イラスト/アライヨウコ

 家で過ごす時間が増えている今、部屋中がものであふれて片づかないというお悩みが急増中。なかには、片づけできない性格なのでと諦めている人もいるようだが……。

「部屋が片づくかどうかを決めるのは〈物の量〉と、〈収納スペース〉という物理的な問題のみ。性格は全く関係ありません」

 そう断言するのは、科学的な片づけメソッドが話題の東大卒収納コンサルタント、米田まりなさん。

「そもそも日本の家は、世界的に見ても狭い。さらに国内でも地域差が大きく、例えば東京都の平均的な家屋の広さは、茨城県と比べて3分の1ほど。片づかないのは、広さに対してものが多い可能性があることを念頭におく必要があります

 物理的な問題点がわかれば、家の広さに合った収納に必要なことはどんなことかに気づくきっかけにもなる。

まずは家の収納キャパシティーをチェック、次にものを時系列に振り分けながら量を把握、そして、使用頻度別に使いやすい場所へ8割収納を徹底。米田式片づけメソッドで、リバウンドしない片づいた部屋は必ず実現できます

 感覚的な判断は不要で、ルールに沿ってコツコツ進めていくだけ。片づけが苦手な人ほど、その成果に驚くはず!

リバウンドしない部屋作り4つの心得

(1)短期集中で片づけようとすべからず
 片づけは長くても1日2時間以内で、と米田さん。「それ以上行うと疲れて正しい判断ができず結局、使いづらい収納に」。急がば回れの精神で、1日1か所ずつじっくり取り組もう。

(2)片づけポイントは写真でチェック
 一見、整って見える部屋でも片づけられるポイントは必ずある。写真に撮って客観的に見ると、普段使っておらず邪魔なものや出しっ放しになっていたものに気づきやすくなる。

(3)おしゃれ収納グッズはリバウンドの原因!
 片づけの前に収納グッズを買わないこと。まずは家にある空き箱やカゴを使い、ものの定位置を決めてから、必要があればシンプルで出し入れしやすいものを購入して。

(4)片づけの前に収納のキャパシティーをチェック
 段ボール何箱分くらい収納できるかを大まかに把握しておくと、片づける際の参考になる。ものの量がスペースをオーバーしていたら、売る、預けるなどの手段も必要に。

リバウンドしない部屋作り〈実践編〉

 米田式片づけメソッドはとてもシンプル。

【1】全部出す
【2】使用頻度別に分ける
【3】定位置を決める
【4】使ったら戻す

 以上、4つのフロー(流れ)をひたすら繰り返すだけ。逆に、焦ってこの流れを1つでも抜かしてしまうと、上手に片づけたつもりでも数日後にはリバウンドする可能性大、と米田さんは言います。

「頻繁に使う場所から1か所ずつ、感情を交えず淡々と取り組むのが基本。毎週末行えば、2〜3か月で一生ものの片づいた部屋が完成します」

 また、片づけが完璧に終わるまでは、インテリアへのこだわりもいったんおあずけ。

「収納の見た目に凝るほどリバウンドしやすい。子どもでも片づけられるシンプルな収納を目指しましょう」

 初めのうちは、分け方や定位置の決め方に戸惑いがち。まず財布やバッグ、引き出しの一段(下着など)で流れを練習すると、コツがつかめる。

 ではさっそく、レッツ・スタート!

【1】全部出す

 片づけは、ものを所有する意味を定義する「整理」と「使いやすい状態に配置する「収納」、そして定位置に戻す「整頓」の3つの工程に分けられる。

 部屋が散らかっているとつい整頓から取りかかりたくなるが、整理・収納の工程を飛ばして整頓だけ行うとリバウンドの原因に。「すべてのものの内容と量を確認するのは、整理・収納の必須作業。「これはこのままでいいや」などと考えず、しまってあるものも全部出しましょう」

【2】使用頻度別に分ける

「次に、すべてのものを使用頻度別に毎日、週1回、月1回、年1回の4段階に分けます」

・今日使ったもの(日次フォルダ)
・今週使ったもの(週次フォルダ)
・1か月以内に使ったもの(月次フォルダ)
・1年以内に使ったもの(年次フォルダ)
・どれにもあてはまらないもの(保留フォルダ)

 直近でいつそれを使ったかを基準に主観を交えず仕分けする。では、1年以上使っていないものの場合はどうしたらいい?

