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「新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の新規感染者数はまだまだ予断を許しません。今後も、入院できずに自宅療養をせざるをえない状況は続くでしょう」

 そう話すのは、感染免疫学の専門家で白鴎大学教授の岡田晴恵さん。

新規感染者はおのずと自宅療養に

「新型コロナ患者は入院が長引く傾向にあり、病床使用率が依然高い状態が続いています。ベッドが空かなければ、次の人は入院できない。新規感染者はおのずと自宅療養になってしまうんです」(岡田教授、以下同)

白鴎大学教授・岡田晴恵さん

 現在、優先的に入院できるのは65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人だ。

「高熱があっても血中酸素濃度が96%を下回らなければ“軽症”に分類されます。そのため熱が38度、39度と出て、咳や倦怠感があっても入院できるとは限りません」

 多くの人が高熱でつらくても入院できず、自宅待機を強いられているという。身体を動かすこともままならない。感染を広げないために、買い物も行けない。そんな状況になってから準備をしようと思っても間に合わない。生き延びるためには、元気なうちに備えておくことがカギとなる。

 そこで、前出の岡田教授に自宅療養のための心がけについて聞いた。

「まず、自宅で療養するための食品や日用品などを買い置きしておきましょう」

 次ページのチェックリストを参考に準備漏れがないように気をつけよう。

 備蓄品の量は家族構成によっても異なるが、目安は人数×2週間分を用意する。また、自分や家族は何が必要なのかを事前に話し合っておくこと。

自宅療養で生き延びるための25アイテム

<日用品>
□ティッシュペーパー
□石けん、ハンドソープなど
□アルコールや除菌スプレー
□塩素系漂白剤
□使い捨てマスク(1人につき1日2枚は消費)
□使い捨て手袋(1日4枚は消費)
□レインコート
□各種サイズのビニール袋(ゴミ袋サイズ、コンビニ袋サイズなど)
□ゴーグル(もしくはめがね)

<食料品(最低でも2週間分)>
□主食(お米やうどん、シリアルなどの食べやすいもの)
□菓子類(特にチョコレートやビスケットなど)
□ゼリー状栄養補助食品
□レトルト食品、インスタント食品・缶詰(果物など)
□冷凍食品(電子レンジで調理できるうどんなどあると便利)
□経口補水液
□スポーツ飲料(粉末状のもの含め)

<薬剤>
□総合風邪薬
□解熱剤
□水まくら・冷却ジェル
□うがい薬
□常備薬
□体温計(予備含め2本あるといい)

<その他>
□飲料水
□多少の現金
□パルスオキシメーター

※注意 自宅待機で必要になる備蓄品は家族構成で変わる。上記のほかに自分の家族には何が必要なのかをよく話し合い、事前に用意しておくこと。

  ◇   ◇   ◇  

「インスタントのみそ汁や粉末状のスープなどは宿泊療養先でも重宝するので、備蓄に入れておくといいでしょう」

 これらは新型コロナだけでなく、地震や台風などの災害時でも活用できる。この機会に備えておいても損はない。

看病のため準備しておくべきもの

 次に看病をする際の準備もしておこう。

「看護する側のために、飛沫を防ぐマスクとゴーグル(もしくはめがね)を必ず用意しておくこと。消毒薬や石けん、洗剤もストックし、家庭内での二次感染防止を徹底させましょう。体温計や体内の酸素飽和度を測るパルスオキシメーターもあるといいです」

パルスオキシメーター

 普段から服用している薬のほか、市販の風邪薬などの常備薬も用意しておく。

「風邪薬は新型コロナの治療が目的ではなく、風邪の症状をおさえて体力の消耗を和らげるため。睡眠も確保できて回復につながります」

 解熱剤はアセトアミノフェンの成分が配合された総合風邪薬がベター。薬剤師によく相談してから購入しよう。

 また、高い熱が続くと、脱水症状になりやすいため、こまめな水分補給も必要になる。経口補水液や粉末タイプのスポーツ飲料も準備。

 自分や同居する家族が感染した場合の看病についても話し合っておくことも大切。誰が看病するか、あらかじめ決めておいてもいいだろう。

「感染拡大防止のため、看病する人は1人と決めましょう。看病者は感染しやすいので、重症化リスクが高い妊婦や高齢者、基礎疾患のある人は避けます」

 そして重症化リスクの高い高齢夫婦世帯の場合でも入院できない想定をしておくことも必要だ。この冬、高齢者で基礎疾患がある人でも自宅療養になったケースがあった。

 次から高齢者が自宅療養で心がけたいことを説明する。

高齢者の自宅療養で注意すべきポイント

「感染者とそのほかの家族で住居スペースを分けましょう。部屋を分けるのが難しければ、感染者と2メートル以上の距離を保って生活してください。仕切りやカーテンを設置して直接、飛沫を浴びないように工夫をすること。そしてよく換気をしましょう」

