世の中には「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」だけでなく、「ヤバい男=ヤバ男(ヤバダン)」も存在する。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、芸能人や有名人の言動を鋭くぶった斬るライターの仁科友里さんが、さまざまなタイプの「ヤバ男」を分析していきます。
勝地涼、前田敦子

第15回 勝地涼

 元AKB48・前田敦子(以下、あっちゃん)と俳優・勝地涼が離婚協議入りしたことが報じられました。昨年6月、『女性セブン』が夫妻の別居を報じていましたが、冷却期間をおいても修復はできなかったようです。

 離婚理由について、各メディアが報じています。

 1月31日配信の『AERA.dot』は、《前田敦子の「気の強さ」が裏目に? 夫・勝地涼が耐えられなかったこと》とあっちゃんの感情の起伏の激しさをあげています。

 2月2日発売の『女性自身』(2月16日号)は、初めての育児に追い詰められ、精神的に不安定になったあっちゃんに勝地がついていけなくなり、外に飲みに行ったり、ゲームばかりしていたと報じています。

 2月4日発売の『女性セブン』(2月18・25日合併号)によれば、二人の喧嘩がエスカレートし、勝地があっちゃんを突き飛ばして骨折させたことが離婚のきっかけになった《DV骨折離婚》だといいます。

 2月7日配信の『文春オンライン』は、勝地のお母さんとあっちゃんの間にトラブルがあったと、あっちゃんと勝地家との関係がしっくりいっていなかったと報じています。

あっちゃん夫妻は
単に「合わない」につきる

 情報が錯綜し、ネットでは「どちらが悪い、どちらがヤバい」論争に発展しているようですが、私が思うに、法律で定められている有責行為(第三者に証明できる不貞や暴力など)のない離婚は、どちらかが悪いということではなく、単に「合わない」につきるのではないでしょうか。

 いや、どちらかに悪いところがなければ、離婚しないだろうと思う人もいるでしょう。しかし、何が悪いかを決めるのは配偶者ですから、一般論があてはまるとは限りません。

 あっちゃんは母親好きを公言し、一時期は彼女の両親が暮らすマンションの別の部屋に夫婦で引っ越していたそうです。昨年、あっちゃん夫妻の別居報道があったとき、私は週刊女性PRIMEの連載で「女のマザコンは、結婚生活が難航しがち」と書きました(記事タイトルは《前田敦子、母と癒着する「女のマザコン」のヤバさが勝地涼の“逃走”を招いたか》)。

 記事に対して誤解が生じたようなので念のため申し添えますと、育児を実家に手伝ってもらっている人やお母さん大好きな人を“女のマザコン”と言っているわけではありません。初めての育児、そして二人とも仕事をしているわけですから、周囲が助けなければ、行き詰まることは目に見えています。親でも親戚でも近所の人でも、使えるものはすべて堂々と使ってほしいものです。

“女のマザコン”は
みんな離婚してしまうのか?

 “女のマザコン”とは「妻の母親が若夫婦の生活を差配、もしくは支配することを妻が容認して、夫の優先順位を下げている」状態を指します。実家はあくまでも若夫婦をヘルプするはずなのに、お母さんが「こうしなさい、ああしなさい」と方針を決めたり、夫に「そういうことはやめてくれ」「もっと〇〇してくれ」と命令するようになると、夫婦仲がヤバくなってもおかしくはない。

前田敦子、ドラマ打ち上げで超ご機嫌8時間の宴で朝帰り('16年5月)

 しかし、“女のマザコン”がみんな離婚しているかというと、そうとも言えないのです。週末は妻が子どもと実家に帰ってしまい、子どもの誕生日やクリスマス、お正月も実家で祝っていて夫は呼ばれないという家庭を知っていますが、それでも離婚しない人はしない。夫側が「自分が育児をしないですむ、妻の機嫌がいい」「妻の実家は金持ちで、生活丸抱えで助かっているから文句は言えない」など、そういう生活にメリットを感じていれば、離婚は避けられるのです。はたから見ておかしな夫婦でも、当事者二人にとっては違和感がない。これが相性というものだと思います。

 あっちゃんが“女のマザコン”だと仮定しましょう。勝地の実家は資産家だと言われています。自身も売れっ子俳優ですから、妻の実家に経済力を期待するということは考えにくいでしょう。また、お坊ちゃんとしてかわいがられて育ってきたでしょうから、自分中心でない生活に不満を募らせることもあったかもしれません。このように相手次第で受け止め方が違うのが、結婚の面白さ、もしくは難しさなのだと思います。

勝地はまだ結婚する
タイミングではなかった

 もう1つ、結婚生活を左右するのが“タイミング”ではないでしょうか。結婚していいときと悪いときというものがあり、とくに勝地はまだ結婚するタイミングではなかったように思えてならないのです。

 勝地は2020年11月21日放送の『人生最高レストラン』(TBS系)に出演しましたが、この番組での発言を、相性とタイミングという観点で見てみましょう。

 彼は堀越高校時代から生意気で、売れていない時代に芸歴ではるかに先輩の俳優・小栗旬を「おまえ」呼びしてつかみあいのケンカになるなど、かなり生意気なご性格のようです。対するあっちゃんはどうかというと、2019年6月5日放送の『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)で、夜中に探し物をしているとパニックになって、勝地を叩き起こして一緒に探しもらうと話していたようにメンタルが不安定なタイプ。

 こういう激しやすい二人は短期間一緒にいるのなら問題はなく、不安定なところが(一瞬)かわいく思えたり、オラついたところが(一瞬)頼もしく見えたりします。しかし、結婚は長く生活をともにするのが前提ですから、すぐに激高する妻と、血気盛んな夫は相性がいいとは言えないでしょう。

自分のヤバさを知ることで
相性のいい人を選べる

 勝地の大ブレイクのきっかけは、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』で演じた「前髪クネ男」ですが、あの演技は、先輩である古田新太の演技指導を受けて生まれたそうです。いわば古田は彼の“恩人”なわけですが、古田は先の『人生最高レストラン』で勝地に「もう先輩なんだから、後輩を優しく見ろ」とアドバイスしていました。勝地も「古田さんはアメとムチの使い方がうまい」「僕はムチしか持ってない、厳しく言ってしまう」と自分の足りない部分を認めていました。

プライベートの勝地涼('13年)

 結婚生活は助け合いですから、後輩の面倒を見られない人は向かないと思うのです。それでは、なぜ勝地は後輩の面倒をうまく見られないのでしょうか? それは彼自身が今、仕事をがむしゃらに頑張る時期で、周囲を客観的に見る余裕がないのだと思います。多くの人は自分に自信がつくと自然と周囲にも優しくなれますから、勝地もそうなってから結婚するのが、タイミングとしては適切だったのかもしれません。

 外野がいろいろ言ってもすべては後の祭りですが、結婚は優れた人がするものではありませんし、離婚は失敗とも言いきれないことは確かでしょう。人はみんなヤバいものだと私は思っていますが、自分のヤバさを知っていれば、相性のいい人を選ぶことができます。また、自分がヤバいと夫婦それぞれが自覚を持てば「ヤバいのはお互いさまだよね」と結婚生活のヤバ化を防ぐこともできるでしょう。

 結婚願望のある人は、どうか考えすぎず、相性とタイミング、そして自分のヤバさをよく見極めていただきたいものです。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」