「その場で保存、廃棄の判断を下すのは時間と労力がかかるので片づけが終わるまで保留に」

 ぬいぐるみや思い出の品も4つの分類に当てはまらないので、一担保留に。1年以上、手に取っていないものは、今のあなたには不要なのかも。飾るか収納するかは後でゆっくり判断を。すべての片づけが終わり、家の収納のキャパシティーがはっきりすることで、売る、捨てるなどの決断も下しやすくなる。

 家族のものを片づけたい場合は? 本人が整頓できなければ意味がないので、「分ける」「決める」のフローは本人同席が必須。まずは30分間だけ、笑顔で協力要請を!

【3】定位置を決める

 リバウンドしない収納の最大のポイントは、使用頻度の高いものは使う場所から手を伸ばせば届くくらいの近い位置に収納。

「もののカテゴリーにこだわらず、使うシーン別と頻度にまとめて手の届く位置に収納することで、毎日の片づけがぐっと楽に」

 使うシーン・頻度別にグループ分けしたら、ワンアクションで出し入れできるケースに立てて入れる。リビングでメイクする人はコスメも文房具と一緒に置いてOK。

 使用頻度の低い分類は箱につめて押し入れへ。使わないものをバックヤードへ収めることで身近なスペースに余裕が生まれ、出し入れしやすい収納ができる。

 ふた付きの箱は積載効率が高く、同じ面積によりたくさん収納できる。使うとき出しやすいように、使用シーン別に入れること。収納が足りない場合、ベランダやキッチンの戸棚上など、家中の空きスペースを柔軟に活用。

 たまった書類はどうすれば?

「契約書など保管義務のある書類以外は、スマホアプリなどでデータ化するのが便利。また、取扱説明書はほぼネット上で閲覧が可能。保証書以外は廃棄しても、困ることはありません」

 入りきらないものが出てきたら?

「使用頻度の少ないものは外部の収納サービスを利用することも検討を。トランクルームや宅配型など、最近は種類も増えています。預けたいものや使う頻度に合ったサービスを探してみては」

【4】使ったら​戻す

「戻す」とは、使ったものを定位置に戻す作業のこと。片づいた部屋をキープするためには、毎日行う必要がある。手間に感じるが、「分ける」「決める」のフローがマニュアルどおりにできていれば、「戻す」ことにかかる時間は、ひとり暮らしの場合では5分もあれば十分、と米田さん。

「毎日の片づけに家族の人数×5分以上の時間がかかる場合は、ものの定位置が悪いということ。見直しが必要です」

リモートワークの悩みはこれで解決!

 リモートワークの増加で、読者からよく寄せられる部屋のお悩みを、米田さんが解消します!

〈お悩み〉家族が片づけに非協力的で困る!

 家族それぞれの専用スペースを設けるのがおすすめ。片づけのストレスを軽減してくれる。例えば夫専用のスペースは、どんなに散らかされても片づけは夫にお任せするルールに。部屋を区切るのが難しい場合、個人専用カゴを用意するのも手。自分がどれだけ散らかしたかが視覚的に認識できるので、片づけを促しやすいというメリットも。

〈お悩み〉リビングで仕事をされると落ち着かない!

 書斎がなくても、寝室やリビングなどに1畳分だけすき間があれば、立派なワークスペースが作れます。用意するのは、パソコンデスクと椅子、仕事道具を保管するカラーボックスのみ。デスクは壁や窓に向けて、作業中、家族と目が合わないように配置。背中側はパーティションで区切れば、リモート会議中の映り込み予防に。

(構成/中村明子)

近著『集中できないのは、部屋のせい。』(PHP出版)※記事中の画像をクリックするとアマゾンの商品紹介ページにジャンプします

《PROFILE》
米田まりなさん ◎整理収納アドバイザー。東京大学卒業後、住友商事に入社し、2018年より株式会社サマリーに出向。自身の経験や100万人の“モノデータ”を扱うサマリーでの消費者調査に基づいた「捨てないお片づけ」を提唱。近著『集中できないのは、部屋のせい。』(PHP出版)