 どうしても同じ部屋で寝なければならない場合には頭の位置を互い違いにするなどして、なるべく顔が向き合わないように注意を。

 風呂は常時換気をし、感染者は最後に入浴すること。洗面所やトイレは使った後は速やかに家庭用洗剤で清掃し、こまめな消毒も忘れずに。

高齢者夫婦のどちらかが感染したら…自宅療養で注意すべきポイント

 感染者が使用したマスクや鼻水をかんだティッシュなどにはウイルスが付着している。

「ゴミの捨て方は“袋は二重にする”“ゴミに直接、触れない”“袋はしっかり縛って封をする”“捨てた後は速やかに石けんで手を洗う”。この4つを心がけてください」

 これらを守ることで、ゴミを扱う清掃業者や近隣住民らの感染防止にもなるのだ。

 感染者が着用していた衣類やシーツ、枕などにも咳などでウイルスが付着している場合がある。そのため、1日1回は洗濯をしよう。ほかの家族のものと一緒に洗濯してもいいが、洗濯を行う人はマスクとゴーグル、手袋をつけて、感染防止に気をつけよう。

 汚れた衣類やリネンは80度以上の熱湯で10分間消毒し、洗濯するとなおよい。洗濯物は屋外に干してもOKだ。

「看病者の衣類にも、ウイルスが付着している可能性があります。必ず洗濯し、手も石けんでよく洗ってください」

 そして棚やリモコン、ドアノブなど感染者と看病者が触れたものは、必ずすべてこまめに消毒。家庭内感染を防ぐ大切なポイントだ。

急変・悪化に備え、経過観察も肝心

 気になるのは、自宅療養中の救急車を呼ぶタイミングだ。感染者の2割が発症後7日~10日くらいで肺炎が重くなるとされている。血管内に血栓ができ、心筋梗塞や脳梗塞などを併発する症状も報告されているため、経過観察も欠かせない。

「経過記録表を必ずつけること。体温はもちろん“いつ、どんな症状が出ていたのか”を記録して正確な情報を残しましょう。これは救急搬送や入院となったときに、医療従事者が状況をすぐに把握できるようにあると便利です」

 記入は朝、昼、夜の1日3回。食事をどれくらいとれたかも、重要な記録になるので忘れずに。

 特に『ショック状態』は絶対に見逃さないように。これは血圧が低下し、血液が全身に行き渡らなくなるため、生命の危機に瀕する。次の5つのいずれか1つでも見られたらすぐに救急車を呼ぶ。

(1)顔色が青白い
(2)呼吸が浅くて速い
(3)脈拍が弱くて速い
(4)皮膚が冷たく湿っている
(5)ぐったりしている。

「こうした状況を見逃さないためにも注意深くフォローすることが大切です」

 救急車を呼ぶときは、救急隊員に落ち着いてはっきりと簡潔に状況を伝えたい。

「自宅療養中に急変・悪化した場合、どのような対応をとったらいいのか。自治体で取り決めがありますから、事前にその流れも確認しておきましょう。重症化リスクのある人は、軽微な熱や咳でも早めにかかりつけ医師の指示を仰ぐことが肝心です」

 収束の見えない新型コロナの猛威。いざというときでも落ち着いて行動できるよう、事前の準備を心がけたい。

宅配を利用するとき

■基本的には「置き配」

 買い物に行くのが厳しいときはネットスーパーやインターネットサイトを利用するのも手。非対面での受け取りが可能な“置き配”を利用して、周囲への感染防止を心がけよう。

(1)玄関先に「ここに置いといてください」などの張り紙をしておく。地面に置かれることに抵抗があれば、新聞紙や段ボールなどをあらかじめ敷いておく。

(2)宅配便を受け取ったら、除菌スプレーをかけて消毒してから家の中に持ち込む。不安があり、急ぎでなければ2~3日は玄関に放置して、細菌やウイルスを不活性化させる。

■どうしても受け取りが必要なとき

 宅配業者らと対面するときは必ずマスクをして対応すること。署名が必要な場合は自分のペンを使い感染のリスクを減らす。本人確認用の書類や代引きのお金もおつりがないように用意しておくこと。


お話を聞いたのは
岡田晴恵さん(感染症の専門家)
白鴎大学教育学部教授。医学博士。専門は感染免疫学、公衆衛生学。主な著書に『どうする!?新型コロナ』(岩波書店)などがある。また、テレビ出演や講演も多数

参考にしたのはこの本!
『新型コロナ自宅療養完全マニュアル』1320円(税込み)
新型コロナの基礎知識から、感染して自宅療養をせざるをえない場合の対応や心構えなど感染相策を完全網羅。実業之日本社刊

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