(左から)麒麟・川島明、極楽とんぼ・加藤浩次、坂上忍、立川志らく

 朝、昼の時間帯に、お茶の間へ情報を届けるワイドショー。事務所との契約を打ち切られ『スッキリ』の降板も囁かれる加藤浩次、谷原章介、麒麟・川島の参入。芸能評論家・宝泉薫が歴史を解説しつつワイドショーの“これから”を斬る!

 この春は、平日朝のテレビに大きな変化がある。まずはフジテレビ系で『とくダネ!』が終了して『めざまし8』がスタートすることだ。

 司会者は、谷原章介。俳優としてもおなじみだが、司会での実績も申し分ない。情報番組『王様のブランチ』(TBS系)のMCを10年以上務めたのをはじめ、2015年からは『パネルクイズ アタック25』(テレビ朝日系)、'16年からは『うたコン』(NHK総合)と、さまざまなジャンルの番組を仕切っている。

 また、この人は子だくさんだ。実は平日帯番組の司会者にはなぜか子だくさんな人が多く『ひるおび!』(TBS系)の恵俊彰は4人、かつて『はなまるマーケット』(TBS系)を長寿番組にした薬丸裕英は5人の父だ。そのバイタリティーやマメなところが、毎日長い時間、生放送に出るという生活に向いているのかもしれない。

 ちなみに、谷原は'07年にいしだ壱成の元妻と結婚。5児をさずかり、三宅の連れ子も合わせて6人の父親となった。これがイメチェンにもつながることに。'05年にオセロ・中島知子との破局が報じられた際、彼のプレーボーイぶりが原因などと言われたものだが、いまやすっかり、家庭的なイクメンという印象に変わった

 5年前にはスポーツ紙の取材に、司会業をやるうえで『ドラえもん』の完璧キャラ、出来杉くんを反面教師にしていると発言。

僕もそう見られている可能性が強い。このルックス、このイメージの人間がどういうことを言ったら面白いのか。出木杉くんだけど、のび太やジャイアンの“顔”もあるというのが理想ですね

 こんなイヤミにもなりかねない(?)発言が許されるのも、家庭的なイクメンというイメージのおかげだろう。

 ではもうひとり、TBS系の新番組『ラヴィット!』で新規参入する麒麟の川島明はどうか。美声でイケメンというところは谷原と同じだが、それを言うならショーンKだってそうだった。忘れた人のために説明すると、フジテレビが平日夜のニュース番組の顔にしようとした矢先、文春砲で経歴詐称がバレ、消えてしまった人だ。

 もちろん、川島はMCもできる芸人だし、写真に絶妙なコメントをつけるという『タグ大喜利』をヒットさせたような機転がきくところもある。ただ、いかんせん、枠そのものが弱すぎるのだ。

 TBSは'96年、オウムビデオ問題によってワイドショーから撤退。この枠では前出の『はなまる』が生活情報路線でヒットしたものの、'14年以降は迷走が続いている。

 国分太一を起用した『いっぷく!』は1年しかもたず『ビビット』では久々にワイドショーへ回帰。国分がジャニーズ初のワイドショー司会者となり、4年半粘ったが、数字は伸びなかった。

 続く『グッとラック!』では立川志らくにMCを任せたものの、1年半で終了。志らくの妻が不倫をしたり、曜日レギュラーの小林麻耶がロケのドタキャンから降板したりと話題には事欠かなかったが、身内でゴタゴタしていてはスキャンダルを料理するどころではない。そのためか『ラヴィット!』ではまた、生活情報路線に戻すことになる。

 それならいっそ『なないろ日和!』(テレビ東京系)で『はなまる』スタイルの番組を続けている薬丸を呼び戻せば、とも思うが、そうもいかないのだろう。とはいえ、川島の起用も不安だ。『グッとラック!』では、志らくをはじめ、田村淳や3時のヒロイン、フワちゃんなどをレギュラーにしてお笑い色を強めながらも好転はしなかった。また芸人がMCでは、代わり映えがしない。

 そもそも、このままだと博多華丸・大吉の『あさイチ』(NHK総合)を含め、同じ時間帯に吉本芸人の番組が3つ並ぶことに。と思ったら『スッキリ』(日本テレビ系)の加藤浩次は4月からもう吉本芸人ではない。

