「頑張ってるのに貯まらない!」「節約を実践しても続かない!」それは節約方法が、あなたの性格に合っていないから。ここでは、いつもの行動から性格タイプを分析。さらにラクに実践できる貯金法を紹介します。

イラスト/水口アツコ

「誰かのまね」に節約の正解なし

 貯金上手のワザをまねしたものの続かなかったり、効果が出ない……そんな経験はないだろうか? ファイナンシャルプランナーの山口京子さんはSNSでも気軽に他人の節約術を見られる現代だからこそ、他人のやり方を正解と思い込まないことが大切だと話します。

「性格やライフスタイルに合わない方法で一生懸命に節約しても、お金を貯めるのは難しいもの」(山口さん、以下同)

 家族で食費2万~3万円など、極端に抑えられた家計の場合、実家から米や野菜をもらっているケースも。数字だけ見ないことも肝心です。

「昔の感覚」のままだと損をする

 また、山口さんは、情報がアップデートできていないと、お金が貯まりづらいと話します。

「例えば、平成2年には、郵便局の定期貯金の金利は8・648%でしたが、今は、0・002%。昔の感覚のままだと、『お金は定期預金へ預ければOK』と思いがち」

 現在の金利では、1000万円を1年間預けても、利息は税を引いて1年間で160円ほど。一方で、毎月1万円の積み立て投資をして、3%で運用できたら、1年間で利益は1600円ほど(税引き前)。少額の投資をしたほうがずっと有利なのです。

 今は、iDeCoやNISAといった制度で、税制優遇を受けながら投資することも可能。金銭的なピンチに見舞われたとき、助けてくれるのはお金の情報。

「普段から新しい情報を仕入れる。これが絶対必要です」

 節約&貯金には、まずは考え方の癖など、自分のタイプを知ることが大切。そこで、山口さんに、タイプ別の節約法を教えてもらいました。まずは次のチェックリストで診断を!

【check】まずは自分のタイプを知ろう

A~Dまでのうち、チェックの個数がいちばん多いものがあなたのタイプ。

〈A〉
□食料品や日用品は底値で買いたい
□節約さえしていれば、家計はほぼ大丈夫だと思う
□投資はギャンブル。リスクが怖い
□買い物はネットではなく、必ずお店で買いたい
□支払いは基本現金のみ

〈B〉
□クレジットカードを持つならゴールドカードがいい
□ひと目でブランドがわかる時計を持っている
□いいものを持っていないと気分が上がらない
□高いものイコールいいものだと思う
□SNSにレストランの写真をよく上げる

〈C〉
□初心者向けの投資セミナーに複数回参加したことがある
□財布に、利用期限が切れたクーポンやスタンプカードが複数ある
□流行のダイエット法があると飛びついてしまう
□家に使っていない健康器具がある
□出入金がほとんどない銀行口座が複数ある

〈D〉
□お金のことは夫にすべて任せている
□夫の収入を知らない
□自分がどんな生命保険に加入しているか把握していない
□「家族のため」と思うと財布のひもが緩むことが多い
□夫の機嫌が気になりがち

●あなたのタイプは
〈A〉がいちばん多かった人は「昭和な女子」タイプ
〈B〉がいちばん多かった人は「バブル女子」タイプ
〈C〉がいちばん多かった人は「努力空回り」タイプ
〈D〉がいちばん多かった人は「夫依存」タイプ
※複数のタイプで同じチェック数の人は、各タイプに該当

〈A〉昭和な女子タイプ

【特徴】節約命でわが道を行く!

