秦基博 撮影/廣瀬靖士

(NHK連続テレビ小説)『おちょやん』は毎朝見ています。このあいだ、前半の総集編をやっていて。それを見ていたんですけど、めちゃくちゃ泣きましたね(笑)。ピンポイントでこのシーンがというのではなくて、何度も。もう、泣いちゃうポイントばっかりですよ(笑)」

連続テレビ『おちょやん』(NHK総合)のオープニングで『泣き笑いのエピソード』が流れる

 そう告白してくれた秦基博。『おちょやん』の主題歌『泣き笑いのエピソード』は彼が作詞・作曲し歌っている。

 この新曲を含め、'15年以降に発表した代表曲と、これまでのカップリング曲、アルバム収録曲、提供曲のなかからリクエスト投票で選ばれた10位までの楽曲が収録されている弾き語りベストアルバム第2弾『evergreen2』をリリース。弾き語りは、秦の音楽スタイルの原点。

「デビュー15周年という節目のタイミングで活動を振り返ったり、まとめるのに“弾き語り”がいいんじゃないかというのは、わりと自然に考えが結びつきました。改めて、歌声やメロディー、歌詞にフォーカスして聴いてもらうにあたって、いい形なんじゃないかと思ったんです。ギターでの弾き語りは、僕自身が音楽を始めた形でもありますし、自分の感情といちばん直結しやすい楽器がギターなんです」

『ひまわりの約束』のプレッシャーはない

 中学生で兄のギターを弾くようになり、すぐにオリジナル曲を書き始めた。大学入学前の春休みに友達の紹介で弾き語りイベントに出演。そこから本格的に音楽の道を志し、'06年11月にメジャーデビューを飾った。

 “鋼と硝子でできた”とたとえられる唯一無二の声を武器のひとつに数々の名曲を生み出してきた。CMソング、ドラマや映画の主題歌と、この15年で彼の声を聴かない日はなかったのではないかと思うほど。代表曲のひとつをあげるとすると、映画『STAND BY ME ドラえもん』の主題歌でもあり、国を越えて愛されている『ひまわりの約束』。

「僕自身には『ひまわりの約束』を越えなくちゃいけないというプレッシャーはなくて。あの曲に込められるものは、全部入れたので、また同じような曲を書こうとはならないですし。常に新しい表現を探していて、その先に聴いてくださる方がたくさんいて、受け入れてもらえたらいいなという感じです」

秦基博 撮影/廣瀬靖士

『泣き笑いのエピソード』
制作秘話を告白

 この15年で音楽に対する思いは変わったのだろうか?

根本的なことは変わっていなくて、やっぱり曲を書くことが好きだし、歌うことが好き。変わったのは15年前よりできることが増えたこと。ある種、余裕のようなものが以前よりあるので、自由で楽しいです。

 もちろん、生みの苦しみはありますよ。何かを生みだすことは決して簡単ではないですが、その苦しい部分もひっくるめて楽しい。僕、たいていのことが続かないんです。でも、音楽だけはそうならない。つらいことや苦しいことがあっても、またすぐにやりたくなるんですよね」

 15年間で手にしたものは「自分のペースや、スタイル」。手放したものは、少し考えたあとに「運動能力とかじゃないかな(笑)」と語る。例えば、ベストアルバムで苦労した曲は? と聞くと「どれもです(笑)」と言う。

「『泣き笑いのエピソード』は、当時できあがっていた分のドラマの脚本をいただいたのと、制作スタッフの方と打ち合わせをしてから作業に入りました。最初に歌いだしの“オレンジのクレヨンで~”の部分の歌詞とメロディーが一緒にすーっと浮かんできて。そこからは結構時間をかけましたね。

 最後にサビの“笑顔をあきらめたくないよ〜”というフレーズが出てきたんですけど、朝、目覚めた瞬間に浮かんで。半分寝ぼけながらメモして、また寝るみたいな。そのくらい常に、寝ている間もずっとこの曲や歌詞のことを考えていました。

 ドラマや映画、コマーシャルのお話をいただいたときもそうですが、自分の心の動きを曲にするようにしています。借りてきたテーマや言葉だと、歌えないと思うので。これからも自分にしかできない表現を追求していって、それをみなさんに楽しんで聴いていただけたらと思っています」

魅力的な声をキープする方法

 14歳ぐらいかな? 声変わりしてから、少しずつ変化はしていますが、ずっとこの声です。デビューして数年は、のどにいいと聞くものをいろいろ試していましたが、そのうち、あのお茶がないとダメとかって自分が窮屈になってきてしまって。1度すべてリセットしました。いまは、水さえあればいい(笑)。あとは、乾燥に気をつけたり、歌う前に辛いものを食べると影響がでるのでそれを避けているくらいです。

ついにツアーがスタート!

 (新型コロナの影響で)昨年予定していたツアーも中止になったりしていますが、状況をみながらではあるけれど少しずつライブの計画を進めています(弾き語りでの全国ツアー『GREEN MIND2021』が決定)。やっぱり、ライブやツアーをしながら15周年というものをみなさんと一緒に味わえたらうれしいですね。

今後は、歌以外の顔が見れる?

 昨年10月にちょうど40歳になったこともあって、(デビュー15周年を記念してデビュー日の11月8日に開設した)TikTokで20代の平均値と比べるスポーツテストをやったんです。15種目中、クリアできたのは5種目くらい。よくも悪くもない中途半端な結果になってしまって(笑)。

 曲を聴くきっかけになってくれたらいいなという感じで音楽番組のほかに、情報番組にも出演させていただきました。『ヒルナンデス!』は、料理をしただけなんですけどね(笑)。ふだん、自分がやっていることではないので面白かったです。本格的なバラエティー進出はないです!

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・弾き語りベストアルバム第2弾『evergreen2』発売中
通常版(2CD) 3200円+税、初回限定版(2CD+Blu-ray)6700円+税

・9年ぶりの弾き語り全国ツアー『GREEN MIND 2021』開催
4月27日の栃木県・宇都宮市文化会館からスタート。
詳細は公式サイト https://www.office-augusta.com/hata/