 '19年の吉本闇営業騒動の際「経営陣が代わらないなら僕はやめる」と反発。専属エージェント契約に切り替えることで決着したが、それも3月での終了が発表された。だとしたら、吉本は加藤をつぶすべく、ライバルとして川島を送り込んだとも考えられる。

 ちなみにこの春、加藤の番組は2つが終了。『この差って何ですか?』(TBS系)では、大好きな尾崎豊の魅力を語り尽くしたあと、

文句苦情受け付けません! なぜならこの番組、今日で終わりだからです。さよなら

 と言って、締めくくった。

 ある意味“狂犬”キャラの加藤らしい終わらせ方だが、こういうところはワイドショー司会者として、芸能人として、武器であり弱点でもある。それがはっきりと裏目に出たとき、彼は『スッキリ』を去るのかもしれない。

タレント司会者の歴史

 ワイドショーにおけるタレント司会者の草分け、それは『アフタヌーンショー』(テレビ朝日系)の桂小金治だ。1966年から7年間、その熱い司会ぶりで“怒りの小金治”と呼ばれた。

 その流れに乗って、大物女優も参入する。'68年スタートの『3時のあなた』(フジテレビ系)が高峰三枝子森光子富司純子らを起用。その人脈で、美空ひばりをはじめ、豪華ゲストも登場し、平日の昼下がりとは思えないぜいたくな雰囲気が主婦層に支持された。

ワイドショー“黎明期”'60年代後半を盛り上げた森光子

 これに対抗して、'73年に始まったのが『3時にあいましょう』(TBS系)。こちらは船越英二野際陽子を司会に据え、2人が去ったあとには『辛口ピーコのファッションチェック』というヒット企画も生まれた。また、終盤にはテコ入れ策として、グラドル出身の蓮舫を抜擢。就任早々の'92年4月には尾崎豊の急死というニュースが飛び込み、彼女は嗚咽しながら、

「若い子の認知度はすごいあった人で、私、個人的に知ってたんですけども、ごめんなさい、びっくりして……」

 と、動揺を隠せず。実は彼女、青山学院高等部で尾崎の2学年下の後輩にあたる。ただ「私がワイドショーを変えます」とまで豪語したわりに、半年後には番組そのものが終了。司会者・蓮舫は民主党政権よりも短命だった。

 現在では大下容子アナの印象が強い『ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系)も、'96年のスタート時はタレント司会者を起用。水前寺清子が2年半、大和田獏が11年務めた。大和田は同時期に妻の岡江久美子が『はなまるマーケット』(TBS系)の司会をしており、局と時間帯をずらしての共働きが注目された。

ワイドショーが元気だった'90年代後半に司会者として登場した水前寺清子

 一方、見逃せないのが関西系タレントの活躍だ。'79年スタートの『2時のワイドショー』(日本テレビ系)は読売テレビの制作。当初は上岡龍太郎横山ノック上沼恵美子浜村淳という関西オールスターが番組を進行した。嫁姑バトルをネタにした『夫婦110番』が関西系ならではのえげつなさで話題に。

 また、日本テレビ系では'83年まで『お昼のワイドショー』が放送されており、ノックはこの初代司会者のひとりでもある。曜日ごとに日テレと読売テレビが交互に制作を担当。日テレの日は青島幸男が司会を務めた。のちの東京都と大阪府の知事が日替わりで登場していたわけだ。

 その日テレ系では、ワイドショーの王者というべき番組も誕生。'79年から22年間、午前中に放送された『ルックルックこんにちは』だ。そのうち19年間がタレント司会者で、初代が沢田亜矢子、2代目が岸部四郎である。

自己破産した際『ルックルックこんにちは』のギャラが月200万円だったと明かした岸部四郎

 この番組は人気コーナーもめじろ押しだった。若き日の小池百合子がアシスタントを務めた『竹村健一の世相講談』。前出の桂小金治が今度は“泣きの小金治”として活躍した『涙のご対面』、さらには『テレビ三面記事』『ドキュメント女ののど自慢』『突撃!隣の晩ごはん』などが安定した数字を稼いだ。

 一方通行になりがちなワイドショーに、視聴者参加型の企画をうまく盛り込んだりしたことが長寿の秘訣だったのだろう。

 ただ、タレント司会者起用の落とし穴も垣間見せた。'98年、岸部が借金苦で自己破産したことが大々的に報じられ、降板するハメに。

 これと似たケースが'97年に始まった『スーパーJチャンネル』(テレビ朝日系)で、当初は月~木曜が石田純一、金曜が田代まさしという攻めたキャスティングだった。番組卒業から2年後に逮捕された田代はともかく、石田は出演期間中にまたまた不倫報道が出て、バッシングから降板することとなる。