「1円でも安いものがあるなら、遠くのスーパーへも足をのばす」など、昔ながらのやり方での節約を貫き、投資はギャンブルなので絶対にやらない。その根底にあるのは、かつてはその方法で節約ができた成功体験。「礼状は必ず手紙で」など、伝統や礼儀作法にこだわりが強い人が多いのもこのタイプの特徴です。

 また、「投資など、働く以外でお金を稼ぐのはズルすること」という思い込みも。親の世代がやってきたことを忠実に守ってきた良妻賢母タイプでもあります。

【問題点】効率化よりも努力重視では時代に取り残されます

 自分の信念を貫き通そうとするあまり、情報のアップデートが遅れがち。そのため、「マイホームを持つことが絶対に幸せ」「子どもの進学先は偏差値で選ぶ」など、昔ながらの価値観にこだわりがあり、そのための出費が家計に見合わなくなることも。

 また、節約もそれ以外も、効率よりも努力することを重視。親しい相手への礼状をメールに切り替えるなど、今までと違った簡単な方法に変えることを、「手抜き」と感じてしまい、許せません。「お金を稼ぐ人がいちばんえらい」と思っているので、「家事育児は私の仕事」と背負いがちな一面もあります。

【対策1】人生100年時代を意識しよう

「親世代とは、人生の長さが変わってきています。例えば、1975年の平均寿命は男性71歳、女性76歳(ともに端数切り捨て。以下同じ)。それが2019年には男性81歳、女性87歳。「老後」は確実に長くなりつつあります。年金内でやりくりできるかどうか、ロングスパンで考えてみてください」

 不足が出るようなら、次から紹介する方法で、節約や生活を考え直す必要があります。

【対策2】金利や投資方法の変化を知る

「今、銀行の普通預金の金利は0・001%。超低金利です。預けておくだけではお金はほぼ増えません。一方、昔は、投資はある程度まとまったお金がないとできませんでしたが、いまやワンコインから始められます

 長期分散投資で、リスクを分散しながら、少額から始められる金融商品も数多くそろっています。すぐに使わないお金は投資に回したほうが、賢くお金を増やせ、老後のリスクを低減してくれる可能性が高い。そんな時代といえるのです。

【対策3】時間の使い方を考え直す

 時間がありあまっているなら、特売を求めて遠くのスーパーへ足をのばすのもいいでしょう。ただ、それよりポイント還元率が高いクレジットカードを見つけたほうが、トータルでは、時間もお金も節約できるかもしれません。

 また、現金払いよりクレジットカードや電子マネーを使ったほうが、ATMへ行く時間もカットできます。

「『今のやり方よりいい方法があるのでは?』を考えてみることが大事」

【対策4】ネット情報を活用

 対策3の方法で余った時間を使って、メルカリなどのネットフリマで不用品を売る。あるいは、欲しかったものが中古で安く手に入らないか調べてみる。順番待ちをしていた美容家電なども、中古で手に入れたほうが、素早く安く手に入るし、満足感が高いかもしれません。

「生活をお得に変えてくれるテクノロジーやサービスを探してみましょう」

〈B〉バブル女子タイプ

【特徴】ステータスにお金を全振り!

 買い物で迷ったら高いほうを買い、引っ越しのときは間取りより住所が気になる。新幹線ではすいていてもグリーン車に乗る。SNSで人が高いワインを飲んでいたら張り合いたくなるし、旅行先はつい“映える”場所を選びがち。ステータスがすなわちアイデンティティーになっているタイプ。エネルギッシュで行動力があるぶん「私、頑張っているんだし、いいでしょ」と、使うお金がかさみがちです。

【問題点】老後は一転して破綻の恐れも

 最大の問題点は、老後まで今の生活が続けられない可能性が高いこと。年金生活になったら一気に破綻するおそれがあります。

「華やかに暮らしているように見えた人が、『亡くなったあと、多額の借金が発覚』という例を数多く見てきました。そうなると、残された家族に迷惑がかかります」

 生活レベルを急に下げるのは難しいもの。老後資金は多額で、備えるためには、ある程度の年数が必要です。体力があるうちから、少しずつ生活を見直していきましょう。

【対策1】クレジットカードを厳選

 まずは財布をチェックして、ゴールドカードなど、年会費がかかるクレジットカードが何枚あるか数えてみましょう。年会費とともに、いつ、どんなときに使っているカードか、年会費をペイするためにはどれぐらいの買い物が必要かを考えてみて。
「『1年に1回、おせち料理の注文のときだけ使っている』というような、使用回数が少ないものは、思い切って解約しましょう

