五輪・パラ関連イベントで楽しげだった森喜朗組織委会長と小池百合子都知事(2019 年6月)

《それじゃあ、そういうふうに承っておきます》

 2月4日、いわゆる「女性蔑視」ととれる発言への謝罪会見に立った東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長。報道陣との質疑応答では「会長職が適任か」の質問に対して、森会長は《さあ? あなたはどう思いますか?》と逆質問するも「適任ではない」と返されると憮然とした表情で冒頭のように答えたのだった。

 翌5日には、小池百合子都知事も「私自身も絶句し、あってはならない発言」と五輪・パラリンピック開催の“パートナー”である森会長を批判。そして「大きな事態に直面している」と、危機感を隠さなかった。

「森さんは会見で、言葉こそ丁寧に対応するも節々からは納得していない様子で、“何が悪いのか”と言わんばかりのイライラした空気を醸し出していました。その威圧感に押されてか、森さんから“聞こえない”と聞き返されて萎縮する記者もいたほど。辞任する気はさらさらないようです」(全国紙記者)

 会見を生中継した各局のワイドショーでも、やはり注目していたのは会長職を「辞任」するかどうかだったが、まさかの“居直り”に出演者は苦笑いするしかなかった。

自分が東京五輪を開催した

「先日も“コロナがどういう形でも必ずやる”と発言して大顰蹙(ひんしゅく)を買った森さん。今の彼には“自分が五輪を開催した”という歴史的“レガシー”を残すことしか頭にないのでしょう。会見の様子は世界でも報じられ、各国で《会長は辞任しない》という見出しが躍っています。このままでは森さんが辞める前に世界中のアスリートが参加をボイコットするかもしれませんね」(前出・全国紙記者)

 五輪・パラの開催可否について「一番の大きな問題は世論」と語っていた森会長だが、どうやら自身に対する「辞めてほしい」という世論は聞こえていないよう。しかし、言うまでもないが「辞任」とは「自ら申し出て辞める」ことで、あくまでも森会長自身が進退を決めて「会長を辞めます」答えを出すことだ。

 では、森会長の意思に関係なく有無を言わせずに辞めさせること、「解任」することはできるのだろうか?

「一般企業で言えば、代表取締役や会長職を解任する場合、株主総会や取締役会を開いて解任案を提出し、多数決で過半数をとれば可決されます。ただし、会長解任となれば企業を揺るがしかねない大事件。例えば『日産自動車』前会長のカルロス・ゴーン被告のような“重大な背任行為”に当たる理由が求められます」(経営コンサルタント)

 社会派ドラマでもはしばしば描かれる“解任劇”。森会長が大好きなラグビーを例にすると、2019年放送の『ノーサイド・ゲーム』(TBS系)では、「日本蹴球協会」で絶対的な権力を振るっていた会長が、ラグビー界の改革を進めたい専務理事に反旗を翻され、理事会で「会長職の解任」を提案される。すると不満を抱えていた理事らが賛同し、賛成多数の可決により会長職を解かれたのだ。

 ちなみに同年4月、実際の「公益財団法人日本ラグビー協会」の定例理事会で同協会の名誉会長を辞任していた森会長。一部報道では「組織の若返りを図って」との退任理由で潔さを見せていたのだが……。

ドラマとは少々違う「解任劇」

 ラグビー協会と同様に、「公益財団法人」である東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会。「理事職を失するには辞任か解任のいずれかの方法によります」とは、『汐留パートナーズ司法書士法人』の代表司法書士・石川宗徳氏。実際の“解任劇”は一般企業やドラマでのあり方とは少々異なるようで。

「まずは理事会を開催して“解任に関する議案を評議員に諮(はか)ること”を決議した後、評議員による評議委員会で再び解任の決議をとる流れになります。厳密には理事会ですぐに解任を決めるのではなく、評議会での決議を伺うための意思決定をすることになります」

 公益財団法人では、理事会の他に監事1名以上、評議員3名以上、また会計監査人を設置する義務がある。この評議員が「解任案」を決議するとその場で“職”が解かれ、当人はこれを拒否することはできないようだ。とはいえ、何でも解任できるわけではなく、財団法人に関する法律で、

1.職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき
2.心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき

