『テックインサイト』YouTubeチャンネルで、自らイギリス取材をする村上あい編集長(2018年)

 英国王室報道に、鋭く意見を述べる“英国王室ジャーナリスト”を名乗る女性─。『Nスタ』(TBS系)や『スッキリ』(日本テレビ系)など、数多くのワイドショーにコメンテーターとして出演している村上あい氏だ。

現在はイギリス在住で“英国王室に知り合いでもいるの?”と聞きたくなるほどの事情通です。軽快なトークも相まって、出演する機会が増えていますね」(ワイドショースタッフ)

 彼女に経歴詐称疑惑が浮上したのは、週刊女性が1月に掲載した記事がきっかけだった。

「ヘンリー王子夫妻の記事で村上あいのコメントが掲載されていたが、彼女がどんな人物かわかっていますか?」

 あるネットニュース編集者からそんな連絡が届き、驚くべき話が次々と出てきたのだ。

“英国王室を追っかけて30年”と語っていますが、すべてデタラメです。事実、彼女が英国王室に関して執筆した書籍はないし、論文や寄稿も何も見当たりません。テレビで話している内容は、彼女が編集長を務めるニュースサイト『テックインサイト』のスタッフが調べたものです。リサーチをしていたライターから、いろいろ相談を受けたので間違いないですよ」(同・ネットニュース編集者)

 とはいうものの、昨年末に彼女に取材をした週刊女性記者は、

「聞きたい内容は事前にメールで送っていましたが、書いていなかったことを聞いてもスラスラと答えてくれ、詳しいなと感心したほどです」

 と振り返る。そこで、数年前まで彼女と一緒に仕事をしていたという元スタッフのAさんに話を聞いた。

村上さんは目立ちたがりな性格

「2014年だと思いますが、“海外セレブ事情に詳しい『テックインサイト』編集長”として声をかけられ、テレビに出るようになりました。でも村上さん自身はもともと英国王室も海外セレブ事情にもまったく興味がなく、サイトで海外セレブに関する記事が増えたのも、外注ライターBさんがスタッフとして加わったためです。

 でも村上さん自身が目立ちたがりな性格のため、そのジャンルに詳しいライターにリサーチをさせ、さもハリウッド通のような顔をして出演していました。その後、バラエティー番組にまで出るようになり、しばらくすると世間で英国王室の話題が増え始めた2017年ごろに突然、“英国王室ジャーナリスト”と名乗るようになったんです

 同サイト内で村上氏が執筆した記事を検索しても、英国王室に関する記事は昨年10月に書いたヘンリー王子の記事1本しかヒットしなかった。

3年前は“英国王室を取材して20年”という肩書でしたが、3月上旬に出演したTBS系の『Nスタ』の紹介を見たら、“30年以上、英国王室を追っている”に変わっていて失笑しましたよ。たった3年で取材期間が10年増えたんですから。渡英は2018年が初めてのはずで、それまで英語もロクに話せなかった彼女が、インターネットも一般に普及していない30年前にどうやって取材していたのか知りたいぐらいです」(Aさん)

 テレビに出演する際は、話す内容をすべて部下にリサーチさせていたという。

村上氏がテレビ出演する際に、部下にリサーチを依頼してきたメッセージの全文

「深夜などに突然、“明日テレビで話す内容についてリサーチをお願い”と丸投げしてくるのは日常茶飯事でしたね。さらにひどいのは、何も知らないのにアドリブでさも事実のように話をでっち上げて話すので、リサーチしたライターたちは“テレビで堂々とウソを話していいの?”と心配していました」(Aさん)

 行動はエスカレートしていき、ついには“ヤラセ中継”を指示するように。

「2018年4月に第3子を出産したキャサリン妃が退院する日、村上さんがフジ系の『直撃LIVE グッディ!』に出ることに。自分のすごさをアピールしたかったのか、“イギリス在住のスタッフがいるから、病院前から電話でレポートさせる”と番組側に言ったものの、急な依頼ということもあり、現地スタッフが断ったんです。

 すると、“誰でもいいから、イギリスの病院前にいる設定でレポートをしてほしい”と言い出し始めて……。さすがにヤラセに加担するわけにはいかないのでみんな断ったのですが、あまりにも強引なため、押しに弱いライターが別の国にいるにもかかわらず、泣く泣くあたかもイギリスにいる設定で現地の取材記者役を演じていました」(Aさん)