【対策2】見えないところで節約

「すべてを最高のものでそろえよう」とせず、一部だけでもプチプラのものに置き換えてみましょう。とはいえ、見栄が生活にうるおいと張りをもたらしているタイプだけに、外から見える部分を変えるのは抵抗が大きいもの。まずは見えないところから手をつけて。

「おすすめは下着から。補正下着やおしゃれ下着をシンプルなユニクロなどに替えれば、着心地もいいし、洗濯もラクになりますよ」

【対策3】保険を見直す

 人から見えないところといえば、固定費の見直しもおすすめです。このタイプは、付き合いで、「いいよ」と、サービスや生命保険などに入りがち。複数の保険に入っている場合は必要な保障だけ残して解約しましょう。

「こまごまとした節約より、大幅に支出を減らせます」

【対策4】コロナ禍を言い訳に

 おしゃれな場所で美味しいものを食べることも、それをSNSにアップするのも大好き。また、SNSではマウンティングで止まらなくなることも。一切やめるのは難しいですが、コロナ禍の今こそ、レストランへ行く頻度を少なくする、高級ワインを開ける回数を減らすなど、できる範囲で節制してみましょう。

「コロナ禍だからね、と言える今が貯めるチャンスです」

【対策5】食品は食べきれる量を買う

 バブル女子タイプにとって、輸入食材店やデパ地下は散財スポット。「美味しそう!」「珍しい」と思ったものを、買いすぎてしまいます。

「手に取る前に、立ち止まって『食べきれるか。使いきれるか』を考えてみましょう」
 無駄を省くだけで、食生活のレベルは変えることなく節約ができるはず。

〈C〉努力空回りタイプ

【特徴】まじめだけどキラキラしたい!

 基本的にまじめで、勉強熱心。なのに、行動がともなわないタイプ。例えば、投資の初心者セミナーに何度も出ていても、実際の投資に踏み出せません。情報感度が高いので、預金の金利が高い銀行に口座を次々開設。「今度こそスリムボディになれそう」と次々ダイエットにハマったり、健康器具を購入したり。家にハウツー本や英会話教材が積まれているケースもあります。最近は、「キラキラしたい」が落とし穴。ブランディングや起業のセミナー講座にお金を使ってしまうケースも。

【問題点】自分磨きが節約の妨げに!

 まじめだけれど、努力のベクトルが間違っているのが問題点。「勉強のため」「ダイエットのため」と、自己投資を惜しまないので、勉強の費用がかさむものの、なかなか実を結びません。

 また、クーポンやスタンプカードをたくさんもらっては集め、結局、使いこなせず期限切れになるのもこのタイプの人。

「わずかな金利の違いで銀行口座を次々作ってしまう人も。結局、管理が大変になってしまいます。ただし、ベクトルが変われば、そのパワーを使って最短時間で最高のパフォーマンスが上げられるタイプでもあります」

【対策1】知識を行動に移す

 投資セミナーに参加したり、投資についての情報にふれたりしたら、まず挑戦してみましょう。なかなか実践できないのは、リスクを正しく理解できていないから。

「選ぶ金融商品により、リスクの高低はある程度コントロールできます。失敗を最小限に抑えられる方法を探しましょう。例えば、100万円を投資し、価格が3割下がれば30万円の損失ですが、ワンコイン投資で500円なら150円です」

「えいや!」と思い切れる金額から始めるのがおすすめ。

【対策2】使っていない口座は整理して

 定期預金や普通預金の「キャンペーンで利率がお得だから」と、いろいろなところに口座を作っていると、管理が煩雑に。しかも、今は金利が軒並み下がっているので、預金の金利の差は誤差程度。それでは、銀行へ行く時間や交通費がもったないない! 用途がはっきりしない口座は解約しましょう。