 また、陣内智則も自身の私生活に翻弄されたひとり。2004年に関西ローカルでスタートした『なるトモ!』(読売テレビ)が一時は日本テレビなどでも放送される全国区的番組となり、藤原紀香との結婚もあって安定した人気を維持していたが─。東京大阪の往復生活に疲れ果て、'09年に降板した。

自分のステップアップのために卒業させていただく

 と語り、拠点も東京に移したが、そのことが関西のファンには不評。しかも、半年後の離婚で、全国的にも株を下げてしまった。タレント司会者はイメージが派手なぶん、私生活による浮き沈みも激しいといえる。

「昼の顔」の共通点

 坂上忍と恵俊彰。それぞれ『バイキングMORE』(フジテレビ系)と『ひるおび!』(TBS系)という番組を持ち“昼の顔”を争うタレント司会者である。すでに実績も十分だ。

 まず、坂上は『笑っていいとも!』終了後のフジの昼を立て直した。2014年に、曜日ごとに違うMCで始まったバラエティー『バイキング』を1年後に統一。総合MCとして本音トークのワイドショー路線を打ち出し、昨年秋からは今のタイトルに変わって時間も60分拡大された。

 その際、終了したのが『直撃LIVEグッディ!』。安藤優子とともに司会をこなしていたのが高橋克実だ。共演経験のある役者の結婚や不祥事などでは味のあるコメントを聞かせてくれたが、自分の舞台が始まると長い休みをとって八嶋智人に代わってもらうなど、片手間っぽさも否めなかった。あくまで本気度が売りの坂上を、視聴者は選んだともいえる。

 その本気度は、天才子役と呼ばれながら役者として大成できなかった反動でもあるのだろう。若いころ、

俺の理想はデビッド・ボウイ、かな。彼は芝居と歌と両方やって、どちらもビッグ。俺もそうなりたい

 と言っていた坂上は歌にも挑戦したが、挫折。しかし、'03年に離婚した際、それを『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)で公表していじってもらったあたりから、自分のキャラや私生活を切り売りすることを覚えた。さらに、人のスキャンダルを斬るワザも身につけ、今にいたるわけだ。

 一方、恵は20年以上にわたって迷走していたTBSの昼に安定をもたらした。'09年スタートの『ひるおび!』はここ10年ほど、この時間帯で最も高い視聴率を誇っている。

 こちらも本気度はかなりのもので、それはハングリー精神から来ているようだ。同じ鹿児島出身で中学の先輩でもある長渕剛を崇拝。その熱狂ぶりを浜田雅功にいじられたりもした。また、早稲田大学を目指したが3浪してあきらめたという話もあり、芸人から司会者への転身も上昇志向のひとつと考えられる。

 ただ、そのせいか、熱くなりすぎることもある。昨年4月には、コメンテーターのふかわりょうがメディアでコロナ禍ばかりが取り上げられることのマイナス面に言及。かえって「人々の余裕を奪っている」のではと口にしたことが気に入らなかったようで、

「毎日毎日、ふかわくんにしてみりゃつらいかもしんないけどさ、24時間。でもわれわれとしてはわれわれなりにやれることをやりたいのよ!」

 と、キレぎみに返し、ネットをざわつかせた。

最近では司会者やコメンテーターとしての活動がメインになってきたふかわりょう

 なお、そんなふかわは4月から『バラいろダンディ』(TOKYO MX)のMCを担当することに。9年間MCをやってきた同局の『5時に夢中!』は卒業する。『5時夢』はマツコ・デラックス岩井志麻子といったクセのあるコメンテーターがそろう、ゆるくて多様性を感じさせる異色のワイドショーだ。

 とはいえ、主流はやはり恵や坂上のスタイル。坂上は歌手として同世代で友人でもあった尾崎豊に負けたことが悔しく「あれは歌というより説教」などと評したことがあるが、司会者としてやっていることもけっこう説教に近い。

 思えば、加藤浩次も尾崎のファンだし、蓮舫はその訃報に涙した。ワイドショー空間は尾崎、あるいは恵が崇拝する長渕の歌みたいな“説教”的なスタンスとの相性がいい。恵と坂上が昼のツートップなのも、当然なのだ。


宝泉薫(ほうせん・かおる) アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)