布施博。便利な方法はないかと今でも「裏ワザ本」をたまに読み返すという

「隔週で撮影していたんですが、その間の2週間で1000通以上の裏ワザの投稿があったそうです」

 1997年から約10年も視聴者に愛された『伊東家の食卓』(日本テレビ系、以下、『伊東家』)の人気ぶりについて語るのは、出演者のひとり、布施博だ。

『伊東家』は、生活に役立つ、視聴者投稿の”裏ワザ”を紹介する番組。伊東四郎を父役として、母・五月みどり、長女・RIKACO、長男・三宅健(V6)、次女・山口美沙という設定で進行。

 布施はRIKACOの夫という役どころだった。『君が嘘をついた』(フジテレビ系)などトレンディドラマでブレイク後、役者としての活動が主でバラエティー出演はほぼ初。オファーが来たきっかけは?

「その当時のマネージャーが“こういう仕事があるからやってみないか”と持ってきてくれたのがきっかけですね。キャストも伊東四朗さんが中心で、安心感もあったからマネージャーが持ってきたんだと思います」

 裏ワザ紹介のイメージが強いが、実は番組開始当初は内容がまったく違っていた。

「初めのころは裏ワザは単なる1コーナに過ぎなかったんです。どちらかといえば、わが家でこんなことがありましたっていう視聴者からの投稿を伝えるような、ほのぼのした感じだったんですよ。あまり視聴率は伸びていなかったらしくて、はじめの半年くらいはテコ入れで内容が二転三転してました。そのうちに”裏ワザ”がどんどん人気になっていって。半年後にはみなさんに記憶のある裏ワザ紹介番組として定着しましたね」

目からウロコの裏ワザ

 覚えている裏ワザはある?

「ありますよ、たくさん。特に目からウロコが落ちたのは、風呂上がりにバスタオルを腰に巻くとき、上の方を外側に折り返すとずり落ちない、ってやつ。スタジオでけっこう激しいダンスを踊っても全く落ちなかった。これは未だに使ってますね。無意識でやってるくらい」

 ハマった裏ワザもあった。

Tシャツに好きな写真をプリントできる裏ワザも結構やりましたね。写真をカラーコピーで拡大して、糊をつけてアイロンでシャツに押し付けたら転写されるっていう。面白くって家でも何十枚って作っちゃったよ(笑)。子どもの体操着に名前を書くときに、白のチョークであらかじめ下書きをしたうえに油性ペンで書くと洗濯してもにじまない、とかね。どこからそういうものを発見してくるのかなって。シンプルであればあるほど、驚きは大きかったな」

 裏ワザを実際に試す出演者のリアクションは全部本物。

「台本には裏ワザがどんなものかって書いてあったけど、実際のVTRを見たり、スタジオで実践してみるのは本番だけ。基本、出演者はみんな素のリアクションです。誇張がない。だから、すごい裏ワザは“本当にすごい!”ってスタジオみんなではしゃぐけど、“これはあんまり…”っていうのはテンションの差がぜんぜん違う。でも、それもそのままテレビで流してましたよ(笑)」

 伊東を中心とした、裏ワザについてのにぎやかなやりとりも印象的だった。

「長くやっている番組には言えることだと思うんですけどね。やっぱり回数を重ねるごとに、みんなの距離感はすごく近くなりましたね」

裏ワザ企画は伊東家が“元祖”

 驚きの裏ワザを楽しく紹介するスタイルが人気を呼び、1999年の年末特番では27.4%という視聴率を叩き出すほどに。

「自分自身も当初は長く続くとは思っていなかったし、周囲からも”そんな番組すぐ終わるよ””おばあちゃんの知恵袋を紹介するだけの番組で、数字なんて取れるわけないじゃないか“なんて言われていたみたいで。だけどなんだかんだで10年続いて、その後に裏ワザ的な番組や、番組内のコーナーが増えたと思いますね。裏ワザっていう言葉が世に広まったのは、伊東家の影響がすごく大きいと思う」

『伊東家』には子どもから大人、おじいちゃんおばあちゃんまで全世代が見られる安心感があった。

「当時、そういうタイプの番組は伊東家ぐらいだったと思います。いま20代後半~30代の若い人たちに、けっこう”楽しく見てました”って話されることが多くて。かと思いきや、俺ぐらいの50代とかそれ以上の人たちからも見てたって言ってくれる。もう終わってから10何年もたつけど、未だにいろんな世代がいい番組だったって言ってくれるってことは、本当に質のいい番組だったんだろうなって思います」

 広い世代に愛された『伊東家』。紹介された裏ワザは、今もあなたの家で活躍しているかも…!?