 ニセ電話レポートについて現場は把握していたのだろうか。フジテレビ企業広報部に問い合わせたものの、

「現段階では事実関係がわからないので、回答を控えさせていただきます」

 自身の経歴だけではこと足りず、編集長を務める『テックインサイト』を売り込むため、スタッフの経歴を勝手に詐称することもあった。

「ライターのBさんはアメリカに住んでいた時期はあるものの、本人に無断で“ハリウッドのエージェンシーで勤務していた勤務歴7年のスタッフがおり、人脈も豊富”とウソをつきテレビ局や大手メディアに売り込みをしていたんです。そもそもBさんは安いギャラでこき使われていた外部ライターで、社員でもないんです……」(Aさん)

精神的パワハラで追い詰める

 暴走していく村上氏に対しBさんが苦言を呈したところパワハラを受けるように。

「盾ついたのが気に入らなかったのか、サイトに大きく貢献したBさんを出入禁止扱いにしたんです。さらにほかのスタッフに“Bは人格障害だ。連絡をとってはいけない”と命令し、孤立させた。あまりにひどいのでBさんをかばったところ、今度は私が村上さんからパワハラを受けるようになって……」(Aさん)

 肉体的なパワハラこそなかったものの、精神的に追い詰められた彼女は自ら、同サイトのライターを辞めることに。病院にも通院し、しばらくは日常生活にも支障をきたすほど、精神的ダメージを受けたという。

 そこで、親会社であるC社にパワハラを訴えたものの認められることはなかった。当時、この件で窓口になったC社の役員で『テックインサイト』の役員も務める男性に電話で問い合わせたが、

「パワハラ疑惑があったのは事実です。しかし、社内調査を行い、弁護士など複数の専門家にお話を伺ったところ、致命的なパワハラがあったとは言えないという判断になりました。ジャーナリストとしての活動は村上個人での活動で、経歴詐称の件はノータッチのためお答えできません」

 通院するほど精神的に追い込まれてもパワハラにはあたらないのだろうか?

 労働問題に詳しい『真和総合法律事務所』の松下真由美弁護士に聞いた。

職場において立場を利用し、業務の適正を越えた苦痛を与える叱責などはパワハラ行為にあたります。今回のケースもパワハラと言えるでしょう。音声など証拠がないと立証しづらいため泣き寝入りするケースも多いですが、Aさんはスクリーンショットなど証拠もあるとのことなので裁判所でパワハラ認定されやすいのではないでしょうか」

 経歴詐称については、

「モラル的には問題ですが、経歴詐称は法律で罰せられる行為ではありません。また求められていることに対して問題なく対応しているのであれば、テレビ出演や取材でギャランティーを得ていても詐欺行為などにはあたりません」(松下弁護士)

村上氏からのパワハラでAさんとBさんが通院した際は「心因反応」「抑うつ状態」や「精神不安」「うつ症状」と診断された

 Bさんにも聞いたところ、

「Aさん同様に村上さんからのパワハラで通院しましたし、一緒に仕事をしていたDさんも私たちとグルだと疑われ、嫌がらせを受けていました。村上さんからは謝罪の言葉はありません。私たちの願いはきちんと謝罪をして、ウソをついてメディアに出るのをやめてほしいだけです」

村上氏に質問を送ると

 偽りだらけの素顔について、本人はどう思っているのか。ロンドンに住む村上氏に何度も電話をかけたが1度も出ることはなく、週刊女性が入手した4つのメールアドレスすべてに質問を送ったものの、期日までに回答はなかった。

 そこで、村上氏の父親にも話を聞こうと、村上氏が周囲に実家の住所だと話していた東京都港区にあるビルの1フロアを訪ね、ビルのオーナーに話を聞いたところ、驚いた様子でこう答えた。

「村上なんて知らないよ。大阪のある会社にこのフロアを貸したら、『バーチャルオフィス』として勝手に名義貸しをしていたんだよ。そこには怪しい競馬の予想会社なども登録していたことが発覚したから、2年前に退室してもらった。その住所を実家だという村上って人も怪しい人間なんじゃない?」

 ウソで塗り固めたのは、経歴だけではないようだ。