 と定められている。森会長はこれらに該当しているといえるのだろうか。

「義務というところで、“会長職として義務を果たしていない”と判断されることはあるかもしれません。今回の女性蔑視に関する事案が会長職として、あるいは“当法人の理事としてふさわしくない”と判断された場合は解任もありうる話だと思います。解任は手順が多いですから、辞任の方がスムーズではありますね」(石川氏)

 では、辞任を“拒否”し続ける森会長が解任される動きはあるのか。

 公益財団法人東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会・広報局広報部戦略広報課に聞くと、森会長の案件で問い合わせが殺到しているのか「質問はメールで対応」とのこと。「会長職を解任できるのか」その際には「どのような手順を踏むのか」などの質問を送ると、メールで回答が寄せられた。

 以下が、組織委員会の答えだったーー。

《理事等役員の解任手続きは以下の定款に記載されております。》と、公式HP上の「定款・規程」の項目のURLが添えられ、その内容が記されていた。

《・以下のとおり、評議員会の権限の1つに理事の解任があります。
(理事を解任された場合、同時に、理事の地位を前提とした会長の地位も失います。)

(権限)

第16条 評議員会は、次の事項について決議する。

(1)理事、監事及び会計監査人の選任及び解任
(2)理事及び監事の報酬等の額
(3)評議員に対する報酬等の支給の基準
(4)貸借対照表及び損益計算書(正味財産増減計算書)の承認
(5)定款の変更
(6)残余財産の処分
(7)基本財産の処分又は除外の承認
(8)重要な財産の処分又は譲受け
(9)重要な事項として理事会が評議員会に付議した事項
(10)その他評議員会で決議するものとして法令又は本定款で定められた事項があったものとみなす。

・この場合、決議に必要な賛成数は過半数(21条1項)となります。

(決議)

第21条 評議員会の決議は、決議について特別の利害関係を有する評議員を除く評議員の過半数が出席し、その過半数をもって行う。

2 前項の規定にかかわらず、次の決議は、決議について特別の利害関係を有する評議員を除く評議員の3分の2以上に当たる多数をもって行わなければならない。

(1)監事の解任
(2)評議員に対する報酬等の支給の基準
(3)定款の変更
(4)基本財産の処分又は除外の承認
(5)その他法令で定められた事項

3 理事又は監事を選任する議案を決議するに際しては、各候補者ごとに第1項の決議を行わなければならない。理事又は監事の候補者の合計数が第23条に定める定数を上回る場合には、過半数の賛成を得た候補者の中から得票数の多い順に定数の枠に達するまでの者を選任することとする。

4 前3項の規定にかかわらず、一般法人法第194条の要件を満たしたときは、評議員会の決議があったものとみなす。

・なお、以下のとおり、理事会の権限の1つに、会長の解職があります。

(権限)

第31条 理事会は、本定款に定めるもののほか、次の職務を行う。

(1)当法人の業務執行の決定
(2)理事の職務の執行の監督
(3)会長、副会長、専務理事及び常務理事の選定及び解職
(4)その他理事会で決議するものとして法令又は本定款で定められた事項

・この場合、決議に必要な賛成数は過半数(34条1項)となります。

(決議)

第34条 理事会の決議は、決議について特別の利害関係を有する理事を除く理事の過半数が出席し、その過半数をもって行う。

2 前項の規定にかかわらず、一般法人法第197条において準用する一般法人法第96条の要件を満たしたときは、理事会の決議があったものとみなす。

何とぞよろしくお願いいたします》

森会長の“友人”らも理事に

 簡単にまとめると、評議会、理事会における決議で過半数が得られた場合に森会長を解任することができるのだ。

 大会組織員会の役員に名を連ねるのは、経団連名誉会長で『キャノン』CEOの御手洗冨士夫名誉会長をはじめ、「最後まで全うして」と擁護したJOCの山下泰裕会長ら副会長6名に監事は2名。理事には作家の秋元康氏、福岡ソフトバンクホークス会長の王貞治氏、馳浩衆議院議員、丸川珠代参議院議員、スポーツ庁長官の室伏広治氏ら、専務理事等も含めた28名。評議員には日本サッカー協会の“ドン”川淵三郎氏ら6名が名を連ねている。

 果たして、世論を汲んで動き出す評議員、理事は何人いることやら。