ジャッキー・チェン

常にトンデモなニュースを発信し続ける中国。世界じゅうで話題となった“パクリ遊園地”を100か所以上も訪れている辺境マニア・関上武司が、最新版“あり得ない”中国ニュースをピックアップ!

トップ女優「育児放棄」騒動その後 

 中国版『花より男子』で主演を務めた清純派女優のジェン・シュアン(鄭爽)が女優生命のピンチに陥っている。元夫で若手人気俳優のチャン・ハン (張恒)との結婚期間中に、米国で代理出産により2児をもうけたものの、離婚。その後、育児放棄をしたことが明るみに出て、プラダをはじめスポンサーは次々と契約を打ち切り、出演作品はお蔵入りとなった。

中国では代理出産は法律で認められていません。そのうえ、親族を非常に大切にするのが中国人です。春節(旧正月)の里帰り=民族大移動の様子が、それを端的にあらわしていますよね。それゆえ、このような代理出産&育児放棄といったスキャンダルについては、彼らの怒りもすさまじいのでしょう」(現地在住の報道関係者)

 近年の中国芸能界のギャラは高騰していることから、若手トップ女優のCM打ち切りや出演作品の公開中止による違約金は天文学的な額になる模様。所属事務所だけでなく、彼女自身にも火の粉が降りかかることは必至だ。

 その影響なのか、事実が発覚後、ジェン・シュアンは1月22日には上海の自宅マンションを売り払っている。その額、なんと1.3億元(約21億円)! すぐに買い手がつくのもスゴイ話だ……。

 騒動から約1か月が経過したが、ジェン・シュアンとチャン・ハンの双方は代理出産についての回答をしていないものの、ジェン・シュアンの育児放棄の姿勢と女優業の危機は何ら変化がない状況だ。

 2月16日、チャン・ハンのFacebookアカウントの写真などがほぼ削除。原因は不明だが、ネットでは「今、チャン・ハンは注目されたくないのだろう」といった推測をされ、ジェン・シュアンとの和解の可能性があるという大胆な予想も報じられている。

 現在、ジェン・シュアンは放送・上映禁止になった出演ドラマ、映画やスポンサーへの損害賠償問題といった処理に追われて多忙とのこと。さらに税金の問題や、以前出演した抗日ドラマへの不適切な発言も追及されている。

 代理出産とはいえ、罪のない2名の幼児の尊い生命は今後、どうなるのであろうか? 健やかな成長を祈るばかりだ。

ジャッキー・チェン
替え玉はまさかのアニメ

 2021年2月12日、中国の『春晩』(旧暦の大みそかに放送される、大型エンターテイメント番組。日本でいう『NHK紅白歌合戦』のようなもの)にジャッキー・チェンが出演し、複数の芸能人と合唱を披露した。

 ジャッキーは世界で最も成功したカンフースターともいえるが、以前から中国政府よりの発言が目立ち、隠し子への養育費不払いといったダメ人間ぶりから、香港や台湾では急速にイメージダウンしている。

 近年のジャッキー映画ではいちばんの魅力であるはずのアクションで精彩を欠き、日本公開が決定している最新作『急先鋒(ヴァンガード)』も、なんと中国版ゴールデンラズベリー賞(最低映画を決める祭典)といわれている「金掃箒奨(金のほうき賞)」にノミネート。あの国民的英雄がここまで堕ちたか感はぬぐえない。

 実際、現在のジャッキーに対する中国人の評価は「以前のような高難度アクションができなくなった」「年を重ねるごとに映画の質が低下した」などと手厳しい。

 '17年公開の最新作『カンフー・ヨガ』(中国・インド合作映画)は中国で17億5300万元(日本円で約285億2800万円)の興行成績を記録。ジャッキー主演映画としては最高額の興行成績を記録したものの、冒頭部分の10数分はジャッキーの実写風アニメだった。本編も人気若手俳優やインドのダンスシーンが多く、本人のアクションは大幅に減少している。

 さすがに70歳近くになったジャッキーにアクションのクオリティーを要求するのは酷であろうが……。そろそろ第一線から身を引いて監督業やプロデュース業に専念し、後進を育成してもよいころなのかも。

「上海にはジャッキー・チェンの博物館があるほどの国民的スター。映画のシーンを再現したブースがあるなど、ファン以外でも楽しめる観光名所になっています」(上海在住者)

 中国におけるジャッキーのあだ名は「兄貴」を意味する「ダイゴー(大哥)」。晩節を汚すことなく、いつまでもみんなの兄貴でいてほしいもの。

ミネラルウォーターでコロナ撃退⁉
驚愕の偽「ワクチン」事件

 日本国内でも医療関係者を中心に新型コロナウイルスのワクチン接種が開始されたが、副反応などに不安を抱える人も多い。中国ではそれどころではないトンデモ事件が起きている……。

 2月15日、中国の警察当局は新型コロナウイルスの偽ワクチンの製造・販売をした70人余りを逮捕、北京、江蘇省、山東省などで生産拠点を摘発した。

 容疑者らは2020年9月から偽ワクチンを製造し、1800万元(約2億9千万円)で販売。偽ワクチンの原料は生理食塩水が使われていたが、そのうち生理食塩水が足りなくなり、ミネラルウォーターで代用。製造は自宅やホテルの一室などで行っていたという。

 なお、この偽ワクチンの一部が国外に持ち出されているなど悪質きわまりない犯行。だが、容疑者は警察の取り調べに対し「だって、儲(もう)かるんだもん!」とのこと……。確かに、この原料ならボロ儲けだ。

 ワクチンを発展途上国にも供給している中国政府。国家的威信を失墜させるとして神経をとがらせていることから、容疑者は厳罰を免れないだろう。

「偽物といえば中国」という不名誉なイメージをさらに厚塗りするかのような今回の事件。だが、実際に中国の食品や薬品の偽造事件は後を絶たず、最近でも偽タピオカの原料が古タイヤや偽物高級米の原料がプラスチックだった、なんてことも。今後、偽ワクチンの類似事件も発生するだろう。

 かつて毛沢東は「中国人は6億人(当時)いるから、半分死んでも3億人は残るのだから、恐れる必要はない」と語ったという。この言葉が示すように、命の重さの感覚が日本人と違うのかもしれない。

 ただ、中国はよくも悪くもダイナミックかつスピーディーなので、新型コロナウイルスへの対応も迅速だった。犯罪は言語道断だが、この行動力だけは日本も見習ったほうがいいのでは?

PROFILE●監修・関上武司(せきがみ・たけし)●1977年、愛知県生まれ。愛知大学経営学部卒。中国で留学や駐在員としての勤務経験あり。中国遊園地の取材で中国の全省、全自治区、全直轄市を訪問。『中国遊園地大図鑑』(パブリブ刊)シリーズを執筆し、各メディアで話題。