手が多いのは

 まず気になるのは、がんがん稼ぐ億万長者がどこに住んでいるかということ。

「このランキングは、確定申告で1億円以上の所得があったと申告した人の数をまとめたものです」(久保さん、以下同)

●億万長者数(国税庁統計情報2019)
1位 東京都 9213人/66.18人
2位 愛知県 1688人/22.35人
3位 神奈川県 1947人/21.17人
4位 京都府 532人/20.60人
5位 大阪府 1640人/18.62人
*人数=総数/人口10万人あたり

 ランキング上位には、東京都、愛知県など大都会を擁する都道府県が目立つ。ただし、ただ人口が多い=億万長者が多いわけではないそう。

「億万長者の割合が高いのは、地価の高い地域。地価が高いということは、いろいろな企業が集まってビジネスが盛んだということ」

 億万長者の割合が、神奈川県や大阪府より愛知県のほうが多いのは意外な気もします。左の株配当でも2位に。

「愛知県は製造業が盛んで、このところ景気がいいです。そのおかげでしょう」

こまめに株を売買して利ざやを稼ぐ「東京」

「株で儲(もう)ける方法には2種類あるんです」と久保さんは指摘。

「設ける方法のうち、ひとつはいわゆるトレーダーですよね。株を売ったり買ったりして、そのときの利ざやで稼ぐ方法。この株式売買による儲けが主な収入になっている人のランキングがこちらですね」

●株式売買生活者数(国税庁統計情報2019)
1位 東京都 1万7227人/1.24人
2位 奈良県 1263人/0.95人
3位 神奈川県 8256人/0.90人
4位 愛知県 6310人/0.84人
5位 兵庫県 4557人/0.83人
*人数=総数/人口1000人あたり

 人数も割合もダントツで1位の東京都をはじめ、大都市を抱える都道府県が目立つ。売り買いしては利ざやを稼ぐ都会人の姿が目に浮かぶランキングだ。

巨万の株配当でのんびり暮らす「奈良」

「もうひとつの株で儲ける方法、それは、株を持ち続けて配当金をもらうこと。こちらのランキングは、その配当金が主な収入源という人の割合です」

●利子・配当生活者数(国税庁統計情報2019)
1位 奈良県 4030人/3.03人
2位 愛知県 2万2340人/2.96人
3位 東京都 3万9003人/2.80人
4位 兵庫県 1万4042人/2.57人
5位 香川県 2345人/2.45人
*人数=総数/人口1000人あたり

 配当金で食べていくなんて夢のまた夢では……。

「山ほど株を持っていて、その配当をもらいながらのんびり働かず暮らしている人が西日本にはけっこういるんです。ランキングのトップは奈良県

 ちなみに奈良県民ってどんな人たち?

「データでは、専業主婦率が高く、貯蓄が日本一多く、子どもの教育にかける費用も日本一。昔ながらのライフスタイルを守りながら、地味だけどすごく堅実に財産を築く、そんな県民性がうかがえますね」

〈ふるさと納税〉受け入れ側の順位が激変

 思わぬ事情で1年にして順位が激変することもある。その代表格がふるさと納税受入額ランキングだ。ふるさと納税とは、応援したい自治体に寄付をする制度。寄付の額に応じて、税金が軽減されるほか、お礼の品がもらえることも魅力だ。

●ふるさと納税受入額(ふるさと納税に関する現況調査等2019)
1位 北海道 660.5億円
2位 鹿児島県 311.7億円
3位 佐賀県 266.4億円
4位 宮崎県 264.2億円
5位 大阪府 254.2億円

「2018年までトップだったのは大阪府でした。これは、財政危機に陥っていた大阪府泉佐野市が返礼品を大盤振る舞いすることでふるさと納税を集めまくり、2018年には受入額が497億円にのぼっていたことが大きかったんですね。ところが、こういうやり方が総務省の怒りを買い、やめるよう指導されて……。2019年の受入額は184億円とそれまでの半分以下に落ち込んだのです。その結果、2019年に大阪府は5位に転落」

 グルメ特産品が豊富な北海道などが上位に。

〈ふるさと納税〉こまめに寄付するのは都会人

 一方、ふるさと納税制度で寄付をする側はどうなっているのだろか。

●ふるさと納税利用者数​(ふるさと納税に関する現況調査等2019)
1位 東京都 8万4124.3人
2位 神奈川県 4万2244.9人
3位 大阪府 3万6724.7人
4位 兵庫県 2万1555.9人
5位 愛知県 2万9726.5人