【対策3】クーポンを集めない

 クーポンやスタンプカードはたくさんあると探すのが大変で、結局使い切れません。

 また、期限内にクーポンを使おう、ポイントが倍の日に買い物をしようとすると、無駄遣いしがちです。よほど必要でない限り、最初からもらわない選択を。

「デパートのクレジットカードは5%のポイントがつくことが多く、一見お得ですが、2年目以降は年会費がかかることがほとんど。年会費をペイできるほどの買い物をしないなら、作らないほうがお得」

【対策4】行動を振り返る

 英会話の教材やダイエット用品、健康器具をいくつも買ってしまう人は、『これを買ったら必ずこうなれる(やせる、英語がペラペラになるなど)』と勝手な思い込みがなかったか」「時間があるからなんとなく買ったのではないか」「どれぐらい使ったか」「効果はあったか」、冷静に振り返り、過去の失敗を把握。

 以降、同じようなものが欲しくなったときの判断材料に。

【対策5】消費のもとには近づかない!

 ダイエット用品や健康器具にお金を使いがちな人は、どこでその商品を知ったか思い出してみましょう。そのうえで、テレビ通販ならその時間にテレビを見ない、チラシならすぐ捨てるなどして避けるように心がけること。

「『欲しいと思わせる』情報に近づかないことが、いちばんの節約になります」

〈D〉夫依存タイプ

【特徴】お金の管理は全部夫まかせ

 お金の管理はすべて夫が行い、夫の収入も、資産がどれだけあるのか知りません。自由に使えるお金は、食料品と日用品を買う生活費ぐらい。もらう生活費が多いのか少ないのか、子どもの教育費がいくらなのか判断がつきません。

【問題点】夫が急に倒れたときが危ない!

「万が一のリスクがいちばん大きいのが、夫依存タイプ。夫が貯金をしていれば問題ありませんが、まったく貯めていない場合、老後は悲惨なことに。夫が働けなくなると、一気に問題が表面化します」

 うつ状態になったり、勤め先が立ち行かなくなったりすると、一気にピンチに! また、万が一、夫が亡くなった場合、通帳のありかがわからないと、資産があっても使えません。亭主関白で、妻が夫を立てている家庭が多く、夫の機嫌を損ねるのが怖くて、お金のことをなかなか聞けない悩みも。

【対策1】権威をうまく使って情報共有を

「とにかくまずは情報共有を! 男性は権威に弱いもの。おすすめは、『新聞やテレビで〇〇さん(著名な経済ジャーナリストやファイナンシャルプランナー)が言っていたんだけど……』と切り出すことです」

 そのうえで、夫がお金を管理するのは悪くない、ただ、教育費、住宅、老後資金の3大支出については、情報共有をしたほうがいいらしい、と説明します。“子どもが大学に入るまで、300万円は貯めたほうがいいみたい。今、うちは? 登山なら何合目ぐらいまで来ている?”とオブラートに包んで質問を。

「家計を詮索され、自分の小遣いが減ることを警戒する男性もいます。『もしも努力が必要なら、家族みんなで。パパだけで頑張っていない?』と呼びかけましょう」

【対策2】奥の手はへそくり作戦

 夫がどうしてもお金の情報を共有してくれない。もしくは、どうやらお金を貯めていない。そうなると、専業主婦の場合、身を守る方法はへそくりしかありません。

「メルカリで不用品を売ってみる、飼い猫の動画をアップして収益を上げることを目指してみるなど、家にいながら少しでもお金が稼げる方法を探してみましょう」

【対策3】家族を言い訳にしない

 このタイプは夫の機嫌を取りがち。「夫が好きだからこれを買う」と、買い物も夫基準。本当ならもう少し家計が見直せるはずです。

「夫依存型の妻は家族に尽くす一方で、本当は自分が欲しいものを、家族を口実に買っているケースも……。買い物の際は、家族を言い訳にしないようにしましょう」

(構成/仲川僚子)

《PROFILE》
山口京子 ◎ファイナンシャルプランナー。“くらしとお金の関係”をレベルアップさせることがモットー。情報サイト“All About”の家計簿・家計管理ガイド。『なまけものが得をする ワンコインつみたて投資術』(ダイヤモンド社)など著書多数。