「ふるさと納税を利用している人をみると、都会の人の割合が高くて驚きます。例えば東京都民は人口1万人あたり約60人がふるさと納税しているのに対して、最下位の秋田県民は1万人あたり約10人。6倍もの差がついているわけです。都会に株式売買する人が多いのと同じで、お得情報をしっかりキャッチして実践する、利にさとい人たちが都会に多いのでしょうね。一方、地方の人は、『難しいしめんどくさい』とやりたがらない傾向があります」

 ただ、利用者の割合ではなく、控除額(ふるさと納税でトクした平均額)に注目すると、神奈川県や大阪府の順位は下がり、かわりに愛知県や山梨県が存在感をみせる。

「都市部の人が収入の多寡にかかわらず少しでも得するならとしっかり制度を利用している。一方、控除額ランキングで上位の地方勢は、本当のお金持ちはしっかり制度を利用するけれど、そのほかの人は面倒がってやらない……そんな構図が目に浮かびます」

生活保護受給世帯は西日本が高めの傾向

 生活保護を受給している世帯の割合も調べてもらった。

「1位は大阪府で約5%、続いて沖縄、北海道、高知などが4%台となっています。全体的に北日本と西日本が目立ちます

●生活保護受給世帯数(被保護調査2018)
1位 大阪府 5.14世帯
2位 沖縄県 4.40世帯
3位 北海道 4.40世帯
4位 高知県 4.19世帯
5位 青森県 4.03世帯
*100世帯あたり

 経済面でみると北海道や沖縄など日本の周縁部ほど経済状況が芳しくなく、それが生活保護の受給につながっていると考えられるそう。また、大阪などの都市部も受給率が高い。貧富の差が激しく、サービス業の非正規雇用の人などがすぐに解雇されるなどして受給につながることが多いためと考えられる。核家族が多く、親類縁者に頼りづらいという問題も……。

 西日本勢が目立つことについては、「しっかりした強い女性が多いことと、日本の雇用の現状が浮き彫りに」と考察。

「西日本は女性の独立心が旺盛なのか、データで見ても女性のひとり暮らしや母子家庭が多い。ただ、現状では、女性は非正規雇用が多く、経済的に不安定な人が多いため、苦境に陥り、生活保護受給につながっている人も多いのでは」

 コロナ禍が長引くのが心配。

“髪結いの亭主”が多いのは地方

 “髪結いの亭主”とは、妻に養われている夫を指す言葉。

「国勢調査のデータをもとに、病気や休職中などのケースは除外して、妻が働いていて、夫が働けるのに働いていないという夫婦をカウントしています」

 久保さんのまとめによると、西日本勢や、中部地方が上位にランクイン。

●都道府県別髪結いの亭主(国勢調査2015)
1位 鳥取県 8.28組
2位 高知県 8.05組
3位 徳島県 7.86組
4位 島根県 7.83組
5位 長野県 7.61組
*夫婦1000組あたり

「全体的にみて、都会には“髪結いの亭主”が少ないですね。実は、もともと地方のほうが共働きが高い傾向があります。昔から地方では女性も田畑などで働くのが当たり前。100年前の大正時代のデータでは、女性の就業率は地方都市などが80%ぐらいで、東京は20%ぐらいだったんです。その延長といえます」

葬儀費用が高いのは中部~東北

「葬儀にお金をかけているのは、基本的に本州の中央部から東北にかけての地域ですね。1件の葬儀にかけるお金が全国平均で約110万円なのに対し、トップの栃木県では平均167万円です」

●葬儀費用(特定サービス産業実態調査2018
1位 栃木県 167万0482円
2位 長野県 152万6158円
3位 山梨県 150万5160円
4位 福島県 146万432円
5位 滋賀県 143万3279円

 こうした地域は、貧困率や生活保護受給率が低い傾向。

「金銭面で余裕がある地域ということなのでしょうね。やはり生活に余裕がないと、葬儀にお金をかけるのが難しいということなのでしょう」

 また、同じ地域は結婚式にもお金をかけている。

 なお、経済面以外にも地域のしきたりなどによっても、葬儀費用や結婚費用は大きく変わる。冠婚葬祭に費用をかけない=貧困の表れとは限らないので注意。

(構成/鷺島鈴香)

《PROFILE》
久保哲朗 ◎統計ジャーナリスト。東京大学卒業。統計とデータベースを組み合わせた情報を、ウェブサイト“とどラン”などで発信。雑誌やwebにも寄稿している。『統計から読み解く 47都道府県ランキング 消費・子供・スポーツ編』など統計に関する著書多数。